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第26話 何かが違う
しおりを挟む宿に帰ってきた。
「リヒトくん、良い所に戻ってきたよ…早く、マリアがエルザが…うっうっ…大変だから…」
リタに手を引かれながら、訳も分からず急いで二人の部屋に向かった。
何だよ…これ…嘘だよな…
「ううっ…酷いよガイア愛していたのに…こんなの無いよ…うわぁぁぁぁぁぁーーー酷いよ、酷いよーーっ…ううっ」
「ガイア…許さない…お前は絶対に、愛していた私にこんな事を、うわぁぁぁーーっ」
酷いなんて物じゃない。
部屋の中は錯乱…いやそれ処じゃない半壊していた。
それよりも二人の怪我が半端ない。
マリアの薄水色の長い髪の一部は頭皮ごと一部が無くなっていた。良く見ると右手の指が親指を残して全て無くなっている。
そんな状態なのにマリアは凄まじい形相で叫びながら床を叩いていた。
エルザは右手が手首から先が無く、良く見ると近くに転がっていた。
左足は明らかに変な向きに曲がっていて、同じく頭皮が一部髪ごと無くなっていた。それなのに悔しそうに床をただひたすら殴っていた。
冷静に…冷静にならないとハァハァ。
冷静に…
「マリア!エルザ!何があったか解らないが落ち着け!」
「ガイア…ガイア、愛していたのに…うっうっうえうわぁぁぁぁん」
「ガイア、ガイア…許せない…うわぁぁぁぁーーっ」
仕方が無い。
「ごめん」
俺は剣を抜き、みねうちで気絶させた。
「なにやっているの!リヒトくん!」
「冷静になれ、このままじゃ大変な事になる!まずはマリアの千切れた指だ、指を集めよう」
「解った…そうだよね」
マリアの指を集めてマリアの手に合わせた。
千切れているから、もしついたとしても綺麗にはつかない。
「リタ…無いよりはマシだよな…」
「馬鹿言わないで無いよりはあった方がマシだわ」
そうだよな…
それなら、これしか無いな。
俺は収納袋から針と糸を取り出した。
「これしかないな」
「一体、なにをしているの? 指を糸で縫うなんて」
押さえながらなんて、上手くつかない。
取り敢えず、指と手を無理やり縫い合わせて、そこから高級ポーションを振りかけた。
同じく、頭皮ごと髪が無くなった頭部に高級ポーションを振りかける。
これで良い。
「次はエルザだ! 手を持ってきて」
「うん」
リタだって勇者パーティだ一旦落ち着けばテキパキ動ける。
エルザの手を縫合して同じく上級ポーションを振りかけ、同じ様に頭部にも振りかけた。
後はこの曲がった足だが、無理やり正常な方向に向けて、ナイフで切りつけ上級ポーションを振りかけた。
後は繋がったのを確認して指や手の糸を抜糸した。
「これでどうにか終わったな」
「…うん」
2人を順番に抱き上げベッドで寝かし…宿屋の主人にお詫びを言い幾ばくかのお金を包んだ。
本来は迷惑だろうが、勇者パーティだから渋々「仕方ないですね」で済んだ。
「酷いもんだな」
2人の頭皮ごと無くなった髪はもう戻らない。
マリアの右手の指は千切れていたから左手の指より短い。
この傷跡は一生消えないし、神経迄繋がっているとは思えないから多分右手の指は、もう動かないだろう。
エルザの手もそうだ。
繋がりはしたが傷迄は消えないし、これも千切れていたから、もう動かせない筈だ。
そして足…一応正常な位置にして切って上級ポーションを振りかけたが、もう元の様に自由に走り回る事は出きないだろう。
マリアが『パーフェクトヒール』でも覚えればどうにかなるかも知れないが、そこに至るまで5年以上は掛かる。
どうするんだよ…これ!
「それで、何故こうなっているのか教えてくれないか?」
「うん…」
リタが静かに話し始めた。
◆◆◆
隣の部屋から大声が聞こえてきたから心配して見にいったの。
そうしたら三人が喧嘩していて…
「今、なんて言ったの?」
「冗談だよな?」
「冗談でも何でもない!お前等みたいなブスとなんて付き合う価値がねーから、男女の仲を解消するって言っているんだ! 戦い以外じゃ会う気がねーからそのつもりでいろ!」
「ちょっと待ってよ!ちゃんと話そう?私に悪い所があるなら治すから、ねぇ」
「少しは冷静になろうよ、私も悪い所があれば治すよ」
痴話喧嘩だから入らない方が良いと思って見ていたんだけど...
「うるせーな、お前達とは終わったんだよ!なんで俺がお前達みたいなブスでやれもしないブス女と付き合わなくちゃならねーの? やれる時は魔王討伐後じゃねーか?そん時はお前等、婆ぁじゃん!もう女として腐っているから抱きたくねーし!それに俺はもう他に良い女が居るから、戦闘以外じゃもう要らねーんだよ!このブス雑魚女」
「ガイア、嘘でしょう浮気していたの? 嘘だよね…嘘って言ってよーーーーねぇ」
「うるせぇな、離せよ!ブス!」
「いやだーーっ放さない、放さないからーーっ」
なかなか手を放さないマリアの髪をガイアが掴んで引き離そうとしていたのよ。
「いい加減離せよ…しつこいんだよこの糞女――っ」
「ねぇ、ちゃんと話そう…ねっ」
「いい加減にしろーーっ」
ブチブチッベリッ
音を立ててマリアの髪が頭皮ごと剥がれたの。
「嫌ぁぁぁぁぁ私の髪、私の髪がぁぁぁぁいやっ…逃がさない…」
狂った様に泣きながらマリアは更に強くガイアを掴んだの。
「糞ブスの癖にしつこいな、この指話しやがれーーっ、クソっ、チャージ!」
ガイアがスキルを使ってマリアの手を引きはがしたんだけど…
ブチブチッ、ボタッ。
思いっきり引きはがしたから指が千切れたのよ。
「ああっ、ああっ私の指、私の指がぁぁぁぁーーっ」
「俺が、俺が悪いんじゃない…お前が離さないのが悪いんだからなぁーーっ」
それを見ていたエルザが…
「ガイア…お前幾らなんでも可笑しいだろう? 最低だ…他の女と浮気した挙句、マリアに手をあげるなんて、歯を食いしばれ」
ドカッ
流石にキレたエルザがガイアを殴ったのよ。
「痛ぇーーな! 俺の顔に何してくれてるんだよ! 許さねーよ、おらよ!チャージ」
ガッ
それにキレたガイアがエルザの足をスキルを使って蹴り上げたの。
「女の足を勇者ともあろう者がスキルを使って蹴るか? 逃がさない」
片足を引きづった状態でエルザは扉の前でとうせんぼしていたわ。
「あ~あ、ただでさえ太くて醜い足がキモイな」
「ハァハァお前がしたんだろうがーーっ」
「いい加減しつこいんだよ、お前等、此処迄嫌われているのに話す事はないだろうが…しつこいんだよ!」
ブチブチッ
どかないエルザに頭に来たガイアがエルザの髪を掴み投げ飛ばしたの。
「痛いなぁぁぁぁーーっ幾ら暴力を振るっても逃がさないからなガイアーーッ、ハァハァ~」
「その手で俺を殴ったんだよな、本当にエルザムカつくぜ、おらよ」
「うわぁぁぁぁぁーーっ」
ガイアがエルザの手を掴み投げようとしたら、エルザの手が手首から千切れたわ。
「ハァハァ糞っ」
「もう良いだろう…はっきり言ってキモチ悪いんだよ…お前ら、今までは仕方なく相手してやったが…女としてはクズにしか思えないから、戦闘以外じゃ関わるんじゃねーよ…ブス」
「「ガイア…」」
「名前も呼ぶんじゃねーよブス」
振返りもせずガイアは去っていったわ。
◆◆◆
「それ本当か?」
「これを見て嘘だと思うの?」
ガイアは一体どうしたっていうんだ。
元から性格に問題があったが、こうも暴力的では無かった筈だ。
まるで別人みたいだ。
話し方も乱暴で、同一人物とは思えない。
俺の知らない『何か』が起こっている。
調べないと不味いな。
だが、それより今はマリアとエルザが心配だ。
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