悪徳貴族になろうとしたが

石のやっさん

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【ルドル】小さな後悔

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私の名前はルドル、私は自分の主人ルディウス様に申し訳ない事をしてしまった。

あの子が両親に嫌われ、使用人に落とされた時から実は半分自分の子の様に思っていた。

貴族で無くなる事が決まったルディウス様を一人前の使用人にする事が私やメイド達の考えだ。

私は所詮他人...そう考えたら、引き取って育てる訳にはいかない。

だから、この子に一生生きていけるだけの仕事を覚えさせる、それが私なりのルディウス様への想いだった。


我ながら馬鹿な事をしたもんだ、まさか主人にクビになるのを覚悟で逆らうとはな...

だが、ルディウス様は違った。

アマンダ様を口説き落とすというとんでもない事で、無事に貴族へと返り咲いた。

そこには、恐らく貴族特有の、汚い何かがあった筈だ。

だが、それはどうでも良い事だ。

主が口に出した事を曲げない...その一つの矜持を持っていれば、黒だろう白だろうと構わない。

何よりクビにされた私を探し出し、再び雇ってくれたのだ忠義に熱い方だ、仕えるに値する主だ。

本来は生涯主に仕える事こそ、執事の仕事なのだから。

ルディウス様に何の不満も無い...何の不満も無いのだが、執事として重要な事を見落としてしまった。

それはアマンダ様に起因する。

今思えば、あれが始まりだったのだ...ルディウス様は義母のアマンダ様を口説き落とした結果、今がある。

親子でも無く、男女としてだ。

アマンダ様は気位が高く、母親としての愛情は薄く見える。

実の息子のヘンドリック様であっても恐らくは心の底からは愛していない。

恐らく、アベル様が気に入った子だから、その延長線上で愛していた、そんな物だろう。

だが、ルディウス様への愛は違う。

心底愛している、その様子が生活を見ているだけでも解る。

あれこそが溺愛と言える。

アマンダ様に愛され、あの屋敷で過ごしたルディウス様は...すっかり、ババア好きのブス好きになってしまった。

ああっ本当にお可哀想に、あそこ迄醜い奴隷女を受け入れてしまう程になるとは思わなかった。

流石に伽は断るだろう...そう思って言ったらまさか本当にするなんて思わなかった。

私が男としてフォローしてやれば良かったんだ。

11歳の美しい美少年で貴族の若者が23歳と25歳のババアを抱いて喜ぶなんて...

自分の年齢の倍そんな者を相手に出来るなら...正直どうなるか解らない。

貴族や王族の中には、行き遅れが沢山いる。

勿論、貴族は体面があるから、そういう人間を貰うと《権力目当て》《お金目当て》と後ろ指を指される場合が多い。

妙齢の女性で良いなら、ルディウス様程に家柄に器量なら幾らでも相手がいる。

それこそ、王族のマーガレット姫は夫を失い未亡人だし、侯爵家のマリアーヌ嬢が確か21歳だった筈だ。

まぁアマンダ様が邪魔をするのが必至ではあるが...

貴族としては案外これはプラスになるかも知れない。

だが、男としては...少し、いや結構悲しい物がある。


さっき、メイドのミルカとレイラに伽について聴いたが、顔を真っ赤にしながら「しっかり愛して貰いました」と答えていた。

気持ち悪い...

この二人とそういう事が出来る...うむ《ルディウス様は勇者》だ。



「ルドル...お前はこれを持って今日は夜の街で遊んで来て良いぞ、泊って来てくれて構わない」

こういう気遣いが出来る、貴族とはいえ11歳の子供がだ..懐が深いのは良く解る。

「お気遣いありがとうございます...それではお言葉に甘えて楽しませて頂きます」

金貨が3枚も入っている...これなら豪遊してもお釣りがくる。


「それでな、ルドル、奴隷商に行き遅れの20歳越えた奴隷が12名居たよな」

「確かにいましたな」

「その中から、更に安い5名のうち2名を購入したんだが、安いから残り3人からもう何人か買おうと思うのだが、どうだろうか?」


「何故、他にも買おうと思われたのですか?」

「たしか、1人眼鏡を掛けていて、結構礼儀正しいのが居た記憶があるのだが、少し気になってな」

私はカーテンの中に入って無いが...あの二人と同じだと考えると

「ルディウス様、今は止めておきましょう」


「ルドル?」

「確かに安いですし、経済的にも余裕はありますが、他にも奴隷商はあります、お休みの時に見て回ったは如何ですか?」

「そうだな」

学園が始まれば忙しくなる、忘れてくれると良いのだが。

取り敢えず、此処を私は化け物屋敷にはしたく無いのだ。

ルディウス様のこの性癖をどうするか?

多分、もう治らないかも知れないし、治してアマンダ様との間に亀裂が入る事を考えたら放っておくしか無いだろう。



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