上 下
40 / 91

第四十話 過去 ロゼ、愛され嫌われる。

しおりを挟む
フリード様から告白された。

自分でも何が起きたのか解らない。

フリード様はお姉ちゃんと結婚して当主になる方だ。

今現在、私には家の中に『味方は居ない』。

お父さまからはお小言をくらい、お母さまからは『マリアを見習いなさい』そんな事ばかり言われる。

私の本当のお母さまなのに、これじゃまるでお姉ちゃんがお母さまの子で、私が実の子じゃないみたいに虐められる。

本当に可笑しい。

まさかお姉ちゃんは魔法でも使っているのか...そう思う程に扱いが酷い。

使用人も元から居た、お姉ちゃんと私では扱いが違う。

最初は同じに扱ってくれていたように見えたけど、最近ではメッキが剥がれた様に私を雑に扱いだした。

もう、私には...味方がいない。

折角派閥の長になったのに、だれも応援してくれないから、上手くいかない。



だから、私はフリード様に媚びるしか無い。

これから、婿に入るけど、男だからお父さまに次いでこの家のナンバー2だ。

だから『問題が起きない程度』にお姉ちゃんの悪口を言って、同情するように仕向けた。

大袈裟に言ったけど...全部嘘じゃない。


※ そうロゼは思っています。

こんな事で結婚は崩れる筈はない。

なのに...なにこれ?

「ロゼ...俺と結婚を前提に付き合ってくれないか?」

これは夢じゃないかな?

こんな奇跡...起きる訳が無い。



だけど...起きた...本当に夢の様な事が起きた。

「あの、私で良いんですか?」

そう答えるのが精一杯だった。

「俺はロゼが良いんだ」


凄く嬉しい....それと一緒に私は『お姉ちゃんに勝った』そう確信した。

この国では女は余程の事が無いと『当主になれない』

それはお姉ちゃんの母親にお父さんが婿に入ったのに当主がお父さんになった事でも解る。

女伯爵とその旦那ということには成らない。

だから、お母さんは是が非でも『男の子』が欲しかった。

だが、産まれて来たのは『私だった』


今の状況はどうだろう?

『お姉ちゃんは女』『後継ぎは男が必要』『事業の為に両家は揉める事は出来ない』 そして『婿はフリード様』

この状況からフリード様がお姉ちゃんでなく私を選んだのなら...自動的に『家に残るのは私』『そして嫁に出されるのはお姉ちゃんだ』


これは『私がした事』じゃない。

フリード様が勝手にした事だから...あんな約束は無効だよね。

私は告白をされてそれに答えただけ...これで文句なんて言われたら『言いがかり』だよね。


これで、あの宝石箱も中身事、私の物だよね?

だって、『この家から嫁いでいくのがお姉ちゃん』なら『家の物』でもあるあれは、残る私の物だ。

これで、私が欲しい物は全部手に入る。

良かった...本当に良かった。

「ありがとう、フリード様...本当にありがとう!」


私はとびっきりの笑顔でフリード様に答えた。




【館にて】

お姉ちゃんは滅多に宝石をつけない。

だったら、私が貰っても良い筈だ...

「お姉ちゃん、残りの宝石も頂戴!」

私はお姉ちゃんの部屋に突入した。


「どうしたのロゼ? 私、今は貴方の顔、見たくないんだけど?」

そうやって、澄まして居られるのも今のうちだわ...だって将来はお姉ちゃんは此処から出て行くんだもん。

「お姉ちゃん、ズルいわ、本当に価値がある物は自分の手元に残してクズばかり寄こしたのね」

「ロゼ、何を言っているの」

「だって貰った宝石は安物ばかりじゃない」




【マリアSIDE】

この子は馬鹿なんじゃないかな?

安物って言っても、あの中の安い宝石一つで市民の一か月の給料に相当するわよ...

国宝級の物3個も私が持っていたのは『お母さまの形見』だから、早くにお母さまが亡くなった私に特別に預けてくれただけ...

普通は貴族の娘だって持っていないわ...

「あのね...ロゼ、私そんな良い物持ってないわ」

「嘘ばっかり、お姉ちゃんが持ってない訳ないじゃない?」

馬鹿じゃないかな...本当に貴重な物はお父さまがしっかり宝物庫に鍵かけて持っているわ。

私が持っている訳無いじゃない。

「そう、そこ迄言うなら、この部屋から欲しい物全部持っていけば良いわ...その代りもう貴方とは口も聞きたくない」

「お姉ちゃん」

《私は取り返しのつかない事をしてしまったんじゃないかな》

「アリシアさん、ジョルジュを連れてきて...ほら、ロゼこのドレスも欲しいんでしょう? あげるわ...ほらっ」

私はクローゼットのドレスを片っ端から投げ捨てた。

「ちょっと、お姉ちゃん、止めてよ!」

「欲しいんでしょう? ほらあげるわよ! 4着残して全部あげる、ほらこれで満足でしょう?」

※4着は貴族として最低限必要な物...貴族でも何時もは普段着を着ている設定です。


「お姉ちゃん...」

「ハァハァ~ ジョルジュ来たわね、ロゼがね...まだ欲しいって言うのよ! 悪いけどまた書面にして!」

「マリア様、そんな事したら、もうこの部屋には何も無くなってしまうじゃないですか..ロゼ」

「良いわ、その先は言わないで」

「マリア様...解りました」


「わわたし...そんな、お姉ちゃん」

「お姉ちゃん、言わない! ほうらこの宝石箱の中身も欲しいのよね...拾えば良いわ...あっネックレスと指輪2個は残すわね、これはこの中で一番安い物三点だからね...お義母さまから貰った宝物の宝石箱もあげるわ...欲しいんでしょう?」

私は、宝石箱をひっくり返して全部床にぶちまけ、その中からネックレスと指輪2個を拾い上げた。

そして、前にロゼから貰った木箱の宝石箱に入れた。

「あああっ、あのお姉ちゃん」

「お姉ちゃん言わない! お姉ちゃん言わない! お姉ちゃん言わない!」


「ああっ、お姉さま」


「もう二度と『ズルい』なんて言わせないわ...それを拾って出ていきなさい、大変だけどジョルジュは書類を書いて頂戴」

「マリア様...」

「いいから!」

「....解りました」


【ロゼSIDE】


「あの、誰か拾って下さいませんか?」


「クソガキ、自分で拾えよ!」

「ジョルジュ?」

「すみません、つい口が滑りました、ですが今の貴方には私はお仕えしたくありません...それは貴方自身でお拾い下さい、今の暴言が気に入らないなら、旦那様にいいつけなさい、産まれて初めて仕えている方に暴言を吐きました...罰は承知の上です、では失礼します」


「あの、誰か、手伝って...」

廊下でアリシアをはじめ数名のメイドが見ていたので助けを求めた。


「あの、何か聞こえました?」

「誰かが手伝ってって言ってますね」

「それじゃ、手伝わなくちゃ」


「ありがとう...えっ」

メイドたちは一旦は拾ってくれたけど、廊下に出るとその場所にドレスや宝石を置いた。


「此処からは自分で運んだら如何ですか?」

「あの...」

「マリア様、このクズが部屋に居る方が困ると思いましたから外に出しました」

「ありがとう」

「お姉ちゃん」

「お姉ちゃん言わない!」

バタンと音を立ててドアが閉まった。


「誰か運んでよ!」


「あの、ロゼさま~...私達、貴方が大嫌いです! まぁプロですから、暫くしたらきちんと給仕します! でも流石に今の貴方は顔も見たくない、気にくわないならクビでも構いませんよ...それじゃ」

「私は前の奥様からマリア様を頼むと言われました、貴方は好きにはなれません」

「私も貴方は大嫌いです」



「そう解ったわ」

私は3回に分けてドレスや宝石を運んだ。

これで『全部私の物だ』見た感じ高級そうな宝石は無いが、見た目じゃ解らない、お姉ちゃんが最後に残した位だから、きっと素晴らしい物に違いないよね。

ドレスも全部質素だけど...多分歴史のある高額なドレスだと思うわ。



ムカつく執事にメイドもフリード様と私が結婚したら...追い出してやるわ。

待ってなさい。




【マリアSIDE】


あの後、ジョルジュにあまり大事にしない様にお父さまに伝えるようにいった。

流石にこの部屋にはもう、殆ど何も無いから突撃してこないだろうし...

しかし、よくぞ、ここ迄持っていったなぁ~

まぁぶつける様にドレスを投げて、宝石をぶちまけたのは私だけどさぁ~

あの宝石のどれもがロゼの手持ちより価値なんて無いのに、聞く耳持たないし。

何がしたかったのかな?

もしかしたら私が凄く嫌いで全部取り上げたかったのかな?

私は気にしないけど、これが他の貴族だったら『決闘騒ぎ』か『裏で殺されかねない』わよ。

まぁ私は断捨離してミニマムになった...それしか思わないけど...

だけど、此処までするなら『どうでも良い』『妹とは思わない』それだけよ。


だけど...姉妹ってズルいな。

さっき迄『大嫌い』だったロゼの事を心配してしまうんだから。



※多分、あと1話~2話あとようやく現代に戻ります。
過去篇にお付き合い頂き有難うございました。














しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜

津ヶ谷
恋愛
 ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。 次期公爵との婚約も決まっていた。  しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。 次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。  そう、妹に婚約者を奪われたのである。  そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。 そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。  次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。  これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

半月後に死ぬと告げられたので、今まで苦しんだ分残りの人生は幸せになります!

八代奏多
恋愛
 侯爵令嬢のレティシアは恵まれていなかった。  両親には忌み子と言われ冷遇され、婚約者は浮気相手に夢中。  そしてトドメに、夢の中で「半月後に死ぬ」と余命宣告に等しい天啓を受けてしまう。  そんな状況でも、せめて最後くらいは幸せでいようと、レティシアは努力を辞めなかった。  すると不思議なことに、状況も運命も変わっていく。  そしてある時、冷徹と有名だけど優しい王子様に甘い言葉を囁かれるようになっていた。  それを知った両親が慌てて今までの扱いを謝るも、レティシアは許す気がなくて……。  恵まれない令嬢が運命を変え、幸せになるお話。 ※「小説家になろう」「カクヨム」でも公開しております。

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

義妹がすぐに被害者面をしてくるので、本当に被害者にしてあげましょう!

新野乃花(大舟)
恋愛
「フランツお兄様ぁ〜、またソフィアお姉様が私の事を…」「大丈夫だよエリーゼ、僕がちゃんと注意しておくからね」…これまでにこのような会話が、幾千回も繰り返されれきた。その度にソフィアは夫であるフランツから「エリーゼは繊細なんだから、言葉や態度には気をつけてくれと、何度も言っているだろう!!」と責められていた…。そしてついにソフィアが鬱気味になっていたある日の事、ソフィアの脳裏にあるアイディアが浮かんだのだった…! ※過去に投稿していた「孤独で虐げられる気弱令嬢は次期皇帝と出会い、溺愛を受け妃となる」のIFストーリーになります! ※カクヨムにも投稿しています!

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

処理中です...