勇者パーティを追放されかけた魔法剣士は、昭和バブルの夢を見るか?

石のやっさん

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第35話 最後の戦い 中

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俺達4人は、スカルの死霊の軍団を追いかけ此処迄来た。

この先の『城塞都市ギルメダ』そこをスカルが襲う情報を得た。

城塞都市ギルメダ…人口はおよそ3万。物凄く高い魔法障壁で囲まれた都市。

この障壁を乗り越えて都市に入った魔族や魔物は居ない。

そして、この都市を守るのは沢山の聖騎士と魔導士。

恐らくはスカルは兵糧攻めを狙う筈だ。

スカルの死の軍団は死霊系の魔物、食料は要らない。

それに対して城塞都市は食料の大半を外部に頼っている。

恐らくはスカルも本気で落とそうとは思っていない。

援軍が物資を運んでくれば逃げる。

恐らく只の威嚇だろう。

俺はこれから『最低な事』をする。

これは三人にも知られたくはないから…此処からは1人で行動だ。

「リヒト、本当に1人で行くの? エルザは兎も角、私とリタは一緒に行こうか?」

「すまない…だが1人より2人を連れて行った方が良い」

「そうだよ…」

「エルザ程じゃないが、2人だって充分負傷している。もう普通には戦えないじゃないか? それに俺はこれでも男だから…最後位頑張るよ」

「ちょっと待ってよ! 最後って死ぬ気なの!」

「冗談だよな?」

「最後って何よ…」

良いなぁ…凄く心配してくれる。

ガイアは馬鹿な奴だな。

お金で買った人間が『本当の意味で好きになってくれる』までは凄く時間が掛かる。

身請けも奴隷購入も心買うんじゃない。

『時間を買うだけだ』三人と同じように好きになって貰う為には10年近い時間が掛かる。

俺はガイアが羨ましかった。

誰か1人で良いから『ずうっと傍に居て欲しかった』

だから、こんな方法で引き裂き自分の物にした。

そのせいで彼女達はボロボロだ。

『ガイアは恐らく魔王に勝てない』

それを言い訳に自分の行動を正論化した。

全て我儘だ。

自分では手が届かない三人を欲した我儘だ。

親友を捨てて『女を選んだ』俺の我儘だ。

だからこそ、これは俺がやらなくちゃいけない。

『人類史上、最悪の戦い』

それを俺がする。

これは彼女達にも…知られてはいけない。

「そういう意味じゃ無いよ…これが最後の戦いだという事だよ…折角、大好きな3人が恋人になってくれたんだよ…死ぬわけ無いじゃないか? そうだな、これが終わったら、結婚しようか…何処か否かで冒険者か農業でもしながら、ダラダラ暮す…どうかな?」

「良いね…それ、本来の私達の暮らしだね」

「そうだな、昔はそんな生活詰まらないと思っていたけど、今なら言える!平和なのが一番だよ」

「結婚して子供作って、家庭を持ってリヒトくんのお嫁さん、うんうん本来の生活だよね」

「ああっ、だから、絶対に死なないよ…これから楽しい人生が待っているのに…此処で死んでたまるかよ…帰ってきたら結婚…熱い夜を宜しく」

「リヒト…待っているからね、絶対に死なないでよ」

「リヒト、帰ってきたら熱い夜を約束するから…死ぬなよ」

「リヒトくん、貴方が死んだらきっと私生きていけないよ…」

「大丈夫…生きて帰るから」

大丈夫…『俺はしなない』

◆◆◆

俺の作戦…それは『城塞都市ギルメダ』の人間全員をスカルの軍団にぶつける事だ。

俺は勇者でも英雄でも無い。

何処かの話の様にチートでも持っていたら、そんな事しないでもどうにかなるだろう。

だが…俺には無い。

この世界は何処までも歪で悲惨な世界だ。

勇者と魔王が戦った場合…歩が悪いのは勇者。

それなのに、世界は勇者に魔王討伐を求める。

『魔王が諸悪の原因だ』そういう割には『真剣に戦争していない』

少なくとも前に居た俺の世界なら国単位で動き、きっと討伐に行く。

馬鹿なのか?

頭がお花畑なのか?

全世界の軍人を集めて『総力戦』を挑めば…勝てる様な気がする。

だが、それをやらない。

しかも『魔王討伐こそが最優先』と言いながら…街や王都では貴族や商人、普通の平民が楽しく暮している。

凄く平和に見える。

馬鹿にしているのか?

この世界は一神教で教会の力が強い。

だから『魔王討伐こそが最優先』これを利用する。

『最優先』なのだから幾ら犠牲が出ても構わないよな。

悪いが俺は異世界の脳味噌お花畑では戦わない。

『悪いがこれ戦争なんだよ』

頭の中で何かのキャラクターが叫んだ気がした。

俺はこれから『本当の戦争』をする。


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