37 / 91
第三十七話 過去 使用人の気持ち
しおりを挟むロゼ様、いやロゼはもう駄目だ。
あれはドレーク家を食い荒らす、害虫だ。
後妻のロザリーがこの家に嫁いできた時に我々は凄く警戒していた。
マリア様と上手くいくだろうか?
常に心配しながら見ていた。
この女も最低の女だった。
幼いマリア様に暴力こそ振るわない物の...心を傷つけていた。
だが、使用人として私達に出来る事は少ない。
仕方なく、暫く様子を見ていた。
何かあったら庇えるように必ずメイドか執事がマリア様の傍から離れない様にして...
どこで何をされるか解らないから旦那様に頼んで、何処に行くにもベテランの執事かメイドが同伴していた。
いつの頃かロザリー様はマリア様と打ち解け本当の親子の様に過ごすようになりようやく我々は胸をなでおろした物だ。
だが、問題は...ロゼ様...いや、あの人間に『様』なんてつける必要は無い。
あれは、まるで悪魔の生まれ変わりだ。
マリア様から全てを奪い取っていく。
特に、先代の奥様の形見の宝石箱を奪った時は...使用人全員が殺意を覚えた。
ローラは包丁を暫く眺めていた。
もしかしたら、頭の中で『ロゼを殺したい』そう思ったのかも知れない。
此処にいる使用人の多くはマリア様のお母様である先の奥様とそれなりの期間を過ごし、恩がある者も多い。
しかも奥様は『マリアを頼みましたよ』それが我々に対する最後の言葉だった。
そんな大切なマリア様から『大切な物を奪っていくロゼ』そんな者にだれが敬意を払えと言うのだ。
私だって実は短剣を握りしめた事も少なからずあった。
だが、我々はドレーク家の使用人、そこはプロ顔に出さない様にちゃんと給仕は行っている。
ただ、ロゼが見ていない所で舌打ちをしたり、陰口を叩くのは仕方ないだろう。
『心の底から嫌いなのだから』
幾らベテランの使用人であっても気持ち迄変える事は出来ない。
卑しく、マリア様の物を奪い続ける薄汚い娘。
そんな人間に誰が忠誠を誓えるというのだ。
『話したくもない』そんな人間相手に普通に接する、これ以上の事は...到底できない。
私は旦那様に『マリア様が色々と無くした』事を伝えた。
「ならば、生活に困らない様にしなくては」そう言われて我々はよく王都迄買いに行った。
だが、幾ら良い物を用意しても『新しく高級な物』は用意出来ても歴史的な価値がある物まで用意は出来ない。
幾ら言ってもあの娘は変わらない。
だから、せめて歯止めになればと、ロザリー様に頼んだ。
ロザリー様はその様子を見て、その都度小言を言ってはくれるが...自分が過去にした事もあり上手くいかない様だ。
マリア様は物が少ないし、ドレスも少ないからお茶会にはいくが、パーティーは欠席する事も多く、実に痛々しい。
私やメイドが気になり話しても『私は派手な所に行くより本を読んだり、お茶会で話すのが好きなのよ』と健気に振舞っている。
周りは全てマリア様を理解して味方してくれている。
これだけが救いだ。
そう長くないうちに、ロゼは結婚してこの家を出て行くだろう。
使用人に出来る事は少ない。
だが、その日まで我々は、仲間と共にマリア様がなるべき傷つかないように配慮する。
こんな事しか使用人には出来ない。
【フリード視点】
※第9話の視点です。
俺はそれから注意深くロゼを見張る事にした。
確かに令嬢達の言う通り、ロゼは古い物を何時も身に着けていた。
それに対して、マリアは何時も新しい、王都で売られている最新の物を身につけている。
明かに二人には差があった。
見ていて痛々しい。
更に二人を見ていると挨拶すらしない、そこまで確執があるのか?
本当にそう思えた。
確かに、マリアは長女でロゼは次女だ。
貴族に産まれたからには差があるのは当たり前だ。
だが、此処まであからさまなのは、見たことが無い。
何故、此処まで酷い事をするのだろうか?
しかも残酷な事に産みの親までもが、ロゼではなくマリアの味方になっていた。
良く様子を見ていると「貴方って子は」とか「マリアに謝りなさい」という声が聞こえてきた。
可哀想だ。
ロゼにとって、味方は恐らく殆ど居ないのだろう。
多分、友人だけが彼女の唯一の味方だ。
俺は...そんな彼女を見ない振りして結婚をして良い物だろうか?
そんな妹を虐める様な女性を生涯の伴侶に選んで良いのだろうか?
目を瞑る訳にいかないな。
俺は皆に【貴公子】と呼ばれている。
その俺が、ロゼを見捨てて、この状況を見ない振りしてマリアと結婚など出来ない。
俺は...どうしたらよいのだろうか?
32
お気に入りに追加
4,509
あなたにおすすめの小説
虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~
***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」
妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。
「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」
元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。
両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません!
あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。
他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては!
「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか?
あなたにはもう関係のない話ですが?
妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!!
ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね?
私、いろいろ調べさせていただいたんですよ?
あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか?
・・・××しますよ?
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
私も貴方を愛さない〜今更愛していたと言われても困ります
せいめ
恋愛
『小説年間アクセスランキング2023』で10位をいただきました。
読んでくださった方々に心から感謝しております。ありがとうございました。
「私は君を愛することはないだろう。
しかし、この結婚は王命だ。不本意だが、君とは白い結婚にはできない。貴族の義務として今宵は君を抱く。
これを終えたら君は領地で好きに生活すればいい」
結婚初夜、旦那様は私に冷たく言い放つ。
この人は何を言っているのかしら?
そんなことは言われなくても分かっている。
私は誰かを愛することも、愛されることも許されないのだから。
私も貴方を愛さない……
侯爵令嬢だった私は、ある日、記憶喪失になっていた。
そんな私に冷たい家族。その中で唯一優しくしてくれる義理の妹。
記憶喪失の自分に何があったのかよく分からないまま私は王命で婚約者を決められ、強引に結婚させられることになってしまった。
この結婚に何の希望も持ってはいけないことは知っている。
それに、婚約期間から冷たかった旦那様に私は何の期待もしていない。
そんな私は初夜を迎えることになる。
その初夜の後、私の運命が大きく動き出すことも知らずに……
よくある記憶喪失の話です。
誤字脱字、申し訳ありません。
ご都合主義です。
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる