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悲しみと憎しみ

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【聖剣の祠の近くの街ソード】

「教会に行くと勇者の証と身分証明カードが貰えるのか?」

「そうです、勇者様と私は恐らく同じ様な物になると思います」

「グレーテルは違うのか?」

「大体同じだけど、お金の請求が私のはアカデミーに行くんだよ、勇者と聖女は教会、それ位で基本は同じ」

「そうなんだ...あると便利そうだね」

「便利よ本当に、基本買えない物は無いし、宿が無い村とかは教会か、その土地の一番の実力者の家が借りられるわ、後は必要に応じて騎士を好きなだけ借りられるわね」

案外、恵まれているのかな?

ガキに世界を任せる様な奴らだけど支援はしっかりしている訳だ。

まぁどこぞのゲームみたいに《こん棒やひのき棒と僅かなお金だけ渡してさようならでは無いんだな》

まぁ、そんな冗談はしないよな。

「凄く便利そうだ」

「まぁ、冒険者みたいに稼ぎながら旅は出来ないから、これ位して貰えないとね...何年掛るか解らない旅だからね」

「確かにそうだ」

世界を任せられた挙句貴重な時間を取られた上で死ぬかも知れない。

当たり前だ。


「さぁ、着いたわよ」

小さな教会がある、綺麗ではあるが大丈夫か?

「大丈夫なのか?」

「どうかしたの?」


こんな小さな教会でそんな凄い物を発行できるのだろうか?


「もしかして、小さい教会だからとか考えていた」

「確かに、考えていた」

「転送魔法で送られてくるから大丈夫よ」

転送魔法って確かアマンダから聞いた話したでは大勢の魔法使いが凄い魔力を使って小さな物を送れるだけだった気がする。

「それって大変な魔法なのでは?」

「何言ってんだかなね...グレーテル」

「そうよね、勇者絡み以上の重要な物なんてない...多分教会はそう言うと思うよ」



【教会にて】


「これはこれは勇者ルディウス様、聖女ホワイト様に賢者グレーテル様、こんな小さな教会に来て頂けるなんて、出来る限りの歓迎を致します、是非お寛ぎ下さい」

「ご丁寧に有難うございます」

「しかし、ルディウス様も災難でしたな」

「災難」

彼奴らに絡まれて決闘したことか?

「偽勇者達の事ですか?」


「そうですよ、ただ、偽勇者を懲らしめて殺しただけなのにご家族を殺されて、故郷の領民を皆殺しにされるなど許される事ではありません、まさか、国王と枢機卿がそれをやるなんて大罪ですよ」

今、何ていった...頭が真っ白になった。

家族が殺された...だと...

故郷の領民が皆殺し...何の冗談だ。


「それはどういう事...だ」

「勇者様、もしや聞いて無かったのですか? 勇者様を偽物と間違えた、王国の国王と枢機卿が結託して故郷のヘングラムを滅ぼしたという事を」


「そんな馬鹿な、俺の母も死んだ父も、国に功績があった人間です...それでどうなったのですか? 国王と枢機卿はまさかと思いますが、偉いから無罪とか」

「そんな事はありません、枢機卿は恥を知る人間です、自ら死を選びローゼン殿に話をして首を跳ねて貰ったそうです」

「国王は?」

「国王のアルフ4世にはこれから教皇様と八大司祭様達が何だかの罰を与えるそうです」

「そうですか...すみません、何か疲れました、どこか部屋をお借りできますか?」

「すぐにご用意致します」

「ルディウス」

「ルディウス...」

「心配してくれてありがとう...だけど、今は一人にして欲しい」


「「解ったわ」」


【教会の客室にて】

この体のせいか、悲しみで一杯になる。

多分これは俺ではなくもう一人の俺の心、俺じゃなくルディウス本来の心だ。

恐らく、俺だったら《俺の女を殺しやがって、殺してやんよ》そんな感じに怒りが大きくなり、悲しいなんて思わない。

相手をぶち殺して...その日はきっと他の女を抱いて酒でも飲んで終わりだ。

そして直ぐに、そんな事を忘れる。


実際にあの時もそうだった。

逆恨みから俺の女を殺した奴がいた。

心底怒り狂った俺はそいつの、顔を潰した。

冗談ではなく、顔が4倍に膨れ上がる位まで殴りつけて、鼻の骨を折り、あごの骨が砕けるまで殴りつけた。

イケメンで有名だったらしいが、眼底が崩れ最早化け物にしか見えない。

そいつには、目に入れても痛くないと言う程可愛がっている妹が居た。

《妹を犯して下さい、差し出します》そう言ったら許してやる。

そう言って殴りつけていたら...20発も殴ったら簡単に言いやがった。

そのまま頭を殴り続けて殺した。

まぁ流石に妹に手は出していない...気が晴れた俺はその日の夜には女を侍らせ酒を飲んでいた。

そして、その女の顔も名前を思い出せない。

そんな奴なんだ俺は...

親の顔も知らなかった俺には悲しいという感情は無い...そう思っていた。

それがこの体のせいか《アマンダを失って悲しい》そういう感情がある。

《母さんか...》

新しい人生で、俺を虐め続け一番酷い事をした女。

恐らくこの世界で一番俺を愛した女。

《悲しい》

これが悲しいと言う事なのか...

多分俺は涙なんて流した事は無い...だが初めて泣いた。

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 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい 殺してやりたい。

憎しみと悲しみで頭が一杯だった頭が晴れた。

何でこうなったんだ。

間違っているのは...俺だ。

誰も間違っていない...理屈とロジックで考えるなら...やはり俺が悪い。

本来誰もが間違っていない。

彼奴らが鑑定や真偽の儀式をした時にはあのクズ二人は勇者と剣聖だった。

俺が殺すまで...

俺があいつ等を殺して偽物にしてしまったから起きた悲劇だ...俺が悪い...

何て誰が思うか!

バーカ...お前等は話も出来ないのか?

話してからでも遅くは無いだろうが...

国を何度も救った英雄の家柄だ。

アマンダも魔法使いとして国の為に戦った...

枢機卿には俺は悪い事をしたのかも知れない。

だが、王には、アルフ4世には貸しはあるが借りは無い。

今迄、国の為に戦い、忠誠を誓っていたヘングラム。

勇者の件もちゃんとした決闘だ。

貴族の権利だ。

ならば、この怒りの全ては王国に、王に向けるべきだ。

教会が王にどんな罪を与えるか解らない...だがその対応次第では魔王よりも先に アルフ4世を敵にする。

残酷に、無惨に殺してやる。




だが、この後、とんでもない事になるとは流石のルディウスも考え付かなった。





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