上 下
52 / 91

第五十二話 ロゼ

しおりを挟む
「数々のロゼへの陰湿な嫌がらせ。何か言う事はあるかな、マリア」


「ロゼへの嫌がらせ...身に覚えは本当にありません!」

「身に覚えが無いだと! あれ程、陰湿な事をしながら君という女は良心が全く無いのか!」

「フリード...本当に何の事か解りません、言わせて頂ければ、私はロゼに嫌われているので、妹のロゼとは交流が殆どありません、しかも、花嫁教育が本当に忙しいから社交界にも余り来ません、そんな私が何でそんな事が出来るのでしょうか?」


「ロゼ、もう庇わなくて良いんだ、無視や取り巻きを使っての嫌がらせの数々、そんな陰湿な事を繰り返すような女なんてな」

「今日この時より、フリード・ドリアークはマリア・ドレークとの婚約を破棄する!...そして、俺は、代わりにロゼ・ドレークとの婚約を宣言する」


此処までは良かったのよ...

だけど、冷静に考えたら凄く不味いと思う。

だって『たかが意地悪をした位で私とお姉ちゃんの立場が変わる』なんて起こる訳ない。

他に何か切り札がある、普通はそう思うじゃない...だけど、何も無かった。

何かお姉ちゃんの重大な過失を知っている。

そう思っていたのに...何もなかった。


【↓ 時系列で言うと49話後51話と並列位です】


そしてその結果 結果、私は自分の部屋に軟禁されています。

此処に来る時はお父さまたちに『まるで犯罪者を見る様な目』で見られて横に衛兵迄いました。

しかも、フリード様や私の言い分は全く聞いてくれません。

そしてお母さまはお怒りになり、初めて頬をぶたれました。


その後もフリード様は一生懸命弁解していましたが、その結果お母さまは更にお怒りになりました。



これからどうなるのでしょうか?



宰相様まで来られたからには、多分とんでもない事になりそうな気がします。

凄く長い時間が過ぎた気もしますが。多分実際にはそんなにはたっていないと思います。

お母さまが来てくれた。

「あのお母さま...私、何かしてしまったのですか?」

「ええっ、もう取り返しはつかないわ...いま皆で貴方とフリードの処遇を考えている所よ!」

「どうして...そんな」

「貴族の婚約は事前に形上だけど、王に許可を得るのよ、その王が許可を出し王印を押した物を勝手に反故にした、しかも王子の前で、これは私にはもうどうにもならないのよ...」


「そんな、私はこんな事になるなんて知らなかった...」

「そう...馬鹿な子、だけど、もうどうしようも無いのよ」

そう言うとお母さまは私を抱きしめ泣き始めました。


これは、どうする事も最早出来ない気がします。


私は前に『大切なお友達』を無くした時も何も出来ませんでした。


そして今度もきっとそうです。

なんで私の大切な人は...どうしてこう、後先考えないのでしょうか...


その後、フリード様が顔を出しにきましたが...


「フリード様、ご無事で何よりでした、ロゼはロゼは...」

「ロゼ、大丈夫か? 何か酷い事はされていないか」

「何時もの事です、もう慣れました」


途中からフリード様を遮りドリアーク伯爵様が話し始めました。


「ロゼ、お前と息子の婚約は成立した」

「本当ですか? 嬉しい、ありがとう御座います!」

「礼などは要らぬ、後で両家で話し合いの結果を伝える、しばし待つが良い」

「はい」



フリード様と私が婚約したなら『義理のお父さま』になる筈です...ですが憎しみが籠った目で見られた気がします。

フリード様も何だか凄くお窶れになっています。


フリード様達と一緒にお母さまは出て行ってしまいました。


「ロゼ、出来るだけの事はするつもりです、ですが...あまり期待はしないで下さい」

そう言いながら、お母さまは泣いていました。


さっきから此処にいるメイドたちの目も凄く怖いのです。

「あの...1人になりたいのですが」

「駄目でございます」

「命令します、出て行きなさい」

「それは無理でございます、今のロゼ様の命令はきかないように旦那様から言われております」

「そんな」

「....」

明かに可笑しい、今迄も嫌な目で見られた事はあったけど...今日のはそれとも違う。

本当に心から嫌う様な目...私にはメイドたちの目がまるでガラス玉の様に見えます。


もう、私には...本当に何も無い...

部屋の中には豪華なドレスや宝石はあります...普通に考えたら信じられない位沢山あります。

ですが...見せる相手が居なくなっては、何の意味もありません。

もしかして必要以上に欲しがったのが悪かったのでしょうか?

お姉ちゃんの物を根こそぎ奪ったのが悪かったのかな...

だから『お姉ちゃんには嫌われても仕方ない』のかも知れません。

立場が逆で『私がお姉ちゃんに同じ様に奪われたら』

あははははっ許せるわけないですね。

だから、今ならお姉ちゃんに嫌われるのは解ります。

だけど...なんで、なんで他の人迄、私を嫌うのでしょうか?


ロゼ派の人には親切にした覚えしか無いし...使用人にだって冷たくした覚えはありません。

社交界でも『きちんとしていた筈』です。


確かに『多少の自慢はしましたが』こんなのは貴族の子女では当たり前の事です。

だからお姉ちゃん以外に私は酷い事をした覚えはありません。

お姉ちゃん?

お姉ちゃんは別に良いのです。

だってお姉ちゃんですから『お姉ちゃんは私のお姉ちゃんです』『お姉ちゃんだから良いのです』

だって『私のお姉ちゃんですよ』「お姉ちゃんは私の者だから』『私の家族なんだから』少し位迷惑掛けても良いじゃ無いですか?

だってお姉ちゃんは家族だし...身内だし...小さい頃から一緒だし、許してくれる筈です。

多分子供の頃の様に『仕方ないなぁ』って笑顔で許してくれるよねお姉ちゃん。



私はお姉ちゃん以外に迷惑を掛けた覚えはないのに..なんでこんな事になるんでしょう。


そんな事より今は『フリード様』です。

これから先の事は不安で一杯ですが『フリード様との婚約』は正式に決まりました。

なら、大丈夫な筈です...

きっと物凄く怒られるかも知れませんが...王様絡みだから仕方ありません。

ですが...フリード様との婚約が決まったなら、多分幸せになれる気がします。


【きっと大丈夫です】


まさか、そのフリードから憎しみの目を向けられるとはこの時のロゼは思ってもいなかった。



※ 少し感想欄から頂いたロゼの性格に寄せてみました。
  時系列を加えてみました。


















しおりを挟む
感想 483

あなたにおすすめの小説

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈 
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

処理中です...