24 / 38
第24話 勇者の要望 中編
しおりを挟むさてと、今度は冒険者ギルドだな。
「デルモンド商会から押収したお金が届いていますか?」
「はい、届いております!こちらが目録になります!」
大した事無いな。
押収した金額が金貨7800枚(約7億8千万)
それに屋敷や金品や商品の価値が金貨2000枚(約2億円)
約10億円か、お金持ちと聞いたから100億とか持っているかと思っていたが…この世界だとこんな物か。
このお金はあくまで『差し押さえ』だから教会にお金を渡さなくちゃならない。
5パーセントの報酬については、あらかじめローアン大司教に話を通しておいたから問題は無い。
『商人と癒着している衛兵』前世で言うなら悪徳警官。
今の俺達にとっては必要な人材だ。
「それで、これを徴収してきた衛兵を呼んで貰えるかな?」
「依頼料は銀貨2枚になります」
この世界にはスマホが無い。
人を探したり呼んでもらうのにもお金が掛かる。
特定の衛兵を呼ぶのに詰所に行っても意味は無いからな。
「お願いします」
冒険者によって、すぐに衛兵は呼ばれてきた。
「これはリヒト殿、呼んで頂いたという事は褒賞の事ですか?」
此処に居る衛兵は10人余りだ。
代表して話をするという事は彼が纏め役なのだろう。
「勿論、そうだよ!約束の金貨490枚(約4千900万円)だ、分け方は任せるよ。これは正式な報奨金だから、こちらの書類にサインと受け取りサインをして欲しい」
「本当に貰えるのですか? 我々はてっきりあれは方便で…本当は罰があるのかと思っていました…」
そりゃそうだ『癒着』の現場を押さえられたのに、逆に褒賞が貰える。
普通に考えたら罠だ…そう思うよな。
「約束は約束だしな…それに君達にはお願いがあるから、今回はこんな形にしたんだ」
「これ程の報酬で我々に頼む事とは何かあるのですか」
「俺はこの街で『勇者パーティに羽を伸ばして貰おう』そう思っている…もし醜聞とかが広まりそうになったら、君達に手を打って貰おうと思ってね…」
「そう言う事ですか?」
「そう言う事だよ?話が早くて良いね…どうだ?!」
「ふぅ、現場を押さえられた我々に断れるわけないでしょう…お金なんて渡さなくても、命令すれば良かったのではないですか?」
「そんな事しても反感買うだけだろう? だったらしっかり甘い汁を吸って貰った方が良い…それに君達の事は今の書類を見て貰えば解るが教会関係者に連絡がいく…『聖女に無礼を働いた者』を断罪した人間としてな、名誉な事だろう?」
「教会に…」
「そうだよ…そうだ、君達に挨拶したいそうだ…俺がこれを持っているのは内緒にしてくれ」
『聖女の様の事、大義でした…これからもその気持ちを忘れずにいて下さい! このローアン感謝いたしますぞ』
「「「「「「「「「「なっ…ありがたき…」」」」」」」」」」
衛兵たちが何か言う前に水晶の通信は切れた。
ローアン大司教は聖教国のナンバー2だ。
そんな人間に感謝の言葉を掛けられたのだから、驚くよな。
「「「「「「「「「「…」」」」」」」」」」
この世界は一神教。
だから、下手な国王より権力はあるし尊敬もされている。
「君たちの手柄は大げさに伝えたから『教皇様』も知っている。これからも頑張ってくれよ」
此処迄すれば『何でもしてくれる悪徳警官』の完成だ。
こんな物で良いだろう。
◆◆◆
問題は此処からだ。
衛兵への報酬を受け渡したあと、俺はギルドの個室を借りて交渉する為に通信水晶を使った。
正直言って頭が痛い。
『おや、リヒト殿、またなにかご用意ですか?』
教皇でなくて良かった。
ローアン大司教だ。
『実は、ガイアが…その愛人を囲いたいと言われまして…』
『愛人ですか?良いですよ…その位の事なら私に相談なくリヒト殿の判断で構いませんよ。信頼していますからね』
『相手が普通の人間ならそうなのですが…相手が実は『エルフ』なんです』
『耳長ですか! それは困りましたね…』
エルフは人権は普通にあるが亜人扱い。
女神よりも精霊を信仰する彼女達を彼らは嫌っている。
如何に勇者と言えと、今回は難しいかもな。
『はい、困っております…ですがかなり入れ込んでおりまして最初は『側室』とまで言われたのですが、どうにか『愛人』の話にしました』
『それで、そのエルフの身元は、どんな女性なのでしょうか?』
『娼婦です』
『そうですか…今暫くお待ちください』
流石のローアン大司教も困るよな。
暫く待たされた。
『いま、教皇様と話がつきまして『愛人』でなく『物』として扱うように…という事です』
『物ですか?』
『はい、勇者が欲しがったから買い与える…ただそれだけです…要らなくなったら処分するように…以上です』
しかし、凄いな勇者絶対主義。
教会が嫌う亜人でも勇者相手なら認めるんだ。
尤も扱いは犬猫以下だが…まぁ良い。
ガイアが要らないと言ったらお金を渡し自由にしてやれば良い。
『処分』なのだから、その判断は俺で良いだろう。
『解りました』
取り敢えず、これでどうにかなるな。
俺はお金を降ろし、娼館に向かった。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説


異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。
柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。
詰んでる。
そう悟った主人公10歳。
主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど…
何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど…
なろうにも掲載しております。


王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた
こばやん2号
ファンタジー
とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。
気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。
しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。
そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。
※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです
かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。
強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。
これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

お願いだから俺に構わないで下さい
大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。
17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。
高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。
本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。
折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。
それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。
これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。
有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる