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第四十九話 姉と言う名の呪い

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ロゼとフリードが大変な事をした。

あれ程、確認したのに...

さっき迄お義母さまが私に付き添ってくれて慰めてくれていた。

多分、こういう時、普通の子なら泣くんだと思う。

だが、私は涙が出ない。

これは前世の記憶が色濃くあるから。

一度、どの位迄の記憶があるのか自分なりに考えてみたらおおよそ40歳位までの記憶があった。

その後の記憶は無いからきっとその位で亡くなった可能性が高い。

「お義母さま、私は大丈夫です...ただ婚約者が裏切っただけですから」

「裏切っただけってマリア...」

「ですがロゼはこれから罰を受けると思います、これは私が『別に良い』そう言っても無理でしょう、恐らく心配で泣いているかも知れませんからお義母さまはロゼについてあげてください」

「マリア、貴方って子は本当に」

お義母さまは私を抱きしめると『ありがとう』と言い去っていった。

どんなに可笑しな子でも、ロゼは腹を痛めた実の子だ、お義母さまからしたら心配で仕方ない筈だ。

その証拠に私を慰めている時も手が震えていた。


ロゼについてはもうお義母さまも私もどうすることも出来ない。

家同士の話し合いで、まして宰相様まで一緒に話すのだ、女子供のもう出る幕じゃない。

ただ、先ほど聞いたジョルジュからの話で、事の顛末をお父さまが教えに来てくれる事と『私個人への償い』の話を予定している。

との事だ、話は長くなり今夜深夜まで及ぶから、私は眠っていても良いらしい。

おおよそ私の方の話し合いは午後になるとのこと。


正直言わせて貰えば『婚約破棄』なんてどうでも良い。

元から政略結婚だし、お見合いみたいに紹介されまだ数回お茶をしただけの男性だ。

勿論、この世界の常識で言うなら『婚約破棄、不倫』そういう扱いになる。

そして私の考えは可笑しいのは解る。

だけど、前世の記憶から考えると『婚約破棄』は兎も角『寝てもいない男』の事で不倫は無いと思う。

幾らイケメンエリートで上場企業に勤めるような超優良物件でも冷たいと思うかも知れないけど、そこまでの執着はないわ。

だって2時間、数回お話しした相手なのよ。

もし前世の世界だったら、婚約したから慰謝料は発生するけど、雀の涙貰えたら良い方だ。

本当にロゼが好きだと言うのなら...ちゃんと筋を通すなら『私は身を引いても良かった』


私が許せないのは...約束を破った事だ。

本当にフリードが好きなら『あの場できちんという』べきだった。

そしたら、そのままお父さまと話し合いになり...どう転ぶか解らないが、こんな大変な事にならなかった。

「ロゼみたいな馬鹿な妹...本当にどうでもいいわ」


...『本当にどうでもいい』.....どうでも良い?


『果たして本当にどうでも良い人間の事をこんなに考える物なのかしら』

ロゼなんて大嫌いだわ。

人の物なんでも欲しがって、奪っていく、最低な人間...『どうでも良い人間だわ』

私が一番嫌いなタイプの人間...『本当にどうでも良い、最低な人間』


可笑しい...ならどうして、私は腹がたったのだろう?

1/3の宝石やドレスを渡すのは確かに『ずるい』という言葉からわけたと取れる。

だけど...それ以上を渡す義理は無い。

それこそ『恥知らず』と罵り、ビンタでもしても普通の対応だ。

多分、それを咎める者は誰もいない。

だが、怒りながらも私は『渡した』...なんで怒ったの?


宝石を奪われたから...違う...私にとって宝石は価値なんて無い。


それじゃなんで...


『妹が私の気持ちを考えずに、取り上げようとする...その妹の気持ち』に腹がたったんだ。

今もそうだ『フリードを奪われた』そんな事じゃなく『約束を破った』ことに腹がたっている。


なにこれ。


あははははっそういう事なのね...

『宝石もドレスもどうでも良い』 だって私には価値が無いから...

『フリードもどうでも良い』だって数回会っただけの他人だから...


だけど...『ロゼはどうでも良くない』

馬鹿で、アホで腹が立つ...どうしようも無いクズ女。

『妹』でないなら多分、最も嫌いなタイプの女。


だけど...『妹』だから『どうでも良くない』


あははははっ気が付いてしまったわ。

『あんな妹が、私の中では『どうでも良くない』んだ』


少なくとも『どんな宝石やドレス』以上には大切なんだ。


前世の私には姉妹は居なかった。


前世の友人の顔がうっすらと思い浮かぶ。



【お姉ちゃんだから仕方ないんだよ】



そういった彼女の顔は確かに悲しそうだったけど...それだけじゃ無かった。

そこには『大切ななにかを慈しむ表情』もあった気がする。

良く思い出せば『口が笑っていた気がした』



今の私には、少しだけ解る気がする。


こんなの呪いじゃないか?


『妹だというだけで心底嫌いになれない』


『私にはどうでも良い事、だけど普通に考えればロゼのやっている事は悪魔だわ』



それが...許せてしまう。


私は『姉』というとんでもない呪いに掛かってしまっていたようだわ。

こんなのはそれ以外、何でもないわ。











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