上 下
66 / 94

【閑話】邪神と女神と創造神...そして女神顕現

しおりを挟む
魔族からの悲痛な声が聞こえて来る。

魔王の祈りが此処まで聞こえて来る。

こうまで聞こえて来るのであれば神託を卸さなければならない。

《我の使徒たる魔王に悪魔神官よ、何事だ》

「邪神様、それが女神側はこの世界に、天使を降臨させました...それにより、スカルと死霊軍団が死滅しました」


死霊は本来、禁じ手だ...あんな物使ったら勝利はほぼ確定してしまう、ましてそれを倒すなど、確かに天界の住人で無ければ無理だ。


《天使だと》

「はい、しかもかなりの実力のある天使のようで僅かな時間で、スカルと死霊の軍団が昇天してしまいました」


そんな天使が居るのか? あの女神はそこ迄強力な女神では無い。

あんな女神に、そんな強力な天使をこの世に送り出す事は出来ないはずだ。

力のない天使ならいざ知らず、強い天界の住人や悪魔は余程の対価を払わないと顕現では出来ない。

少なくとも爵位のある悪魔を召喚するなら魔族200名位の生贄が必要だ。

それの対になる天界の住民である天使を召喚するなら同じような対価が必要だ。

だが、あの女神は《その様な物》を嫌う。

だから、生贄を使った召喚は考えられない。

では、突然現れた《天使》は何者なのだろうか?


《我の方でも調べて見よう...本当にその存在が《天使》であるなら、こちらも爵位を持つ悪魔、公爵級を送り込む事も考えねばならぬ》

「はっ考えて頂けるので」

《送るのは良い、だが、その為の膨大な対価は必要になる...それは我とてしたくは無い、暫く待つが良い》

「はっ全ては邪神様にお任せ致します」




【神界にて】(神々が集う場所)


邪神も流石にこれを見逃せないから、神界に報告に向った。

「ほう、女神イスタリアが...だがイスタリアにそんな強力な天使を送り込む事など出来ぬ筈だ」

「ですが、創造神様...天使が存在してわが陣営が莫大な損害を被ったのは真実です...このままだと魔王まで単騎で倒されるでしょう」

「だが、邪神ゲストリアよ、天界から人間界、魔界から人間界に行く場合は大きな代償無くて《力のある存在は顕現不可能だ》」

「そうは言われても、存在しているのです」

「イスタリアは強い女神では無い、そんな天使が味方に居る等聞いた事は無い、正直な所、あの世界は魔王が本気になれば勇者パーティーが殺され世界は魔族の物になる...それが確定された程、差がある世界だった筈だ」

「幾ら言われても存在している者は存在しているのです」

「そこ迄言うなら、今見て終わりにしよう...だだ、もし謀りであった場合は責任をとって貰うぞ」

「構いません」

「ああああーーーーーっああん」

「どうかなさいましたか創造神様」


嘘だ...本当にいるぞ。

しかも、とんでもなく強力な天使が 能天使で中級天使だと...あんな奴が居たらあの世界、最早勝敗は決した様な物じゃないか。

あれをどうにかしろと言うなら、それこそ、公爵級の悪魔、場合によっては邪神ゲストリアが出向かなければどうにもならんわい。

しかし、あのイスタリアの女狐め、儂を謀ったのか?

本当はあんな強力な天使を産みだし、人間界に顕現させる力を隠していたのか。

「確かに存在した...あんな力を持っている存在を送り込むなどあってはならぬことだ...今直ぐイスタリアを呼び出して話を聞かねばならぬ」



【それから30分後】


「お呼びでございますか、創造神様...げっ、ゲストリア」

「イスタリアよくもやってくれたな」

「何の事でしょうか?」


「これだ、これ」

創造神は、ルディウスを映し出し見せた。


「素晴らしい天使ですね、こんな美しくて綺麗な天使に仕えて貰えたら女神として凄く幸せですね...えっこれは私の世界、いや嘘、あの創造神様、これは私へのプレゼントですか? こんな美少年で強力な天使...素晴らしいですわね」


「これはイスタリアが作った存在では無いのか?」

「嫌ですわ、創造神様、私にあんな強力な天使を作る様な力があると思いますか?」


よく考えたら、イスタリアにそんな優れた能力は無い。

だからこそ、魔王側には《死霊を使わない》などハンデを指示した。

では彼奴は何者なのだろうか?

創造神たる私が知らない存在がこの世界に居るのだろうか?

少なくともあんなに力のある天使なら名前位は知っている筈だ。

では、あの者は一体。


「ねぇ、あの素晴らしい天使は、私の世界に居るんだから私の者で良いんだよね、はわぁぁぁぁっ見れば見る程綺麗な子ね~早く神にまで登って来ないかな? 」


「ゲストリア...イスタリアには...」

「はぁ。思い出しました..あのポンコツ女神にあんな存在作る事も顕現させる事も出来ませんね」

「そうじゃな」


「だけど、本当に凄いわ、誰がくれたのかな? 私の所まで昇ってくるのが楽しみ...待ちきれないからちょっとだけ顕現しちゃおうかな? えい」


「「おい」」


ほんの少しでも疑った自分達が恥ずかしくなってきたわい。




【現世にて】


教会に眩い光が降り注ぐ。

《天使よ...私に仕える美しき使徒よ...こちらに来なさい》

全てを祝福する様な音色が鳴り響いていた。


教会に居る、全ての者が、嫌この世界に居る全ての存在が、彼女を知っている。

心から崇め、慕い全ての者が信仰する存在、女神イスタリア、それが顕現した。

神託ならまだしも女神の顕現など...誰もが見たことが無い。



「あっああああれは女神様ーーーーっ まさか顕現なさるとは」


《私を信心する者よ、早く私の天使を連れて来るのです》


凄い力を感じて来てみれば...女神イスタリア様が何で此処にいるのか...こんな事ってあるのか?

《おお、我が愛しい天使よ、よくぞ我が世界に存在してくれました、このイスタリア感謝しますよ...この力無き女神の代わりに世界を救って下さい...そして何時か神になり私の前に...現れるのを楽しみにしていますよ...すみませんそう長くは存在....では、くれぐれも我が愛しい天使をお願いします...》

何か聞く前に消えてしまった。



【宗教者たち】



「ああああっーーールディウス様とはそこ迄の存在だったのですかーーっ! 天使である姿も仮の姿、やがては神に至る存在だったなんて、しかも、女神様が顕現してまで頼むとはーーーっ」


「これはやはり、イスタリア様の像の横にルディウス様の像を作らなければなりませんね」

「女神様に頼まれたのです、これまで以上に仕えなければ」



「これ、絶対に内緒でお願いしますね」

もう何がなんだか解らないな。

少なくとも教会全部への口止めを頼まないと...不味いだろう...これ。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

【完結】R18 狂惑者の殉愛

ユリーカ
恋愛
7/21追記:  ご覧いただいてありがとうございます!HOTランクイン嬉しいです!  二部完結しました。全話公開予約済み。完結に伴いタグを修正しています。よろしければ二部もお付き合いください。二部は視点が変わります。  殉愛とは、ひたむきな愛を守るために命を賭すことです。 ============  エルーシア(エルシャ)は幼い頃に両親を亡くした侯爵令嬢だった。唯一の肉親である侯爵家当主でエルーシアを溺愛する異母兄ラルドに軟禁されるように屋敷の中で暮らしていた。  そんな中で優しく接してくれる馬丁のエデルと恋仲になる。妹を盲愛する義兄の目を盗み密会を重ねる二人だったが‥‥  第一部は義兄と家人、二人の男性から愛され求められ翻弄されるヒロインのお話です。なぜ翻弄され流されるのかはのちにわかります。  兄妹×三角関係×取り合い系を書いてみたくて今までとちょっと違うものを目指してみました。妹をドロドロにガチ愛する兄(シスコンではないやつ)がダメでしたら撤退でお願いします。  さて、狂っていたのは一体誰だったんでしょうかね。  本作品はR18です。第一部で無理やり表現があります。ご注意ください。ムーンライトノベルズでも掲載予定ですがアルファポリス先行です。  第13話より7時20時で毎日更新していきます。完結予定です。  タイトルの※ はR18を想定しています。※以外でもR18未満のベタベタ(キスハグ)はあります。 ※ 世界観は19世紀初頭ヨーロッパもどき、科学等の文明なし。魔法スキルなし物理のみ。バトル要素はありません。 ※ 二部構成です。二部にて全力で伏線回収します。一部は色々とっ散らかっております。黒幕を予想しつつ二部まで堪えてください。

【R 18】誇り高き伯爵夫人が卑劣な召使いに膣内射精を許してしまい懐妊した

♡射手矢♡
恋愛
エッチな人だけ読んで下さい

悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。

ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

恋人を寝取られた挙句イジメられ殺された僕はゲームの裏ボス姿で現代に転生して学校生活と復讐を両立する

くじけ
ファンタジー
 胸糞な展開は6話分で終わります。 幼い頃に両親が離婚し母子家庭で育った少年|黒羽 真央《くろは まお》は中学3年生の頃に母親が何者かに殺された。  母親の殺された現場には覚醒剤(アイス)と思われる物が発見される。  だがそんな物を家で一度も見た事ない真央は警察にその事を訴えたが信じてもらえず逆に疑いを掛けられ過酷な取調べを受ける。  その後無事に開放されたが住んでいた地域には母親と自分の黒い噂が広まり居られなくなった真央は、親族で唯一繋がりのあった死んだ母親の兄の奥さんである伯母の元に引き取られ転校し中学を卒業。  自分の過去を知らない高校に入り学校でも有名な美少女 |青海万季《おおみまき》と付き合う事になるが、ある日学校で一番人気のあるイケメン |氷川勇樹《ひかわゆうき》と万季が放課後の教室で愛し合っている現場を見てしまう。  その現場を見られた勇樹は真央の根も葉もない悪い噂を流すとその噂を信じたクラスメイト達は真央を毎日壮絶に虐めていく。  虐められる過程で万季と別れた真央はある日学校の帰り道に駅のホームで何者かに突き落とされ真央としての人生を無念のまま終えたはずに見えたが、次に目を覚ました真央は何故か自分のベッドに寝ており外見は別人になっており、その姿は自分が母親に最期に買ってくれたゲームの最強の裏ボスとして登場する容姿端麗な邪神の人間体に瓜二つだった。  またそれと同時に主人公に発現した現実世界ではあり得ない謎の能力『サタナフェクティオ』。  その能力はゲーム内で邪神が扱っていた複数のチートスキルそのものだった。  真央は名前を変え、|明星 亜依羅《みよせ あいら》として表向きは前の人生で送れなかった高校生活を満喫し、裏では邪神の能力を駆使しあらゆる方法で自分を陥れた者達に絶望の復讐していく現代転生物語。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

処理中です...