上 下
88 / 94

VS武神

しおりを挟む
頭の中にまた声が聞こえる。

《武神って奴はよう、力でねじ伏せないと負けを認めないんだぜ》


「ならばいくぞトール」

俺は拳を振り上げ殴り掛かった。

「うわはははっ少しは見直したぞ、真正面から俺に殴り掛かるとはな」

「ほざけっ」

そのまま振りぬく勢いで俺はトールに殴り掛かった。

拳と拳がぶつかり、吹き飛ばされたのは俺だった。


「俺の渾身一撃に耐えるとは、少しだけ見直したぞ」

「それはどうも」

やはり、ダメージは無い、ただ力負けしただけだ。

なら、勢いをつければ良い。

距離を一端とり、そこから走り加速する。

天使の羽を広げ、そのまま急上昇して落ちる速度の加速に更に加速を加えそのまま蹴った。

それを受け止めようとしたトールはそのまま吹き飛んでいき岩にめり込んだ。

だが、流石は軍神、かすり傷位しか無い。

「ほうっ、俺に傷を与えるか、クズ扱いしたのは詫びよう、なかなかの使い手だ、最大の栄誉を与える、俺と戦いそして死ね」

「死ぬのはお前だ」

トールは手を上にあげた。

その瞬間に稲妻が落ち、トールの手に稲妻を纏った剣が現れた。


「武とは拳だけにあらず、武器の戦いもまた武、だが俺は武神、今迄武器を使った事は無かった、武神に武器を使わせた栄誉と共に死ね、歴史にお前の名前は永遠に刻まれるだろう」

「そうか、だがそれは剣が無ければ俺に勝てないという逃げだな」

「はははっ、何をいうのか、お前も剣を持っているじゃないか? 使って良いぞ、これで互角だ」

「成程、俺はこの剣を使えば良いんだな」

「そう言う事だ」

《馬鹿め、この剣の名はライトニングソード、聖剣の中の聖剣、恐らく地上では最強の剣だ、これ一本で奈落にある全ての聖剣を叩き折れる、最早俺に負けは無い》


「なら、行くぞ、手を貸してくれよ七星神剣...ん?」

【手をかしてやるぞ、小僧の子供】

刀身から錆が全て落ちて青く輝き始める、そしてまるで星を散りばめた様な輝きに包まれる。


「待て、それは神剣なのか」

頭の中に幾つものトールの斬り方が浮かぶ。

その中で一番、適切な物を選んだ。

「七星流星剣」

まるで流星の様な剣戟が無数に繰り出される。

その剣戟の前にはトールは成すすべも無くただ斬られえぐられていくだけだった。

だが、普通に考えたらただただ残酷な光景が、まるで宗教画を見るかの如く美しく見えた。




【ラファェルSIDE】

袋に詰められたラファエルは首だけ何とか復活していた。

天使の目で透視しながら戦いを見ていた。

「綺麗、凄いわね...何で私はルディウス...様を天使だなんて蔑んだのか解らないあんなに美しくて綺麗な存在見たこと無い、あの方は絶対に私より遙かに上位の存在、多分神、しかもイストリアみたいな実力が無い神じゃない、あれ程の存在、この世界に釣り合う様な女何て私しか居ないと思う...あの方なら仕えても良い..寧ろ仕えたい」

堕天使とはいえ元は天使。

天使は思ったよりも上下を気にする存在。

元天使長であり、自分より上の存在に殆ど逢った事が無いラファエルが《こうなってしまうのも仕方ない》のかも知れない。


【女神イストリアSIDE】


「綺麗...」

イストリアはうっとりとした表情でルディウスの戦いを見ていた。

今迄、勇者に力を与えていたが、その全てが殺された。

たった1人で頑張ってきたが、誰も味方の居ない孤独を味わっていた。

そんな中で誰かが私に与えてくれた《天使》

それなのに、敵には堕天使に、武神が居た。

そして、無惨にも私の天使はボロボロにされた。

もういいや、神界の事情何てしらない...私があの二人を殺せば良い。

罰を受けたって私は女神、死ぬ事はない。

禁錮の1000年位の罰で済む筈だ...それであの天使を救えるならそれで良い..

そう思って様子を見たら...

なにこれ? 凄いラファエルを圧倒している、これ絶対に天使じゃない、元天使長のラファエルを圧倒できるなんて。

初めて見た時に《凄く可愛い子》って思ったけど、今の彼はそう、人間でいうなら《凛々しい王子様》に見える。

女神の私が目を離せない。

女神が見るのは外見だけでない、魂の輝きも一緒に見えてくる。

女神は平等に見る存在、その私がルディウスには夢中になる。

どうしたらいいんだろう? 

こんなに私を夢中にする存在なんて、居ない筈。

もしかして、これは私のお見合いだったのかな...

そうだ、何処かの神が、私の旦那になる様な眷属を送ってくれたんじゃないかな?

そうじゃ無かったら、突然私の前に《こんな存在》が現れる訳が無い。

処女神として生きて来たけど、あれ程の相手ならそれを捨てても良い。

いっそのこと、この世界の主神を彼に譲って私はその妻になっても良いかも知れない。

きっとルディウスと並ぶ私の像は...考えただけでも嬉しすぎる。

この戦いが終わって全てが片付いたら...婚姻の神託を卸そうかな。

そしたら、全ての人間に祝福を与えちゃおう、だって世界を本当に愛せそうなんだから...きゃはっ。

「だけど、本当に...私のルデイウスは綺麗ね...うん」



【創造神SIDE】


「何なんだこれは」

何処の世界に、天使長を倒し、武神を倒せる存在が居るというのだ。

持っている剣は神剣では無いか。

あの神剣は私でも造れない。

使った技の多くは、この世界にある物を遙かに超えている。

あれは、そう神だ。

しかも多分あれでも本気を出していない。

もしくは封印されている。

その封印された状態でも邪神に手が届く程強い。

じゃぁ、封印が外れたら、解らない、我にすら手が届くかも知れぬ。

もうあの世界の勝敗は決まった。

《イストリアの勝ち》だ、それはもう覆らない。

終わりだな...


【魔王SIDE】


「どうだ、我らが崇め奉る神は」

「異存はありません、直ちに軍を解散させます」

「それが良い」

「あの素晴らしさ、美しさ、魔族が敬うのに相応しい素晴らしい神です、生贄をとっても何も出来ないようなクズ邪神とは違いますな」

「何の代償も無く蘇らせる事が出来る、邪神とは全く違う」

「その通りでございます、魔王都の邪神像は全て焼き払ったそうです」

「そうか、これからは魔王国や魔王領全ての邪神像を焼き払い、ルディウス様の肖像画に変えていけ、ルディウス様の神像も出来るだけ早く完成させるように」

「ドワーフに急ぎ作らせております」

「うむ、完成が楽しみだ、巫女と言う歳ではないが、何故かあの4人を気に入っているようだからそのまま与えて、この城を越える神殿もこれから作るとして、後はどうすれば良いのだろうか?」

「まぁ、その辺りは後で要望を聞いて見れば良いでしょう? なんだったらエルフもサキュバスも種族事全部上げてしまえば良いのかもしれませんぞ」

「まぁ、あの種族は人間には物凄く美しく見えると聞く、それもありだ、ルディウス様は人間出身、それもありか」




剣事切り刻まれた武神はそれでも生きていた。

だが、それはほぼただの肉片にしか見えなかった。

その状態でも話せるというのは流石に武神と言えよう。


「俺の負けだ、この世に武神と生まれて...今迄負けなし、さぁ好きにするが良い」

ルディウスはラファエルの時の様に《首だけ残し》他を吹き飛ばした。


「楽しかったな、この戦い」

「そうか...」

それだけ言うとトールは話さなくなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

【完結】R18 狂惑者の殉愛

ユリーカ
恋愛
7/21追記:  ご覧いただいてありがとうございます!HOTランクイン嬉しいです!  二部完結しました。全話公開予約済み。完結に伴いタグを修正しています。よろしければ二部もお付き合いください。二部は視点が変わります。  殉愛とは、ひたむきな愛を守るために命を賭すことです。 ============  エルーシア(エルシャ)は幼い頃に両親を亡くした侯爵令嬢だった。唯一の肉親である侯爵家当主でエルーシアを溺愛する異母兄ラルドに軟禁されるように屋敷の中で暮らしていた。  そんな中で優しく接してくれる馬丁のエデルと恋仲になる。妹を盲愛する義兄の目を盗み密会を重ねる二人だったが‥‥  第一部は義兄と家人、二人の男性から愛され求められ翻弄されるヒロインのお話です。なぜ翻弄され流されるのかはのちにわかります。  兄妹×三角関係×取り合い系を書いてみたくて今までとちょっと違うものを目指してみました。妹をドロドロにガチ愛する兄(シスコンではないやつ)がダメでしたら撤退でお願いします。  さて、狂っていたのは一体誰だったんでしょうかね。  本作品はR18です。第一部で無理やり表現があります。ご注意ください。ムーンライトノベルズでも掲載予定ですがアルファポリス先行です。  第13話より7時20時で毎日更新していきます。完結予定です。  タイトルの※ はR18を想定しています。※以外でもR18未満のベタベタ(キスハグ)はあります。 ※ 世界観は19世紀初頭ヨーロッパもどき、科学等の文明なし。魔法スキルなし物理のみ。バトル要素はありません。 ※ 二部構成です。二部にて全力で伏線回収します。一部は色々とっ散らかっております。黒幕を予想しつつ二部まで堪えてください。

【R 18】誇り高き伯爵夫人が卑劣な召使いに膣内射精を許してしまい懐妊した

♡射手矢♡
恋愛
エッチな人だけ読んで下さい

悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。

ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

恋人を寝取られた挙句イジメられ殺された僕はゲームの裏ボス姿で現代に転生して学校生活と復讐を両立する

くじけ
ファンタジー
 胸糞な展開は6話分で終わります。 幼い頃に両親が離婚し母子家庭で育った少年|黒羽 真央《くろは まお》は中学3年生の頃に母親が何者かに殺された。  母親の殺された現場には覚醒剤(アイス)と思われる物が発見される。  だがそんな物を家で一度も見た事ない真央は警察にその事を訴えたが信じてもらえず逆に疑いを掛けられ過酷な取調べを受ける。  その後無事に開放されたが住んでいた地域には母親と自分の黒い噂が広まり居られなくなった真央は、親族で唯一繋がりのあった死んだ母親の兄の奥さんである伯母の元に引き取られ転校し中学を卒業。  自分の過去を知らない高校に入り学校でも有名な美少女 |青海万季《おおみまき》と付き合う事になるが、ある日学校で一番人気のあるイケメン |氷川勇樹《ひかわゆうき》と万季が放課後の教室で愛し合っている現場を見てしまう。  その現場を見られた勇樹は真央の根も葉もない悪い噂を流すとその噂を信じたクラスメイト達は真央を毎日壮絶に虐めていく。  虐められる過程で万季と別れた真央はある日学校の帰り道に駅のホームで何者かに突き落とされ真央としての人生を無念のまま終えたはずに見えたが、次に目を覚ました真央は何故か自分のベッドに寝ており外見は別人になっており、その姿は自分が母親に最期に買ってくれたゲームの最強の裏ボスとして登場する容姿端麗な邪神の人間体に瓜二つだった。  またそれと同時に主人公に発現した現実世界ではあり得ない謎の能力『サタナフェクティオ』。  その能力はゲーム内で邪神が扱っていた複数のチートスキルそのものだった。  真央は名前を変え、|明星 亜依羅《みよせ あいら》として表向きは前の人生で送れなかった高校生活を満喫し、裏では邪神の能力を駆使しあらゆる方法で自分を陥れた者達に絶望の復讐していく現代転生物語。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

処理中です...