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第十九話 シャルロッテとマリーネ

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わたしシャルロッテとマリーネは国境の街、ロストにいます。

ロストは本来は国の領内であるが、唯一『国外追放された者が居ても良い街』ですの。

その理由としては『国外追放された者でも国に用事が出来るだろう』と考えた昔の王が作った街で、国に入れない者でもここ迄の入国は許されます。

最も犯罪者以外という条件付きで...まぁ、『国に知り合いが居たりする人間は此処にきて手紙を書いて来て貰ったり、この国にしかない物は此処で買え』と言うことらしいです。

確かに商人なんかを罰した為に、実入りが少なくなる権力者もいるから、そういう事の為に作ったのだろうと思います。

国外追放の刑は執行されたので罪は償ったという事なのでしょう、此処にいる事は許されています。

まぁ此処から他の場所に行くなら他国に行くしかないですが『その路銀もありません』


何故、私とマリーネが此処に居るのか?

それは捨てられたからよ...ええっすっぱりと見捨てられたからですね。

今の私やマリーネはかっての令嬢の様な姿はしていません。

ボロボロのワンピースに木の靴...あはははっ最早完全に平民にしか見えません。


私達以外の他の家の者は皆去って行きましたわ。

勿論、その家族も一緒にね、元々商人上りや身分が低いのもあって逞しいわね。

この街に既に居ないのよ。

まぁ『妻がもと貴族』貴族ではなく、相手が商人であれば充分まだ価値があるし、王国からの追放だから帝国辺りだったら貴族との婚姻も可能性があるわね。


商人になって出直す者、元から付き合いのある他国の貴族に頼るもの様々です。

皆が新しい道を生きていく...

恐らく『私の友人たちは婚約者が変わっただけで』きっと、逞しく生きていくでしょう...私とマリーネ以外はね。


ジャルジュ家がとり潰されて国外追放になった時に『私はお父さまに勘当されました』

流石、お父さまですわ、全ての罪を私に擦り付けて自分は『馬鹿をやった娘の責任を逃げずに償った悲劇の人』そんな噂を流し、保身してから旅立っていきました。

ジョルジュ家は伯爵ですが、大昔は武器商人でした。

今でも、商売はしていましたので多分、他国に行って商売でもして生きていくでしょう。

ただ、その為には『王家由来の品』を販売した娘は邪魔者ですからね...捨てられたわけです。


そしてマリーネはというと、グラデウス男爵は王都警備隊の隊長ですから、商売なんて出来る訳は無く...

同じく醜聞の元のマリーネを捨てて仕官を求め帝国に旅立って行きましたわ。


と言う訳で、今は私、シャルロッテとマリーネだけで此処で暮らしています。

まぁ、私とマリーネを捨てたクズみたいな親達ですが...貴族としての誇りがあったのでしょう、奴隷として売られる事は無く少額のお金を残していきました。

身に着けていた物はとられなかったのでさっさと換金してこのボロ服と木の靴を買ったのです。


「シャルロッテ様...これからどうしましょうか?」

「私達の手元にあるのは全部で金貨3枚です...調べた感じでは、屋台の物品販売位の商いは出来そうです」

「それでは、直ぐにでも」

「ええっですが、失敗してしまった終わりです、悪名高い私達は誰も雇ってくれない、そのまま体でも売らなくちゃいけなくなります...だからこそ絶対に失敗をしない商売を選ばなければなりません」

「そうですね」

「だから今日は客足の流れをみましょう」

《シャルロッテ様は...本当に凄い、此処まで落ちぶれても上を目指しています、一切泣き言も言わずにすぐに次の手を探し出そうとしています、この思想こそが私が尊敬した理由です》


「マリーネ、ほらしっかりと見ていなさい」

「はい」

《本当に逞しいです...殿方で無いのが凄く残念でね》


◆◆◆


1日じゅう見た末にシャルロッテ様が考えた商売は『ジャム作り』でした。

貴族の食卓に並ぶジャムが、此処には売っていませんでした。


『ジャムみたいな高級品食べない』そんな話を聞きました。

ジャムなんて砂糖と果物があれば作れます。

しかも、果物は夕方近くなると『凄く安く販売されるのです』


「マリーネ、どう思う?」

「私は、正直商売は解りません」

「そう、なら今回は私が決める、だけど次からは自分でもしっかり考えなさいね」

「解りました」


こうして私達は此処ロストで『ジャム屋』を始める事になりました。




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