34 / 38
第34話 最後の戦い 前
しおりを挟む「それじゃ俺達は行くから後で追いかけてきてくれよ」
「解った…それで悪いが…」
「解った金だよな?金貨30枚(約300万)置いて行くよ」
「もう少し、何とかならないか?」
まぁお金に関しては幾らでも教会が口座に入れてくれるから、幾らでも問題はない。
だが、あくまでもこれはガイアには内緒の話だ。
一応、建前上は俺が出した事になっている。
「解ったよ…金貨100枚置いて行くから、余り無駄使いしないでくれよ」
「解った」
三人はあの事件の後からガイアに会おうとしない。
あの状況で『会いたい』そう思う人間はそうは居ないだろう。
「それじゃ俺達は明日にはこの街から出て北の魔王城を目指すからな、所々冒険者ギルドに言伝を頼んで置くから、立ち寄ってくれ」
「解ったよ」
しかし覇気が全くないな。
これも薬の影響か?
◆◆◆
俺は教会からの話を元に北に歩みを進めることを提案した。
「どうして、そこを目指すの?」
「そこに何があると言うんだ」
「どうして」
そこには目当ての相手が居る。
それが、四天王の1人スカルだ。
此奴の特徴は『数の理』で戦う所だ。
つまり、此奴単体は強くない。
もし、倒せそうなら倒して、最後の花道を飾っても良いし、勝てないなら撤退。
そして引退すれば良い。
スカルの部下はそんなに強くない。
だから、負けた場合も余力を残しておけば逃げられる。
つまり『逃げる事が可能な』都合の良い幹部だ。
「そこには四天王の一人冥界王スカルが居る…そいつが目当てだ」
「冥界王ですって…四天王?!」
「四天王と戦う!今の私達がそんな事したら、本当に死ぬぞ、ヤバいよ」
「何か策があるんでしょう?リヒトが何も考えてない訳ないじゃない?そうよね!」
「そこで、俺は運命を賭けるつもりだ! この一戦で全てを終わらせる…あらゆる物を犠牲にしてスカルの首を取りに行く…あとは結果任せだ」
「どう言う事なの?」
「意味が良く解らないんだけど」
「それはどんな策なの?」
「簡単だよ! スカルが使う死霊は動きが鈍く、攻撃力が弱い、だから、どうにかして倒せるなら卑怯な方法も含んで倒す…勝てそうも無いなら逃げて終わりだよ!」
「それで問題にならないの?」
「不味く無いか?」
「それの何処が策なのかな?」
「勝てれば、四天王を撃破した代償に大怪我で引退。負ければ前線虚しく引退…どっちに転んでも問題なく引退できると思う。その後の生活がどうなるかの差だよ!『四天王に挑んだ』その実績があれば、最悪負けて引退でもだれも文句は言えないだろう? 過去は兎も角、今現在四天王クラスの魔族には誰も勝利してないんだからな…特にスカルは数の暴力で過去には勇者を葬った事もあるという話だ」
「待って、まだ私やリタは良いけどエルザは足が悪いから逃げられないわ」
「すまない…」
「そうよ、どうするの」
何を言っているんだろう?
俺は『三人を戦いの場』に立たせるつもりは無い。
折角、愛して貰ったのに死なれたら溜まったもんじゃない。
だから、これは俺1人でやる。
「戦うのは俺1人でやるよ! 三人はそうだな、俺が戦っている間、近くの村に退避していてくれ…身元を偽ってな」
「リヒト1人でやるの?!危ないよ…どうして?」
「私が足を怪我したせいか?すまない…」
「確かに、私もマリアもエルザも戦えないものね…ごめんなさい」
「謝ることは無いよ…寧ろ五体満足で引退させてあげられなくてすまない」
俺は只の転生者だ。
物語の主人公の様なチートは無い。
勇者のように凄い才能、能力も無い。
だが、それでも守りたい者がある。
『他を犠牲にしても守りたい』
俺の能力じゃ守れない。
魔王、魔族からも…
だから、体を犠牲にした。
大切な彼女達の体をだ…
俺にとって最大の敵は魔王でも魔族でも無い。
それは…人間だ。
楽しく暮し、俺の幼馴染に過酷な物をしいた人間だ。
だから、犠牲になって貰う事にする。
只の人間の俺が魔族の四天王と戦う為の下駄になって貰う。
それで人類の敵の一角が崩れるんだ…文句ないよな。
「「「リヒト」」」
三人を守る為なら…俺は外道になる。
「任せておけ」
優しい彼女達に悟られないように、俺は笑顔を作った。
※この話もいよいよクライマックス。
あと数話で終わる予定です。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説


異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。


今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた
こばやん2号
ファンタジー
とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。
気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。
しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。
そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。
※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる