15 / 38
第15話 誘う
しおりを挟むガイアからあっさりと許しが出たから、後は俺の頑張りだ。
高級車の代わりは白馬の馬車で良いだろう。
レストランはちょっと高級なレストランでドレスコードが無い店を予約して、念の為個室を用意…プレゼントはこの間の物で良いだろう。
ネックレスだから丁度よい筈だ。
勇者パーティは旅から旅、そのせいもあってオシャレにも余り気を使っていられない。
マリア達の年齢なら宝石箱の一つ位裕福な平民だって持っている筈だが…それもない。
案外不憫なのかも知れない。
この辺りもおいおい考えるとして、取り合えず今夜は豪華なディナーでも堪能して貰おう。
馬車とレストラン…予約して帰るか。
◆◆◆
トントントン
「リヒト…どうしたの?」
「なにかようかな?」
「どうかしたのか?」
「いや、花でも活けようかと思って持ってきたんだ、上がらせてもらうね」
返事を待たずにそのまま入っていく。
幼馴染だし、ガイアも含みほとんどの世話を俺がしていたんだから少し可笑しいがいつもの光景だ。
「お花?!そんなの今までしてくれた事ないじゃない? その…どうしたのよ…あのさっき話した事と関係あるの…」
「私たちがガイアと恋仲なのは知っていると言っていたよね…それなのにどうしたのよ…」
「気持ちはうれしいけど困る」
恋愛というのは情報戦でもある…この辺りで1~2枚手札を切っても良いかも知れない。
「知っているよ…それにもう俺たちの別れは近い…そして別れた時がきっと一生の別れになる。だからせめてその時まで『大好きな幼馴染』と一緒に楽しく過ごしたいだけだから、余り気にしないで良いよ」
さぁここからだ。
「一生の別れ? リヒト、私は別れた後もガイアと正式に結ばれた後も友達をやめようなんて思わないわ!一生の別れなんかじゃないわよ」
地味に心に刺さるな。
「そうそう。リヒトが幼馴染なのも友達なのも変わらないよ」
「そんな事、考えていたのか?私がそんな薄情な人間に思えるのか?」
やっぱり、余り将来の事迄考えて無かったんだな。
これなら幾らでもつけこめる。
「嫌な事から言うよ! 魔王と戦い負けた時…ガイアを含む4人は死んでしまうからもう会えない」
俺の考えでは確かに4人は才能はあるが…恐らくは勝てない気がする。
『努力』それが桁違いに足りない。
「リヒト…最低…」
「確かにそうだけど…それを言うの…」
「…それで」
かなり暗くなり少し怒っているな。
「嫌な方から先に言ったんだ! 悪いな…それじゃ勝った時だ…魔王に勝てば恐らく褒美としてガイアは最低でも貴族、恐らくは伯爵以上の地位が貰える。そして貴族の子女、場合によっては王女との婚姻が待っている…今の王国には王子は居ない。そう考えたら王配になるかも知れない。貴族とその側室…王配とその側室、幾らS級とはいえ平民の俺がもう皆になんて会えるわけないだろう?」
「そうね…ごめんね、私リヒトの状況を考えてなかったわ…そういう事ならお別れまで仲良くし過ごすのも良いかもね…ごめん」
「…」
「そうだな、私はどうも状況を理解できていなかったようだ!言われてみて解ったよ…悪かった」
「謝る必要はないよ!普通はそんな先まで考えないからね…それで今日の夕食なんだけど、ガイアも今回は接待でかなり楽しんでいるだろうから、少し豪華な所を予定しているんだけど、どうかな?」
「豪華な所ね…いいわ、楽しみにしているわ」
「…そうね」
「豪華なご飯か、楽しみだ!」
「それじゃ、夕方に迎えにくるから、外食に出かける準備しておいてくれ」
「解ったわ」
「…うん」
「了解」
約束も取り付けたし、どうやらリタは気が付いたようだ。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説


劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。



転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる