勇者パーティを追放されかけた魔法剣士は、昭和バブルの夢を見るか?

石のやっさん

文字の大きさ
上 下
1 / 38

第1話 情けなくともしがみ付く

しおりを挟む

パーティーリーダーであり勇者のジョブを持つガイアが告げる。

「悪いが今日でクビだ」

「ちょっと待ってくれないか?」

 ガイアとは幼なじみだ。

 「今迄ずっと仲間で支え合いながらやっとここまで来た」

そう思っていた。

能力が低い分、俺なりには努力したつもりだ。

 剣聖のエルザ

 聖女のマリア

 賢者のリタ

 五人揃ってSランクパーティー『ブラックウイング』そう呼ばれていた。

やや中二病な名前だがまぁガイアは勇者だし、剣聖や、聖女、賢者まで居るから可笑しくないな…

確かに最近の俺は取り残されていた。

ジョブの差で成長した3人に能力が追いついていないのは事実だし、馬鹿にされるのは仕方が無い。

だからってクビは無いだろう。

分け前が少ないのも我慢したし、下働きを嫌だが殆ど俺がしていた。

それなのになんだよ!

俺だって腐ってもSランクパーティーのメンバーだぜ。

確かに4人には劣るけど…

此処を出れば、幾らでも次があるんだ。

だけど…俺達、幼馴染だよな。

仲間だよな…他の知り合いなんて居ない。

こいつ等が凄いだけで他のパーティなら余裕で通用するし、きっと重宝される事間違いない。

それは解るんだ。

その位の価値はあるんだ…だけど…

『だけど、此処に居たい』


「ついて来れないのは分かっているだろリヒト」

「そうだな、確かに魔法戦士の俺は皆より劣るよ」

確かにその通りだ。

だけどガイア…親友だろう?

俺…此処に居たいよ。

馬鹿にされても…此処に居たいよ。

俺には友達や幼馴染はお前達しか居ないから…

「勇者とし大きく飛躍するには大きな手柄が必要なんだ。残念ながらお前とじゃ無理なんだ。なぁ分かってくれよ、パーティを抜けてもお前が親友なのは変わりないからな。」

そんな訳無いじゃないか…

魔王城への旅を目指す皆に、もう会うことは無いだろう。

此処で別れたら最後じゃないか…

ガイア…俺は『親友』じゃないのか…なぁ。

皆はどうなんだ?

幼馴染で良く面倒を見ていたリタの目を見た、彼女ももう昔の優しい目をして居ないしガイアに恋する女になっているのが良く解る。

「私もガイアの意見に賛成だわ!貴方はもうこのパーティについていけないじゃない。きっと近いうちに死ぬか大怪我をするわ..さっさと辞めた方が良い...これは貴方の事を思って言っているのよ」

そうか…よ。

ふと、リタの左手に目が行く。

薬指には見覚えのない指輪があった、これは多分ガイアが買い与えた物だろう。

勇者と魔法戦士、仕方ないと諦めもつく。

他の2人も同じ指輪をはめていた。まぁそう言う事だ...よな

別に恋人にしたいなんて思って無い。

親友、幼馴染だから傍に居たい…それだけだったのに…

ハーレムパーティに俺は要らない。

そう言う事なんだよな…

『それでも俺は此処に居たい』

「リタ...そんな事を言わないでくれよ、確かにこの先は厳しいかも知れないけど、あと1年、いや半年で良い…此処に居させて貰えるように頼んでくれないか? 仲の良い幼馴染だろう? なぁ頼むよ」

「....」

「なんで何も言ってくれないんだよ」

「…」

なんで、そんな冷たい目で俺を見るんだよ。

「リタがガイアと恋仲になったのは知っている! それでも俺は幼馴染で友達だろう…同じパーティに居ちゃ駄目なのか?」


「し...知っていたの?」

「相手がガイアじゃ仕方ない、ガイアは勇者だし、凄く良い奴だ...他の男なら腹も立つが、ガイアなら諦めもつく…別に恋人になりたい訳じゃない…此処にいたいだけだなんだ」

「ごめんなさい!」

「此処に、頼むから居させてくれないか?」

ただ、俺は此処に居たいだけなんだ。

「大人しく村に帰って田舎冒険者にでもなるか、別の弱いパーティでも探すんだな」

「ガイア、頼むから、此処に居させてくれないか? 1年、いや半年で良いんだ、俺にとってはお前達が全てなんだよ!」

相談も無しにこれかよ…此処の居たい…それだけだ。

ガイアは勝ち誇った顔で俺を見ている。

思いっきり、俺をあざ笑っている…親友だけど一番嫌な目だ。

何をしても優秀で、顔も良くて、強くて、おまけに勇者に選ばれた。

そんなお前が、おれは自慢だったんだ。

親友だと思っていた…いや、今も思っている。

ハーレム状態が良いならそれでも良い。

だから、俺の居場所を奪わないでくれ。

3人の幼馴染も好きだが、それと同じ位お前も…大切に思っているんだ。

俺には親友だったお前が一番だからよ。

「さようなら、リヒト」

「さようなら」

「バイバイ ごめん...」

 三人の幼なじみが一斉にお別れの言葉を言ってくる..堪えるなこれ..


「うわぁぁぁぁーーっ頭が、頭が割れる様に痛いーーっ」

「おい、リヒト別れたくないからって冗談はよせ!」

「リヒト最低」

「ふざけないで」

「おい冗談は」

「あぁぁぁぁーーっ頭が割れる様に痛い、ハァハァヒュウゥゥゥハァハァ痛いーーーっ」

「ガイア、これ冗談じゃなくて白目剥いているよ」

「マリア、回復魔法だ」

「うん…嘘、効いて無いわ…これなら」

「「「「リヒトーーーォ」」」」

4人の顔が霞んで良く見えなくなった。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

王太子に転生したけど、国王になりたくないので全力で抗ってみた

こばやん2号
ファンタジー
 とある財閥の当主だった神宮寺貞光(じんぐうじさだみつ)は、急病によりこの世を去ってしまう。  気が付くと、ある国の王太子として前世の記憶を持ったまま生まれ変わってしまうのだが、前世で自由な人生に憧れを抱いていた彼は、王太子になりたくないということでいろいろと画策を開始する。  しかし、圧倒的な才能によって周囲の人からは「次期国王はこの人しかない」と思われてしまい、ますますスローライフから遠のいてしまう。  そんな彼の自由を手に入れるための戦いが今始まる……。  ※この作品はアルファポリス・小説家になろう・カクヨムで同時投稿されています。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

処理中です...