46 / 53
第46話 旅立ち
しおりを挟むルミナスさんにお願いしたい事がある。
前々から考えていたんだ…
だけど、ルミナスさんの事を思うと、なかなか言い出せない。
『この宿を手放しませんか』
そろそろ言うしか無いか…
ハァ~
この場所に居たら、そのうちカイト達に嗅ぎつけられて見つかる可能性がある。
勿論、すぐにとはならないが…カイト達が探す気になれば一度立ち寄った場所なのだから見つかる可能性は高い。
それを強硬に断って魔王討伐に参加しなくても…恐らくあいつ等は魔王に勝てない。
今の段階で俺より僅かに強い位じゃ話にならない。
恐らく、前やその前の勇者なら今の段階で俺位、瞬殺できた筈だ。
一番、能力を高められる今の時期にサボったつけは必ず来る。
彼奴らは恐らく魔王城に辿りつく事は無い。
そうなれば、此処は王国の中でも魔国に近い場所だ。
近い未来、戦場になるかも知れない。
俺としては此処を離れたい。
だが、此処はルミナスさんの思い出の場所だ。
前の旦那や沢山の思い出のある場所…
そこを手放して欲しいとは言いにくい。
「あの、ちょっと話を聞いて欲しい」
俺はカルミーさんにまず相談する事にした。
俺は自分の考えをそのままカルミーさんに伝えた。
「成程ね、それがリヒトの悩みか…最近浮かない顔をしていたのはそれなんだね! それで傍に居たリヒトから見て勇者パーティが魔王に勝てる確率はどの位だと思う?」
正直勝てるとは思えない。
「恐らく10パーセントも無い、この10パーセントもこれから成長すればで、成長しなければ、限りなく0に近い」
「それマジか?」
世の中の人間は脳味噌お花畑が多い。
勇者は強い…負けない…そんな風に教会が触れ込んでいるからか、まるで洗脳されたみたいに、そう思っている。
実際に調べればかなり多くの勇者が負けて死んでいた。
「間違いない、もし負けたら、此処は魔族領から遠いとは言えない、絶対とは言えないが戦場になる可能性はある…だから可能なら此処から逃げたいんだ」
「それは絶対に他言できないね」
「ああっ『勇者が負ける』なんていったら非国民扱いされるからなカルミーさん、ルミナスさん以外には内緒の話だよ」
「そう言う事なら、私からも説得してあげるよ」
「ありがとう」
「どう致しまして…」
こうして俺とカルミーさんでルミナスさんを説得する事になった。
◆◆◆
「水臭いわねリヒトくん、私達夫婦でしょう? なんでカルミーを通すのよ…」
「ええと…」
「話は解ったわ…私達の事を心配してくれているのに私が反対する訳ないじゃない? 確かに想いではあるけど…もうそれだけの物よ! 近い将来戦場になったら二束三文になっちゃうから直ぐに手放すわ…そうね、3日間も有れば売れるわ」
「良いの?」
「ええっ」
宿の場所が良かったのか、少し安くしたらすぐに買い手がついたらしい。
本当に3日間掛からず宿は売れてしまった。
◆◆◆
必要な物は片端から、俺の収納袋に放り込み…旅支度は簡単に終わった。
「それじゃ行こうか」
「はい」
「うん」
俺達は南へと旅立っていく。
これで一安心だ。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
443
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる