上 下
52 / 94

王の最後

しおりを挟む
どうしてこうなってしまったんだ。

「今迄、お世話になりました、最後の情けで国外に逃がしますが...それが最後です」

「お前達は、儂を見捨てるのか?」

「王よ、私達がこれを行うのは、今迄の恩です、今や貴方は人間ではありません、家畜と同じです、さぁさっさと馬車に乗りなさい」


今や城には人は殆ど居ない、財産も綺麗な妃や娘もも既に教会に徴収された後だ。


これが《破門》の結果起きた事だ。

死刑と破門であれば、死刑の方が罪は軽い。

死刑は《人だからこそ》死によって償われる。

だが《破門》は人でなくなった事を現す。

教会に破門されるとどうなるか...この世界に生きれる場所が無くなる。

そして人として扱われなくなる。

家畜以下の扱いになる。

だったら女はどうか?どんな美女でも抱かれる事も犯される事も無い、

破門された女を抱いたら体が汚れるから、どんな美人でも最早最下層扱いになる。

《破門された女を抱いて地獄に落ちるなら、豚を抱いた方がマシ》これが一般的な意見だ。


もし破門された人間が水を飲もうと井戸に行ったなら、石を投げられ殺される。

汚れた人間が水を汲んだ井戸の水など飲めない。

破門された人間が持っていたお金等汚らわしくて触れない。

破門された人間に物を売った人間は不幸になる。

つまり、街に居たら水や食事にありつけずに餓死するだけだ。

しかも、水浴びも出来ないから体は汚い状態で無様に死ぬ事しかない。


「儂の破門はもう覆らないなだろう...儂が哀れと思うならせめて家族がどうなったのか教えてくれぬか?」

「本来なら最早家畜以下のお前に言う事は出来ぬが...第三王女は勇者ルディウス様の物になった、恐らくは奴隷か側室になるだろう、第一王女と第二王女はもう嫁いでいるが、教会が回収して恐らくは勇者ルディウス様の奴隷になるだろう、まぁそのまま居たら確実に殺されてしまうから奴隷としてでも生き残られるだけましだ、妃も一緒だ、ただこれはルディウス様が《欲しい》と言えばだ《要らない》と言えば全員死刑だな」

「そんな...? 息子は? 王子は?」

「そこに慈悲はある、死刑か破門か聞いたら《死刑》を選んだ、よって2人とも死刑となった」


「そうか? ならば最早儂が生きていても仕方ない...死なせては貰えないか?」

「はぁ? 何を言っておられるのか? お前は《破門》 死刑にはなれない...見苦しく生きていくしかない」

「儂は死すら選べないのか?」

「当たり前だろう」


粗末な馬車に揺られながら元王であったアレフ4世は旅立った。

そこには、もう王としての面影はなく、ただの老人にしか見えない。

そして馬車は王国の国境添いの森に着いた。

「王よお別れです」

「お前達は、儂を、余を王と呼ぶのか?」

「流石に人前では呼べませんが、此処には私達以外は誰もおりません」


「そうか、ならば忠義に礼を言おう」

「「「「「「有難き幸せに御座います」」」」」」


「さて、これで王つきの近衛騎士団長も終わり、此処からは自由になります...あんたが馬鹿やっちゃったからな」

「済まぬ」

「皆はどうだ? 行く所無いなら俺と野党でもやらないか? どうせ勇者絡みの免職、真面に職なんかつけないぞ」

「そうですね、団長、俺はあんたに着いていく」

「俺も」

「俺も田舎に帰りたくないからな」

「折角近衛騎士までなったのに...野党か、こりゃ親が泣くな、まぁしょうがない」


「さてと、これで俺たちは全員野党になった訳だ、最早国も教会も無い...此奴殺しちまおうぜ」

「「「「「おーーーっ」」」」」



「お前達、まさか儂を、余を殺す為に野党になったのか?」


「まぁな普通の人間が《破門》になった人間を楽にしてやったら問題だが、俺には家族が居ない。こうすりゃ問題無い」

「本当に済まぬ」

「俺はお前が気に食わないから殺す、それだけだ、他も全員一緒だ」

「「「「「そうだ」」」」」


「なら、何故泣いておる? 可笑しくないか」


「俺はもう騎士では無い...だが、騎士団長にまでしてくれた王を、守れもしない、助けも出来ない...すまないな、せめて楽にしてやる事しかできない」


「何を言うのか、王国一と言われるお前なら、死んだ事すら気がつかない程素早く儂を殺せる、野党に迄なってそれを行ってくれるお前に感謝だ...ありがとうバースト」


「それでは...」

バーストは一瞬でアレフ4世の首を跳ねた。

バースト達はアレフ4世の遺体を荼毘にふして焼き、その灰を川に流した...


こうしてアレフ王はこの世から人知れず去った。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

【完結】R18 狂惑者の殉愛

ユリーカ
恋愛
7/21追記:  ご覧いただいてありがとうございます!HOTランクイン嬉しいです!  二部完結しました。全話公開予約済み。完結に伴いタグを修正しています。よろしければ二部もお付き合いください。二部は視点が変わります。  殉愛とは、ひたむきな愛を守るために命を賭すことです。 ============  エルーシア(エルシャ)は幼い頃に両親を亡くした侯爵令嬢だった。唯一の肉親である侯爵家当主でエルーシアを溺愛する異母兄ラルドに軟禁されるように屋敷の中で暮らしていた。  そんな中で優しく接してくれる馬丁のエデルと恋仲になる。妹を盲愛する義兄の目を盗み密会を重ねる二人だったが‥‥  第一部は義兄と家人、二人の男性から愛され求められ翻弄されるヒロインのお話です。なぜ翻弄され流されるのかはのちにわかります。  兄妹×三角関係×取り合い系を書いてみたくて今までとちょっと違うものを目指してみました。妹をドロドロにガチ愛する兄(シスコンではないやつ)がダメでしたら撤退でお願いします。  さて、狂っていたのは一体誰だったんでしょうかね。  本作品はR18です。第一部で無理やり表現があります。ご注意ください。ムーンライトノベルズでも掲載予定ですがアルファポリス先行です。  第13話より7時20時で毎日更新していきます。完結予定です。  タイトルの※ はR18を想定しています。※以外でもR18未満のベタベタ(キスハグ)はあります。 ※ 世界観は19世紀初頭ヨーロッパもどき、科学等の文明なし。魔法スキルなし物理のみ。バトル要素はありません。 ※ 二部構成です。二部にて全力で伏線回収します。一部は色々とっ散らかっております。黒幕を予想しつつ二部まで堪えてください。

【R 18】誇り高き伯爵夫人が卑劣な召使いに膣内射精を許してしまい懐妊した

♡射手矢♡
恋愛
エッチな人だけ読んで下さい

悲しいことがあった。そんなときに3年間続いていた彼女を寝取られた。僕はもう何を信じたらいいのか分からなくなってしまいそうだ。

ねんごろ
恋愛
大学生の主人公の両親と兄弟が交通事故で亡くなった。電話で死を知らされても、主人公には実感がわかない。3日が過ぎ、やっと現実を受け入れ始める。家族の追悼や手続きに追われる中で、日常生活にも少しずつ戻っていく。大切な家族を失った主人公は、今までの大学生活を後悔し、人生の有限性と無常性を自覚するようになる。そんな折、久しぶりに連絡をとった恋人の部屋を心配して訪ねてみると、そこには予期せぬ光景が待っていた。家族の死に直面し、人生の意味を問い直す青年の姿が描かれる。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

恋人を寝取られた挙句イジメられ殺された僕はゲームの裏ボス姿で現代に転生して学校生活と復讐を両立する

くじけ
ファンタジー
 胸糞な展開は6話分で終わります。 幼い頃に両親が離婚し母子家庭で育った少年|黒羽 真央《くろは まお》は中学3年生の頃に母親が何者かに殺された。  母親の殺された現場には覚醒剤(アイス)と思われる物が発見される。  だがそんな物を家で一度も見た事ない真央は警察にその事を訴えたが信じてもらえず逆に疑いを掛けられ過酷な取調べを受ける。  その後無事に開放されたが住んでいた地域には母親と自分の黒い噂が広まり居られなくなった真央は、親族で唯一繋がりのあった死んだ母親の兄の奥さんである伯母の元に引き取られ転校し中学を卒業。  自分の過去を知らない高校に入り学校でも有名な美少女 |青海万季《おおみまき》と付き合う事になるが、ある日学校で一番人気のあるイケメン |氷川勇樹《ひかわゆうき》と万季が放課後の教室で愛し合っている現場を見てしまう。  その現場を見られた勇樹は真央の根も葉もない悪い噂を流すとその噂を信じたクラスメイト達は真央を毎日壮絶に虐めていく。  虐められる過程で万季と別れた真央はある日学校の帰り道に駅のホームで何者かに突き落とされ真央としての人生を無念のまま終えたはずに見えたが、次に目を覚ました真央は何故か自分のベッドに寝ており外見は別人になっており、その姿は自分が母親に最期に買ってくれたゲームの最強の裏ボスとして登場する容姿端麗な邪神の人間体に瓜二つだった。  またそれと同時に主人公に発現した現実世界ではあり得ない謎の能力『サタナフェクティオ』。  その能力はゲーム内で邪神が扱っていた複数のチートスキルそのものだった。  真央は名前を変え、|明星 亜依羅《みよせ あいら》として表向きは前の人生で送れなかった高校生活を満喫し、裏では邪神の能力を駆使しあらゆる方法で自分を陥れた者達に絶望の復讐していく現代転生物語。

私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ

Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」 結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。 「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」 とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。 リリーナは結界魔術師2級を所持している。 ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。 ……本当なら……ね。 ※完結まで執筆済み

処理中です...