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第56話 遭遇
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ハァハァこんな場所には一時でも居たくありません。
私は逃げ帰るように急ぎ馬車を走らせました。
「早く、早く城へ急ぐのです」
「はっ、私だって此処には居たくありません…急いでおります」
「そう…」
ですが、運命とは皮肉な物ですね…
こんな時に限って会ってしまいました。
さっき迄は会いたくて仕方なくて…今は会いたくない相手
理人殿です。
「こんなに急いでどうかされたのですか?」
「おおっ、理人殿、息災で何よりです、実は貴方の館に今しがた行ってきたのです」
流石はお父様、こんな状態でもお話をするなんて、私は足が震えて話せません。
「はい? それでどういったご用件でしょうか? 俺は城を追い出された身です…お互いに用はない筈です」
なんと不敬な。
王であるお父様相手に跪いなんて…
ですが、先程の恐怖からか誰もそれを言いません。
あの死霊は『ご主人様』そう理人殿を呼びました。
怒らせてあの死霊が出てきたらと思うと恐怖しかありません。
「それが事情が変わりましてな…出来たら…あっ」
お父様も今気が付いた筈です『城に戻って欲しい』それを言ったら呪いが発動して死ぬかも知れません。
「どうかされましたか?」
「あっそれが…そうだお前が説明しろ!」
「はっ…理人殿には城に戻って欲しいのだ」
これなら大丈夫なはずです。
呪いに掛かっているのは私とお父様だけなのですから。
「はぁ~要件はそれだけですか? 帰りたくない…俺は兎も角、女の子である月子も追い出し、危ない場所なのに武器すら渡さなかった…俺たちを助けなかった、いや殺そうとした相手のいる場所に何故帰らなくちゃならないんだ」
「ですが…解りました、もし戻ってくれるなら爵位も屋敷も思うが儘です」
「馬鹿にしているのですか? 王女も王も口を噤みなんで貴方が話すのです」
「それは…」
「わしらは直接話せない訳があるのです」
「待って下さい、私たちは貴方達に生きて行けるようにお金を渡しました、武器を渡さなかったのは部下のミスです。私はちゃんと剣を渡すように言ったのです…ですがそれは私のミスです、ごめんなさい…」
「お金か…そらよ」
「これはなんですか?」
「あんたらがくれたのは2人合わせて金貨6枚…そこには12枚の金貨が入っている…これで良いだろう、それじゃあな」
「待て、だが貴殿も国民でもある、王や王女の命令を聞く義務があるはずだ」
「そうか、ならこの国から出て行く、それで満足か?」
「待って下さい」
「ふわぁ~あ、何ですか俺眠いから早く…」
何ですかこの男…私たちの前で眠ってしまいました。
◆◆◆
あの目…見ているだけで腹が立つわね。
私が眠っていたら、何これ…魔族も死霊も居ないじゃない。
彼奴らは…理人をそう…私を見る人間の様な目で見て…許せない。
だけど…揉めて良いのかしら…
仕方ないから、この馬鹿女の皮でも着て文句でも言ってやれば消えるかしら?
◆◆◆
『我が名はイシュタル…我の僕を追い出した癖に今更なんのようですか』
「あっあわわわわっイシュタル様―――っ」
「そんな…」
やはり大変な事になっていた。
考えられる最悪の事態…他の女神でなく、まさか理人殿の中で眠っていたのがよりによってイシュタル様だなんて…
「あの、聞いた話では、眠っているのは別世界の女神様だと聞きましたが…」
《不味いわね》
『その方は今天界で眠っているわ…私は貴方達を試したのです…もし何の力も無い人間を送りこんだらどんな対応をするのかを…』
「ですが、流石に…能力のない者を厚遇する事は出来ません」
『ならば聞きます、女神である私から見たら、人間等無能の集まり、貴方の理屈なら私は貴方達を見捨てて良い…そういう事になります』
「それは…その」
『言い訳は聞きません…弱い者を見捨てる人間等、私は助ける気になりません、暫くはこの世界への干渉を止めます…ですがこの人間の体の中に宿り様子を見させて貰います…貴方達の干渉は許しません...今後理人に関わる事は許しません』
「そんな、それでは私達の判断の間違いが、こんな事になった原因ですか?」
『判断ではありません愛の無さです』
「それでは私たちはどうすれば良いのでしょうか?」
『誰かがもし理人を幸せにするなら、その時は再び私は降臨するでしょう…もし理人が不幸になるなら、その時はこの世界が終わります』
「待って下さい、それなら私が、傍に居て理人殿を」
『あなた方には、挑戦の資格はありません、理人に私が宿っている、それを知った人間が理人を不幸にするわけがありませんから』
「そんな…それじゃ」
『二度と理人と関わる事は許しません…さぁさっさと立ち去りなさい、そして二度とこの場所に来てはいけません』
「はい」
そんな、この世界から『聖』と『光』が弱まった原因は私だったの?
私は…私は、だめだ立ってすらいられない。
私は逃げ帰るように急ぎ馬車を走らせました。
「早く、早く城へ急ぐのです」
「はっ、私だって此処には居たくありません…急いでおります」
「そう…」
ですが、運命とは皮肉な物ですね…
こんな時に限って会ってしまいました。
さっき迄は会いたくて仕方なくて…今は会いたくない相手
理人殿です。
「こんなに急いでどうかされたのですか?」
「おおっ、理人殿、息災で何よりです、実は貴方の館に今しがた行ってきたのです」
流石はお父様、こんな状態でもお話をするなんて、私は足が震えて話せません。
「はい? それでどういったご用件でしょうか? 俺は城を追い出された身です…お互いに用はない筈です」
なんと不敬な。
王であるお父様相手に跪いなんて…
ですが、先程の恐怖からか誰もそれを言いません。
あの死霊は『ご主人様』そう理人殿を呼びました。
怒らせてあの死霊が出てきたらと思うと恐怖しかありません。
「それが事情が変わりましてな…出来たら…あっ」
お父様も今気が付いた筈です『城に戻って欲しい』それを言ったら呪いが発動して死ぬかも知れません。
「どうかされましたか?」
「あっそれが…そうだお前が説明しろ!」
「はっ…理人殿には城に戻って欲しいのだ」
これなら大丈夫なはずです。
呪いに掛かっているのは私とお父様だけなのですから。
「はぁ~要件はそれだけですか? 帰りたくない…俺は兎も角、女の子である月子も追い出し、危ない場所なのに武器すら渡さなかった…俺たちを助けなかった、いや殺そうとした相手のいる場所に何故帰らなくちゃならないんだ」
「ですが…解りました、もし戻ってくれるなら爵位も屋敷も思うが儘です」
「馬鹿にしているのですか? 王女も王も口を噤みなんで貴方が話すのです」
「それは…」
「わしらは直接話せない訳があるのです」
「待って下さい、私たちは貴方達に生きて行けるようにお金を渡しました、武器を渡さなかったのは部下のミスです。私はちゃんと剣を渡すように言ったのです…ですがそれは私のミスです、ごめんなさい…」
「お金か…そらよ」
「これはなんですか?」
「あんたらがくれたのは2人合わせて金貨6枚…そこには12枚の金貨が入っている…これで良いだろう、それじゃあな」
「待て、だが貴殿も国民でもある、王や王女の命令を聞く義務があるはずだ」
「そうか、ならこの国から出て行く、それで満足か?」
「待って下さい」
「ふわぁ~あ、何ですか俺眠いから早く…」
何ですかこの男…私たちの前で眠ってしまいました。
◆◆◆
あの目…見ているだけで腹が立つわね。
私が眠っていたら、何これ…魔族も死霊も居ないじゃない。
彼奴らは…理人をそう…私を見る人間の様な目で見て…許せない。
だけど…揉めて良いのかしら…
仕方ないから、この馬鹿女の皮でも着て文句でも言ってやれば消えるかしら?
◆◆◆
『我が名はイシュタル…我の僕を追い出した癖に今更なんのようですか』
「あっあわわわわっイシュタル様―――っ」
「そんな…」
やはり大変な事になっていた。
考えられる最悪の事態…他の女神でなく、まさか理人殿の中で眠っていたのがよりによってイシュタル様だなんて…
「あの、聞いた話では、眠っているのは別世界の女神様だと聞きましたが…」
《不味いわね》
『その方は今天界で眠っているわ…私は貴方達を試したのです…もし何の力も無い人間を送りこんだらどんな対応をするのかを…』
「ですが、流石に…能力のない者を厚遇する事は出来ません」
『ならば聞きます、女神である私から見たら、人間等無能の集まり、貴方の理屈なら私は貴方達を見捨てて良い…そういう事になります』
「それは…その」
『言い訳は聞きません…弱い者を見捨てる人間等、私は助ける気になりません、暫くはこの世界への干渉を止めます…ですがこの人間の体の中に宿り様子を見させて貰います…貴方達の干渉は許しません...今後理人に関わる事は許しません』
「そんな、それでは私達の判断の間違いが、こんな事になった原因ですか?」
『判断ではありません愛の無さです』
「それでは私たちはどうすれば良いのでしょうか?」
『誰かがもし理人を幸せにするなら、その時は再び私は降臨するでしょう…もし理人が不幸になるなら、その時はこの世界が終わります』
「待って下さい、それなら私が、傍に居て理人殿を」
『あなた方には、挑戦の資格はありません、理人に私が宿っている、それを知った人間が理人を不幸にするわけがありませんから』
「そんな…それじゃ」
『二度と理人と関わる事は許しません…さぁさっさと立ち去りなさい、そして二度とこの場所に来てはいけません』
「はい」
そんな、この世界から『聖』と『光』が弱まった原因は私だったの?
私は…私は、だめだ立ってすらいられない。
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