上 下
29 / 38

第29話 丸投げした

しおりを挟む

俺はやはり酷い人間だ。

怪我しているマリアとエルザの心配以上に『二人が俺の物』になってくれた。

それが嬉しい。

女の子が消えない傷を負って、一生おい続ける障害をおった。

それでもだ。

俺は彼女達には言えないが『外見は最低線で良い』

そういう人間だ。

これはあの日、頭が痛くなり、前世の記憶を思い出して、心からそう思うようになった。

前世での俺の最後はきっと寂しい物だった。

お金を稼ぎ、高級なマンションに住み、高級な家具で揃え、外車に乗っていたし、DCブランドのスーツに高級車を乗りましていた小金持ち。

そんな人間が、女を口説き倒して生活していた結果…最後に訪れたのは『孤独死』だった。

実に1000人を超える女を口説きやり続けた男の末路はそれだった。

俺は沢山の女と付き合い…抱いた。

ホスト並みに気遣い女を満足させていたが、その全ての付き合いは『薄っぺら』だった。

だから『体を許す』それ以上に俺を愛してくれた女は居なかった。

これは『俺の独りよがりで本当にモテていたわけでは無い』

本当にモテる奴は『人生を預ける』それを女からもぎ取った存在だ。

それに気がついた時はもう手遅れだった。

モデルを含み美女、美少女を抱き続けた俺が、最後に思い出した存在。

それは、美女達ではなく、小さい頃を一緒に過ごしたただの少女たちだった。

少女の姿以外に結婚して幸せになった彼女達の姿も思い出した。

なんて事は無い前の世界でも、この世界でも家族に恵まれなかった俺は結局『家族になってくれる存在』それが欲しかった。

それだけだ…

拗らせているが…多分、それが俺だ。

だから、俺には三人以上に大切に思える異性はいない。

後は、どうやって、この呪われた運命から逃げ出すか!

それだけだ。

『魔王と戦う勇者』

勇者パーティと言えばこの世界じゃ誉な事だが、実質は棺桶に片足を突っ込んだ状態だ。

『魔王を舐めちゃいけない』

魔王に勝てる存在など、恐らくは居ない。

確かに魔王の天敵は勇者だが、勝率は恐ろしく低い。

恐らく、天敵と言われながらも勝率は2割も無い。

これはあくまで『勇者』という大きな括りでの話だ。

ガイアだったら、多分もっと低い。

いや、マリアとエルザが負傷した今、連携も儘ならないから、限りなくゼロなのかも知れない。

どうした物か…まぁこれはすぐにどうこう出来ないな。

それより、今回のガイアの行動だ。

今回の全ての元凶は…恐らくエルフの秘薬だ。

◆◆◆

「どうだ?良かっただろう! あれならもう俺への想いは完全に消えた筈だ」

「確かにな! ただあれはやり過ぎだ。二人とも片手は使えないし、エルザに至ってはもう真面に歩く事も出来ない」

「馬鹿だな!それが目的なんだぜ! 彼奴らが使えなければ戦力の増強が出来るじゃねーか! これから先、欲しい存在に出会った時に『身請け』や『購入』が出来るじゃねーか! そう思わないか?」

欲望に忠実なのは解る。

だが、これは…

「確かに、その通りだが、 その戦力には今回手に入れたエルフやダークエルフは入っているのか?」

「いや、彼奴らは戦えない。だが、エルフには弓使いや精霊術の使い手がいるし、他にも戦力増強という話で幾らでも仲間が増やせるだろう」

「マリア達はどうするんだよ…」

「リヒト…お前が率いる別動隊で良いんじゃねーか? そうすれば宿も別に出来るし良い事づくめだ」

まさか、計算づくという事だったのか。

だが、ガイアから3人を完全に切り離せるのは良い事だ。

「そうだな、それで良い。だったら、教会に二人の怪我を報告して戦力外扱いにして、新たなメンバー募集。そういう報告で良いのか?」

これで後はリダをどうするかだな。

「任せるぜ!ただ、俺が暴力を振るったなんて報告はするなよ!」

そんな事流石に言えないな。

「そんな事は出来ないから、戦いで負傷した事にする」

「そうだな」

「それで、悪いがティア達3人と少し話をさせて貰って良いか?」

「なんでだ?」

「ガイアは勇者なんだぜ。色々とこれからの注意事項の説明だ。下の事情もあるしな時間はとらせないから頼むよ」

「それなら仕方ねーから良いぜ」

これで大まかな事情が解かるだろう。

◆◆◆

「ティア、ラクリア、ラルム、何か言いたい事があるんじゃないか?」

俺は笑顔で殺気を向けて話した。

俺だってそこそこの強者だ、殺気を向ければ怯むはずだ。

だが、相手は長い年月を生きるエルフ、さほど動揺していない。

「さて、何の事でしょうか? 私達は何もしていませんよ、ねぇラクリア、ラルム!」

「なにやら怒っているようですが、どうしたと言うのですか?」

「そうですよ!その顔怖いですよ」

まぁしらばっくれるよな。

「そうか、それなら良い。仕方ないから教会の『異端審問官』に依頼するから良いよ。悪かったな!なにもしていないなら大丈夫だよな? 内々に済ませたかったが仕方が無い」

「「「異端審問官」」」

勇者達を狂信する者が担当するから、まぁ恐らく殺されるな。

「どう考えてもガイアの様子が可笑しいし。この間は聖女であるマリア様や剣聖であるエルザ様に暴力を振るった。その結果二人はもう戦えなくなってしまったんだ。俺はこれを調査している。俺の推理では『エルフの秘薬』が関わっていると思っていたんだが、後は異端審問官に任せるとするよ…無実なら大丈夫だ。だが、もし原因が君達にあった場合は楽に死ねると思うなよ…それじゃ」

「待って下さい」

「楽に死ねない…」

「嘘でしょう…まさか拷問の上殺されるの…」

明らかに動揺している。

やはりな。

「待てとは?どう言う事だ!」

「「「実は…」」」

観念したのかポツリポツリと話し始めた。

どうやら『エルフの秘薬』は興奮剤で欲望に忠実になるそうだ。

「ほう、それで?」

「そんな事になるなんて思わなかったんです! 興奮させて、その私達に夢中にさせて、身請けして貰いたかった。それだけなんです!」

「本当にそれだけか? ティアはこう言っているが、絶対にこれだけじゃ無いよな? 今なら俺で留めるけど? 後から出てきたら大変な事になるぞ!」

「あの…実は…」

「ごめんなさい…」

秘薬だけしか使っていないそれは本当だが…それはかなり危ない物で『薬』を使いながら抱かれて、言葉を暗示の様に使う物だった。

『自分達しか愛せないようにする』とっておきの方法だったらしい。

だが、可笑しい。

ガイアは『この三人だけじゃなく他のエルフも欲しがっている』

「だが、それは可笑しい! ガイアは君達三人だけじゃなく他にもエルフを欲しがっているんだぞ」

「それが、どうやら不完全だったみたいで」

秘薬を使い、快感を与え、言葉による暗示で自分に夢中にさせる。

それが、彼女達が今回行っていた方法だが…彼女達の本を見ると虫食いだらけで、かなり欠落していた。

確かにこれじゃ上手くいかないのも解る。

「大昔の物で完全じゃ無かったみたいで…その…あっちもマグロ状態で自分からはありませんでした…」

失敗したそう言う事か?

しかし、異世界にも『マグロ』なんて言葉あるんだな。

「それならもう良いよ!俺は口外しない。ただ、これは全部君たちの責任だから、ガイアの事は頼んだ!暴走した時に宥めるのも、性的な事も全部責任もって行ってくれ。いいか、せ.き.に.んを持てよ! 暴走して表にでたら大変な事になるからな」

「「「解りました」」」

つけ込むようで悪いが、ガイアの事は3人に丸投げで良いよな。






しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

スキル【アイテムコピー】を駆使して金貨のお風呂に入りたい

兎屋亀吉
ファンタジー
異世界転生にあたって、神様から提示されたスキルは4つ。1.【剣術】2.【火魔法】3.【アイテムボックス】4.【アイテムコピー】。これらのスキルの中から、選ぶことのできるスキルは一つだけ。さて、僕は何を選ぶべきか。タイトルで答え出てた。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

異世界転生は、0歳からがいいよね

八時
ファンタジー
転生小説好きの少年が神様のおっちょこちょいで異世界転生してしまった。 神様からのギフト(チート能力)で無双します。 初めてなので誤字があったらすいません。 自由気ままに投稿していきます。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

処理中です...