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第四十三話 【ここから現在です】 宝石箱事件顛末 前篇

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『当家の家宝であり、今現在はロゼが管理している【幸運の女神の笑顔】に似た宝石箱が王都で販売されている』

今俺はその報告を聞いた、旧知の仲のビルマン男爵が見つけて購入して私に見せてくれた。

これはあくまで『似ている宝石箱』に過ぎない。

要所要所が違うから、同じとは言えない。

だが、どう考えても此処まで似せる事は『現物を見ないと出来ない』

「ビルマン男爵、その宝石箱を私に買い取らせて貰えないか?」

「いえ、これはドレーク伯爵様に現状を知らせる為に購入した物、そのままプレゼントさせて頂きます」

「すまないな」

「いえ、ですが数こそ少ないですが複数個流通しているそうです」

「教えてくれて助かった、この恩は必ず返させて貰うぞ」

「お気になさらずに」

ビルマン男爵を見送り、俺は執務室に戻った。




これは問題だ...今の管理者はロゼだ。

ロゼに聞く前に、使用人から証言を取らなくてはならない。

まずは執事長であるジョルジュに聞くしかない。

「【幸運の女神の笑顔】の宝石箱に酷似した物が出回っている、これがそうだが、何か知らないか?」


《心当たりはある、そのまま伝えるべきだ》


「恐らくはロゼ様とロゼ派の方が原因の可能性が御座います」


「どういう事だ...」

そこまで馬鹿だとは思わなかった。

国宝級の家宝を家から度々持ち出し、見せびらかした。

それなら、幾らでもデザインや工法を模写出来るでは無いか?

今回の件は『模写』を認めてくれるならまだ良い...認めない場合が最悪なのだ。

「それは本当なのか?」

「多数のメイドや執事から報告を受けております」


これで確定だ。

「ロゼを呼んできてくれるか?」

「畏まりました」




「お父さま、何の御用でしょうか?」


「お前、家宝の【幸運の女神の笑顔】を持ち出したって本当か?」

「ええっ、私の派閥の者が見たいと言うのでお見せしました」

「それで」

「素晴らしい物だから、絵に描きたいと言うので描かせましたが、それが何か問題でもありますか?」


やはり教育を間違えた。

『この位誰でも解る』それが解らないのだ。

これはロゼが悪いのではない...親である俺が悪いのだ。

執務が忙しいからと言って放って置いた俺の罪だ。


「そうか...お前はこれから先、真面になるまで社交界以外の外出は許さん」

「そんな、お父さまあんまりです」


「良いかロゼ、家宝は俺ですら滅多に家から持ち出さない...お前は勝手に持ち出して、面倒事を起こした」

「私が何をしたと言うのですか?」

「今...巷に【幸運の女神の笑顔】の模倣品が出回っている」

「そんな...ですが、その品の管理をしはじめたのは最近です、お姉さまのせいでは無いですか?」

馬鹿な、自分の罪をマリアに押し付ける気か。


「まだ、そんな事を言うのか? マリアはあの宝石箱を俺の許可なく家から持ち出した事はない、お前は、他の宝石も含み勝手に持ち出してお茶会で見せびらかしていたそうだな」

「ですが、全員、私の派閥の」

「もう解散したそうじゃないか? まぁ、まだ確定はしていない...ただ、家宝を持ち出して勝手に人に見せた、それだけでも非常識だ、その分の罰は受けて貰う」



結局、商会から調べあげていくとロゼのせいだった。

ロゼが絵を描くのを許可した結果、シャルロッテ嬢達がその絵を元に『新作』として宝石箱を制作して、知り合いの商会に作らせて販売した。

そう言う事だった。


これはかなりの大事だったので、元ロゼ派の家に事の経緯を報告した。

そうしたら、悪びれずジャルジュ家から手紙が帰ってきた。


手紙の大まかな内容は...



この度の商品は確かに【幸運の女神の笑顔】を参考にしているがあくまで参考であって『模倣』や『模写』では無い。

そう書かれていた。


しかも、ご丁寧に、手紙の他の添え状に『間違いない』と元ロゼ派の令嬢6名の家紋と令嬢の名前がサインしてあった。


そして、この宝石箱のデザインはシャルロッテ嬢とマリーネ嬢が参考に考えただけで決して『模倣』や『模写』では無い。

と強く書かれていた。

『特に図柄や宝石の位置はオリジナルで考えた』そう書いてあった。


シレ―ネ嬢 ケイト嬢 マレル嬢からは、個別に手紙が届き、ただ見ていただけで荷担はしてない、ただ止めなかった事を『深くお詫びしたい』そう謝罪文が届いた。


俺は《『模倣』や『模写』では無いなら仕方が無い》その旨を伝える手紙を送り...「本当にシャルロッテ嬢とマリーネ嬢が考えた物」か確認をした。


すると、文章は柔らかいが『言いがかりをつけるのか』それに近い内容の手紙が帰ってきた。


本当に仕方ない...今回の話は我が娘、ロゼが悪い。

その状況で、他の人間が地獄に落ちていくのは見たくはなかったが家を守る為だと割り切る事にした。


そして、ジョルジュ家の手紙と一緒に類似品のオルゴールを自ら王城に持参した。




【数日後、王城にて】


早馬を使い手紙を出し、急いで王都に出掛けた。

休む間もなく、王城に向うと手紙を読んだ王が直ぐに会ってくれた。


「此処に書いてある事が本当である事は、余の方でも確認済みだ」

「そうでございますか? ならば後の事は王にお任せします」

「馬鹿な奴らだ素直に『模倣』である、と認めれば、ただ叱りつけるだけで済ませられた、なのにこれを『自身のアイデアで作った』と言うなら重罪だ、余は大切な重臣を罰さねばならぬ」

「申し訳ございません」

「確かにロゼ嬢には非は無い...だが貴族の令嬢としては失格だ、親としてしっかり躾をする様に」

「本当に申し訳ございません、責任を持って躾けます」

「ならば良い...ドレーク伯もう下がって良いぞ」

「はっ」



貴族としての恥『王からお叱りを受ける』はめになった。

だが、ジョルジュ伯たちにこれから起きる事を考えたら...


確かに悪いのはシャルロッテ嬢やマリーネ嬢だ。

だがそれは『ロゼがしっかりしていれば防げた』


これから起こる事を考えたら...心が痛いのだ。














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