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第三十七話 過去 使用人の気持ち

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ロゼ様、いやロゼはもう駄目だ。

あれはドレーク家を食い荒らす、害虫だ。

後妻のロザリーがこの家に嫁いできた時に我々は凄く警戒していた。

マリア様と上手くいくだろうか?

常に心配しながら見ていた。

この女も最低の女だった。

幼いマリア様に暴力こそ振るわない物の...心を傷つけていた。

だが、使用人として私達に出来る事は少ない。

仕方なく、暫く様子を見ていた。

何かあったら庇えるように必ずメイドか執事がマリア様の傍から離れない様にして...

どこで何をされるか解らないから旦那様に頼んで、何処に行くにもベテランの執事かメイドが同伴していた。

いつの頃かロザリー様はマリア様と打ち解け本当の親子の様に過ごすようになりようやく我々は胸をなでおろした物だ。

だが、問題は...ロゼ様...いや、あの人間に『様』なんてつける必要は無い。

あれは、まるで悪魔の生まれ変わりだ。

マリア様から全てを奪い取っていく。

特に、先代の奥様の形見の宝石箱を奪った時は...使用人全員が殺意を覚えた。

ローラは包丁を暫く眺めていた。

もしかしたら、頭の中で『ロゼを殺したい』そう思ったのかも知れない。

此処にいる使用人の多くはマリア様のお母様である先の奥様とそれなりの期間を過ごし、恩がある者も多い。

しかも奥様は『マリアを頼みましたよ』それが我々に対する最後の言葉だった。

そんな大切なマリア様から『大切な物を奪っていくロゼ』そんな者にだれが敬意を払えと言うのだ。

私だって実は短剣を握りしめた事も少なからずあった。


だが、我々はドレーク家の使用人、そこはプロ顔に出さない様にちゃんと給仕は行っている。

ただ、ロゼが見ていない所で舌打ちをしたり、陰口を叩くのは仕方ないだろう。

『心の底から嫌いなのだから』

幾らベテランの使用人であっても気持ち迄変える事は出来ない。

卑しく、マリア様の物を奪い続ける薄汚い娘。

そんな人間に誰が忠誠を誓えるというのだ。

『話したくもない』そんな人間相手に普通に接する、これ以上の事は...到底できない。

私は旦那様に『マリア様が色々と無くした』事を伝えた。

「ならば、生活に困らない様にしなくては」そう言われて我々はよく王都迄買いに行った。

だが、幾ら良い物を用意しても『新しく高級な物』は用意出来ても歴史的な価値がある物まで用意は出来ない。


幾ら言ってもあの娘は変わらない。

だから、せめて歯止めになればと、ロザリー様に頼んだ。

ロザリー様はその様子を見て、その都度小言を言ってはくれるが...自分が過去にした事もあり上手くいかない様だ。


マリア様は物が少ないし、ドレスも少ないからお茶会にはいくが、パーティーは欠席する事も多く、実に痛々しい。

私やメイドが気になり話しても『私は派手な所に行くより本を読んだり、お茶会で話すのが好きなのよ』と健気に振舞っている。


周りは全てマリア様を理解して味方してくれている。

これだけが救いだ。

そう長くないうちに、ロゼは結婚してこの家を出て行くだろう。

使用人に出来る事は少ない。

だが、その日まで我々は、仲間と共にマリア様がなるべき傷つかないように配慮する。

こんな事しか使用人には出来ない。


【フリード視点】

※第9話の視点です。


俺はそれから注意深くロゼを見張る事にした。

確かに令嬢達の言う通り、ロゼは古い物を何時も身に着けていた。

それに対して、マリアは何時も新しい、王都で売られている最新の物を身につけている。

明かに二人には差があった。

見ていて痛々しい。

更に二人を見ていると挨拶すらしない、そこまで確執があるのか?

本当にそう思えた。

確かに、マリアは長女でロゼは次女だ。

貴族に産まれたからには差があるのは当たり前だ。

だが、此処まであからさまなのは、見たことが無い。


何故、此処まで酷い事をするのだろうか?

しかも残酷な事に産みの親までもが、ロゼではなくマリアの味方になっていた。

良く様子を見ていると「貴方って子は」とか「マリアに謝りなさい」という声が聞こえてきた。


可哀想だ。


ロゼにとって、味方は恐らく殆ど居ないのだろう。

多分、友人だけが彼女の唯一の味方だ。



俺は...そんな彼女を見ない振りして結婚をして良い物だろうか?


そんな妹を虐める様な女性を生涯の伴侶に選んで良いのだろうか?


目を瞑る訳にいかないな。


俺は皆に【貴公子】と呼ばれている。


その俺が、ロゼを見捨てて、この状況を見ない振りしてマリアと結婚など出来ない。

俺は...どうしたらよいのだろうか?










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