勇者パーティを追放されかけた魔法剣士は、昭和バブルの夢を見るか?

石のやっさん

文字の大きさ
上 下
26 / 38

第26話 何かが違う

しおりを挟む

宿に帰ってきた。

「リヒトくん、良い所に戻ってきたよ…早く、マリアがエルザが…うっうっ…大変だから…」

リタに手を引かれながら、訳も分からず急いで二人の部屋に向かった。

何だよ…これ…嘘だよな…

「ううっ…酷いよガイア愛していたのに…こんなの無いよ…うわぁぁぁぁぁぁーーー酷いよ、酷いよーーっ…ううっ」

「ガイア…許さない…お前は絶対に、愛していた私にこんな事を、うわぁぁぁーーっ」

酷いなんて物じゃない。

部屋の中は錯乱…いやそれ処じゃない半壊していた。

それよりも二人の怪我が半端ない。

マリアの薄水色の長い髪の一部は頭皮ごと一部が無くなっていた。良く見ると右手の指が親指を残して全て無くなっている。
そんな状態なのにマリアは凄まじい形相で叫びながら床を叩いていた。

エルザは右手が手首から先が無く、良く見ると近くに転がっていた。
左足は明らかに変な向きに曲がっていて、同じく頭皮が一部髪ごと無くなっていた。それなのに悔しそうに床をただひたすら殴っていた。

冷静に…冷静にならないとハァハァ。

冷静に…

「マリア!エルザ!何があったか解らないが落ち着け!」

「ガイア…ガイア、愛していたのに…うっうっうえうわぁぁぁぁん」

「ガイア、ガイア…許せない…うわぁぁぁぁーーっ」

仕方が無い。

「ごめん」

俺は剣を抜き、みねうちで気絶させた。

「なにやっているの!リヒトくん!」

「冷静になれ、このままじゃ大変な事になる!まずはマリアの千切れた指だ、指を集めよう」

「解った…そうだよね」

マリアの指を集めてマリアの手に合わせた。

千切れているから、もしついたとしても綺麗にはつかない。

「リタ…無いよりはマシだよな…」

「馬鹿言わないで無いよりはあった方がマシだわ」

そうだよな…

それなら、これしか無いな。

俺は収納袋から針と糸を取り出した。

「これしかないな」

「一体、なにをしているの? 指を糸で縫うなんて」

押さえながらなんて、上手くつかない。

取り敢えず、指と手を無理やり縫い合わせて、そこから高級ポーションを振りかけた。

同じく、頭皮ごと髪が無くなった頭部に高級ポーションを振りかける。

これで良い。

「次はエルザだ! 手を持ってきて」

「うん」

リタだって勇者パーティだ一旦落ち着けばテキパキ動ける。

エルザの手を縫合して同じく上級ポーションを振りかけ、同じ様に頭部にも振りかけた。

後はこの曲がった足だが、無理やり正常な方向に向けて、ナイフで切りつけ上級ポーションを振りかけた。

後は繋がったのを確認して指や手の糸を抜糸した。

「これでどうにか終わったな」

「…うん」

2人を順番に抱き上げベッドで寝かし…宿屋の主人にお詫びを言い幾ばくかのお金を包んだ。

本来は迷惑だろうが、勇者パーティだから渋々「仕方ないですね」で済んだ。

「酷いもんだな」

2人の頭皮ごと無くなった髪はもう戻らない。

マリアの右手の指は千切れていたから左手の指より短い。

この傷跡は一生消えないし、神経迄繋がっているとは思えないから多分右手の指は、もう動かないだろう。

エルザの手もそうだ。

繋がりはしたが傷迄は消えないし、これも千切れていたから、もう動かせない筈だ。

そして足…一応正常な位置にして切って上級ポーションを振りかけたが、もう元の様に自由に走り回る事は出きないだろう。

マリアが『パーフェクトヒール』でも覚えればどうにかなるかも知れないが、そこに至るまで5年以上は掛かる。

どうするんだよ…これ!

「それで、何故こうなっているのか教えてくれないか?」

「うん…」

リタが静かに話し始めた。

◆◆◆

隣の部屋から大声が聞こえてきたから心配して見にいったの。

そうしたら三人が喧嘩していて…

「今、なんて言ったの?」

「冗談だよな?」

「冗談でも何でもない!お前等みたいなブスとなんて付き合う価値がねーから、男女の仲を解消するって言っているんだ! 戦い以外じゃ会う気がねーからそのつもりでいろ!」

「ちょっと待ってよ!ちゃんと話そう?私に悪い所があるなら治すから、ねぇ」

「少しは冷静になろうよ、私も悪い所があれば治すよ」

痴話喧嘩だから入らない方が良いと思って見ていたんだけど...

「うるせーな、お前達とは終わったんだよ!なんで俺がお前達みたいなブスでやれもしないブス女と付き合わなくちゃならねーの? やれる時は魔王討伐後じゃねーか?そん時はお前等、婆ぁじゃん!もう女として腐っているから抱きたくねーし!それに俺はもう他に良い女が居るから、戦闘以外じゃもう要らねーんだよ!このブス雑魚女」

「ガイア、嘘でしょう浮気していたの? 嘘だよね…嘘って言ってよーーーーねぇ」

「うるせぇな、離せよ!ブス!」

「いやだーーっ放さない、放さないからーーっ」

なかなか手を放さないマリアの髪をガイアが掴んで引き離そうとしていたのよ。

「いい加減離せよ…しつこいんだよこの糞女――っ」

「ねぇ、ちゃんと話そう…ねっ」

「いい加減にしろーーっ」

ブチブチッベリッ

音を立ててマリアの髪が頭皮ごと剥がれたの。

「嫌ぁぁぁぁぁ私の髪、私の髪がぁぁぁぁいやっ…逃がさない…」

狂った様に泣きながらマリアは更に強くガイアを掴んだの。

「糞ブスの癖にしつこいな、この指話しやがれーーっ、クソっ、チャージ!」

ガイアがスキルを使ってマリアの手を引きはがしたんだけど…

ブチブチッ、ボタッ。

思いっきり引きはがしたから指が千切れたのよ。

「ああっ、ああっ私の指、私の指がぁぁぁぁーーっ」

「俺が、俺が悪いんじゃない…お前が離さないのが悪いんだからなぁーーっ」

それを見ていたエルザが…

「ガイア…お前幾らなんでも可笑しいだろう? 最低だ…他の女と浮気した挙句、マリアに手をあげるなんて、歯を食いしばれ」

ドカッ

流石にキレたエルザがガイアを殴ったのよ。

「痛ぇーーな! 俺の顔に何してくれてるんだよ! 許さねーよ、おらよ!チャージ」

ガッ

それにキレたガイアがエルザの足をスキルを使って蹴り上げたの。

「女の足を勇者ともあろう者がスキルを使って蹴るか? 逃がさない」

片足を引きづった状態でエルザは扉の前でとうせんぼしていたわ。

「あ~あ、ただでさえ太くて醜い足がキモイな」

「ハァハァお前がしたんだろうがーーっ」

「いい加減しつこいんだよ、お前等、此処迄嫌われているのに話す事はないだろうが…しつこいんだよ!」

ブチブチッ

どかないエルザに頭に来たガイアがエルザの髪を掴み投げ飛ばしたの。

「痛いなぁぁぁぁーーっ幾ら暴力を振るっても逃がさないからなガイアーーッ、ハァハァ~」

「その手で俺を殴ったんだよな、本当にエルザムカつくぜ、おらよ」

「うわぁぁぁぁぁーーっ」

ガイアがエルザの手を掴み投げようとしたら、エルザの手が手首から千切れたわ。

「ハァハァ糞っ」

「もう良いだろう…はっきり言ってキモチ悪いんだよ…お前ら、今までは仕方なく相手してやったが…女としてはクズにしか思えないから、戦闘以外じゃ関わるんじゃねーよ…ブス」

「「ガイア…」」

「名前も呼ぶんじゃねーよブス」

振返りもせずガイアは去っていったわ。

◆◆◆

「それ本当か?」

「これを見て嘘だと思うの?」

ガイアは一体どうしたっていうんだ。

元から性格に問題があったが、こうも暴力的では無かった筈だ。

まるで別人みたいだ。

話し方も乱暴で、同一人物とは思えない。

俺の知らない『何か』が起こっている。

調べないと不味いな。

だが、それより今はマリアとエルザが心配だ。





 


しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

処理中です...