上 下
4 / 34

第4話 京姉を取り戻した日

しおりを挟む

俺の両親は、今のパーティーに加わって暫くして死んだ。

薄情な奴…そう思うかも知れないが、まだ旅立ったばかりで帰る事は出来なかった。

悲しい…そう思った反面、これで京姉の事を反対する人間が居なくなる…そう思い安心してしまった。

俺は汚い人間だ。

大好きな人で頭が一杯で…親の事なんて考えて無かった。

親が死んで村長が畑や家を処分してお金を送ってくれた。

だが…足りなかった。

レベルが欲しかった…もっとお金が貰えるように力が欲しかった。

だから『気にならない』 

確かに幼馴染の3人は美人だけど…俺の好きな人じゃない。

勝手に勘違いしてカイトはマウントをとっていたけど…

3人は俺の好きな人じゃない…

幾らでも馬鹿にして良い…だから強さをくれ…

強い奴を狩れる力をくれ…

見せつけられても『どうとも思わない』

お前の親父に…俺は一生のトラウマを植え付けられた。

いや…親戚中にだ…

好きでも無い女との情事なんて幾ら見せられても堪えない…

馬鹿にして良い…蔑めよ…だから力をくれ…

『悔しくないから』

勇者パーティを離れてからも狩りを続け…故郷を目指した。

あの日した、あの約束...京姉とじゃない…

セクトールとの約束…今なら果たせる。

◆◆◆

ようやく村についた…

「リヒトくん…お帰り」

泥だらけで京姉が微笑んでくれた。

「京姉…後でね」

「リヒトくん…」

愛しい、抱きしめたい…

だが、それは後だ。

先にしないといけない事がある。

「セクトールおじさん…ハァハァ…溜まった」

「なんじゃ、リヒト…そう言えば今月の仕送り銀貨3枚がまだだが、どうしたんだ?」

「溜まった…約束の金貨30枚溜めてきた…だからハァハァ京姉を俺に譲ってくれ…」

「お前…あのクズ女に…本気だったのか…俺以外引き取り手が居なかったクズなのに…毎月金を送らせていれば諦める…高額な金を吹っ掛ければ諦める…そう思ったのに…俺はお前の親に頼まれて、彼奴を後添いにしたんだ...諦めさせるために」

「ハァハァ~、そんなのはどうでも良い…金は溜めたんだ…寄越せ…姦淫にならない様に、奴隷契約書も用意した…早く寄越せ…」

「参ったな…仕方がない…ほら書類にサインしてやるよ…あと金は30枚は要らない、全部要らないと言えればカッコ良いが…カイトの持参金も底をついて貧乏なんだ…半分の15枚で良いぞ…ほら書いた…これで良いか?」

「ああっ構わない…そら約束のお金だ金貨15枚と銀貨3枚だ…」

「ああっありがとうな…」

用事は済んだ…

俺は急ぎ京姉の元に向かった。

◆◆◆

「ああっ左肩が痛い…なにこれ…そんな」

「京姉…俺頑張って京姉の事買ったんだよ…さぁこの村を出ていこう」

「そう…」

「うん、さぁ行こうか」

「うん…」

『今度はリヒトくんが…するんだ』

「どうしたの?」

「ううん、何でもない」

『知られたくなかったな…』

「さぁ行こうか…」

「うん」

俺はこの日ようやく好きな人を助け出した。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,947pt お気に入り:2,419

偽りの愛の結婚

恋愛 / 完結 24h.ポイント:48,429pt お気に入り:399

改造空母機動艦隊

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:3,224pt お気に入り:11

臆病な元令嬢は、前世で自分を処刑した王太子に立ち向かう

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,698pt お気に入り:36

異世界に飛ばされたおっさんは何処へ行く?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:18,683pt お気に入り:17,763

処理中です...