勇者パーティを追放されかけた魔法剣士は、昭和バブルの夢を見るか?

石のやっさん

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第12話 リヒト...思い出

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俺は正直に言わして貰えば、幼馴染の3人が好きだ。

ガイアとは全く違ってちゃんとした理由がある。

容姿だけじゃなく、本当に全てが好きなんだから仕方がないだろう。

雰囲気、しぐさ、性格…その全てが好みなのだから仕方が無い。

そして、ガイアに対しても最低線の友情があるから少し心が板挟みになったが、友達だから解る…本気でガイアは彼女達を好きでない…友達だからもし、彼奴が、本気で好きなら…悲しいが俺は黙って身を引いたかも知れない。

だが…今回の件で、ガイアにとって女なら別の人間で構わない事が解った。

それなら簡単だ。

『ガイアにとって望む女を与える』

『彼女達に釣り合う人間になってしっかり口説く』

この二つが成立すれば、問題が無い筈だ。

◆◆◆

198×年代。

チノパンOK。

ラルフローランのポロシャツOK。

靴はプレーントウを履いて、薄手のカーディガンも羽織った。

財布はクリソ…雑誌にあった女性に好まれる服装できめた。

上京したての俺は彼女が欲しくて…こんな格好でナンパデビューした。

「へぃ、そこの彼女、僕とお茶しない?」

掴みは良い筈だ。

「馬鹿じゃない…バーカ、バーカ、田舎者丸出し、しっしっ」

此処からだ。

「僕、馬鹿だもん…だけど君が可愛いのだけは解るから、お茶だけで良いから?駄目」

「煩い…あっちいけ」

「田舎者は田舎に帰ってよ…」

「あはははっ、馬鹿みたい」

馬鹿にされて引き下がってはいけないのは知っている。

偉大なる佐々木さんや鷹さんも(ナンパ本)で言っていたしな。

『声を掛けないなら可能性は0パーセント…だが声を掛けるなら可能性は0パーセントじゃない、アイドルだって口説けるんだぜ』と。

それを胸に来る日も来る日も大学の授業をそっちのけでナンパ。

アルバイトしてはブランド服を買って…ナンパに車が有利と聞いては中古車でソアラをローンで買った。

江の島にも遠征してナンパ。

数をこなし、日々そんな生活をして俺はすっかり垢ぬけ都会に染まっていった。

「そこの彼女、良かったらお茶しない?」

俺の事を値踏みするような目。

そして…
「君可愛いね、お茶だけなら良いよ…行こうか?」

ナンパに成功しだすようになる。

ナンパの最終目的は勿論『ホテル』でのエッチだ。

「きゃははっ貴方童貞なの? その歳でキモイ…仕方ないから相手してあげるけど? さっさと終わらせてよね」

おれの初体験はワンレンボディコンの綺麗なお姉さんに馬鹿にされ最低の経験として終わった。

その後もナンパは続け

「ナニコレ信じられない、全然気持ち良くないんだけど、最低」

とどうにかナンパでホテルまで誘えるようになったが…今度はSEXで罵られるような経験が続く。

風俗に通ってはみたが、綺麗な美女が献身的にしてくれるだけだから意味はない…感動する位の美女も居たけどな。

数をこなす事は人間を変える。

やがて、俺はそれさえも克服した。

最低、前技で40分、行為は1時間以上、自分が楽しむより相手を楽しませる事に集中…そして終わった後は、ピロートーク。

此処迄すれば、大抵の女は満足する。

田舎から出てきた俺は…自分でも『変わった』と思える程、モテる男に変わった…と思えた。

だが、それと同時に周りを馬鹿にする人間になっていた。

『軽自動車なんて乗っているから、その程度の女しか口説けねーんだよ』

『あの程度の女で満足するなんて、まぁブサイクじゃ仕方ねーか』

口に出さないが恐らく当時の俺は馬鹿にするような目で周りを見ていた筈だ。

『俺は何時も綺麗な女を自分の彼女にしていた』そういう自信はある。

綺麗な女を彼女にし続けるのには努力が居る。

長い髪にボディコンにヒールモデルみたいに綺麗な女…遊びも美味い。

そんな女を彼女にし続けるには、貢物に豪華な食事…そして、間接照明にお洒落な家具の部屋、それが必要になる。

幸い、当時はバイトでも頑張ればかなり稼げた。

だから、お金に不自由はしなかった。

女に走り…授業をおろそかにした結果が自主退学。

尤も当時はそれで良いと思った。ただモテる為にお金を稼いだ。

当時はバブル。

大学中退して就職後も会社の経費で飲み放題が平でもありつけた。

キャバクラでヘネシーやマーテルの高級酒を飲みながら水商売の女性を口説く日々。

水商売の女ですら、俺は口説けて楽しいナイトライフを送っていた。

俺は…自他ともにモテる男だ。

本当にそう思っていた。

だが…ある時、俺は気がついてしまった。

『こんな物になんの価値があるのか』

俺がモテるのは『金がある』『貢ぐから』『カッコ良いから』それに過ぎない。

稼げる仕事にカッコ良い車、お洒落や流行に敏感…これは俺が背伸びして手に入れた物だ。

全てが虚しい…これは本当に恋していたわけじゃ無い。

そして、俺はきっと…本物の恋を手にしていない。

その証拠に俺は…バブルがはじけて金が無くなった時から…

幸せで無かった気がする。

◆◆◆

嫌な事を思い出してしまった。

前世の俺は幸せでなかった。

『良い女』を抱いただけの人間だった。

相手の女もきっとそうだ…

俺が遊び人だったから、相手もそういう人間ばかりが寄ってきた。

それだけだ。

良い女の体…そんな物、風俗に行けば買える。

本当に欲しい物、それは『心』なんだ。

多分俺は、馬鹿をやってそれを手に入れるチャンスを逃したんだ。

『楽しそうにしていた高校生の男女』

『手を繋いで歩いていた大学生』

これは少し違うが『女が自分を捨ててまで貢いでいるホスト』

ちゃんと見ていれば『心』の繋がりが見えていた筈だ。

そして、それを大切にしていれば…きっと俺にも…ちがった結末があったはずだ。

『全部俺が悪い』

本当に欲しい物が解らず…生きた自分が悪い。

今度の人生は…間違えない。

そう…俺は

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