上 下
34 / 91

第三十四話 過去 『女神の愛し子』

しおりを挟む

私はシャルロッテ様が言っていた事が信じられなかった。

私がロゼ派にいるのは《シャルロッテ様》が居るからだ。

アルトア家は騎士爵、貴族の位では一番下だ。

だから、何処の派閥に入ってもこき使われ見下されるだけだ。

しかも私の父は法衣貴族、領地を持たずに国から出る年金(給料)で暮らしている。

私が婚姻を結ぶにしても碌な結納金も払えない。

だから、賭けに出るしか無かった。

ロゼ...様なんて分が悪いに決まっている。

私だって家が伯爵、せめて男爵家なら、イライザ様の派閥に入るよ。

騎士爵じゃ、入れて貰えない可能性もあるし、貧乏な私じゃ入れても惨めになるだけだ。

だから、脳味噌お花畑のロゼの派閥に入るしか無かった。

後悔はしていない。

ロゼは無能だけど、この派閥にはシャルロッテ様がいる。


この方は貴族なのに商才にたけ...素晴らしい才能の持ち主だ。

しかも...同世代の貴族の令嬢では恐らく私の目から見たら一番だと思う。

きっと裏からロゼを操って、本当は...

これは口には出さないが、ロゼ派は隠れ蓑で、本当はシャルロッテ派だ。

多分、皆もそう思っている。

その証拠にマリーネ様にシレ―ネ様がいる。

これなら、まず間違いは無いだろう。

この三人が居るからこそ、私達はロゼ派に入った。


その中心にいるシャルロッテ様が...マリア様を恐れている。

信じられなかった。

私の父は法衣貴族。

お金や領地は持ってないが、王宮で勤めているから色々な情報は早く入る。

だから、私は、お父様にマリア様について聞いてみる事にした。

「お父様、今お時間宜しいでしょうか?」

「別に構わないが、お前が私の所にくるなんて珍しいな」

私のお父様はいつも忙しそうにしているから、余り話す事は少ない。

だけど、私はどうしてもマリア様の事を聞きたかった。


「実は、マリア様についてもしかしたらお父様はご存じないかと思いまして」

「マリア様ってドレーク家のマリア様の事で良いのかな?」

「はい、そのマリア様で間違いないです」

「流石はケイトだな、多分お前達の世代で、頭が一つ飛び出ているのはイライザ様とマリア様だな...特にマリア様は...まぁこの辺りは言えないが特別だ」

今、お父様が何か言おうとして止められたわ...何かあるのかしら。

「お父様、なにかマリア様にはあるのでしょうか?」

「うむ、これは、あくまで俺の考えだ、かなり主観が入っているから、ケイトは自分の頭で考えるように」

「解りました」

「実は、噂話しだが、マリア様が幼い時にマヨネーズを作ったんだ」

「マヨネーズですか?」

「そうだ、それでマリア様が『今迄に無い画期的な調味料を作った』そう騒いでいたんだ、だから、他の大人の貴族が《それは『マヨネーズ』と言う物で昔に異国から伝わった調味料だよ》そう伝えたんだ」


「それがどうしたのでしょうか?」

「解らないのか?」

「はい」

お父様の話はこうだ。

確かにマヨネーズはかなり昔からある。

だが、その製法は一流の料理人のみが知っていて、その製法は『秘伝』にしていて一般的に伝えてない。

幾ら貴族だろうが、おいそれと自分達の秘伝を教えたりしない。

それに、もし教わったのなら『秘伝のマヨネーズを作った』そういう筈だ。

それに対して『今迄に無い画期的な調味料を作った』と言う事は、誰にも教わらずに作った事になる。

「つまり、マリア様は『自力でマヨネーズを開発した』と言う事だ、それに他にもある」

「他にも?」

「いま、私の掛けている眼鏡だが『つる』があるだろう?」

「確かに...」

「元は棒がついていて、手で持っていたのだが、こうして耳に掛ければ両手がつかえる...これを考えたのはマリア様らしい」

「ですが、それは単に思いついただけじゃないですか?」

「眼鏡も使った事が無い子供が初めてみて言ったんだ...まぁ偶然かも知れないが、凄いと思うぞ」

「確かに」

そこからのお父様の考えは実に馬鹿げていた。

お父様の話では稀に女神に祝福を受けた『女神の愛し子』が生まれてくる。

そういう昔話があるらしい。

そして『女神の愛し子』は前世の記憶や別世界の記憶を断片的に持っている事もあるらしい。


「マリア様はそれ以外にも、凄い面があってな、子供なのに偶にやたら凄く大人っぽく見える事もある」

「確かに、そういう話は聞いた事があります」

「それに、最近はポルナック夫人のお茶会に出席して、その派閥に入るなんて噂もある」

「噂ですか?」

「真相は解らないが、あそこには若い女性が居なくて博識のある人物しかいない...あそこで話すには、それ相応の知識が必要だ、本を読んで語り合う、そう考えたら『難しい本を読んで、独自の解釈を言える』それが最低出来なければならない、お前にそれはできるか?」

友人同士なら出来るけど...歳を召した貴族には言える自信は無いわ。

「マリア様はそれが出来るのですね」

「それだけじゃなく、6ケタの掛け算も完璧に出来る」

「凄い...」

「まぁ『女神の愛し子』じゃなくても神童には間違いない...こんな所だ」


拷問狂で、大人の貴族と対等に話せて...信じられない知識を持った人物。

駄目じゃないかな?

こんな人を怒らせたら...大変な事になる。

ならば...そのマリア様が愛している妹を害したら...不味いかも知れない。

シャルロッテ様は...本当に上手くやれるのだろうか?

もし、失敗して怒らせたら、そんなリスクまで犯してやる事じゃないと思う。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

虐げられていた姉はひと月後には幸せになります~全てを奪ってきた妹やそんな妹を溺愛する両親や元婚約者には負けませんが何か?~

***あかしえ
恋愛
「どうしてお姉様はそんなひどいことを仰るの?!」 妹ベディは今日も、大きなまるい瞳に涙をためて私に喧嘩を売ってきます。 「そうだぞ、リュドミラ!君は、なぜそんな冷たいことをこんなかわいいベディに言えるんだ!」 元婚約者や家族がそうやって妹を甘やかしてきたからです。 両親は反省してくれたようですが、妹の更生には至っていません! あとひと月でこの地をはなれ結婚する私には時間がありません。 他人に迷惑をかける前に、この妹をなんとかしなくては! 「結婚!?どういうことだ!」って・・・元婚約者がうるさいのですがなにが「どういうこと」なのですか? あなたにはもう関係のない話ですが? 妹は公爵令嬢の婚約者にまで手を出している様子!ああもうっ本当に面倒ばかり!! ですが公爵令嬢様、あなたの所業もちょぉっと問題ありそうですね? 私、いろいろ調べさせていただいたんですよ? あと、人の婚約者に色目を使うのやめてもらっていいですか? ・・・××しますよ?

継母の心得

トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】 ※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。 山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。 治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。 不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!? 前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった! 突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。 オタクの知識を使って、子育て頑張ります!! 子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です! 番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。

辺境の獣医令嬢〜婚約者を妹に奪われた伯爵令嬢ですが、辺境で獣医になって可愛い神獣たちと楽しくやってます〜

津ヶ谷
恋愛
 ラース・ナイゲールはローラン王国の伯爵令嬢である。 次期公爵との婚約も決まっていた。  しかし、突然に婚約破棄を言い渡される。 次期公爵の新たな婚約者は妹のミーシャだった。  そう、妹に婚約者を奪われたのである。  そんなラースだったが、気持ちを新たに次期辺境伯様との婚約が決まった。 そして、王国の辺境の地でラースは持ち前の医学知識と治癒魔法を活かし、獣医となるのだった。  次々と魔獣や神獣を治していくラースは、魔物たちに気に入られて楽しく過ごすこととなる。  これは、辺境の獣医令嬢と呼ばれるラースが新たな幸せを掴む物語。

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

半月後に死ぬと告げられたので、今まで苦しんだ分残りの人生は幸せになります!

八代奏多
恋愛
 侯爵令嬢のレティシアは恵まれていなかった。  両親には忌み子と言われ冷遇され、婚約者は浮気相手に夢中。  そしてトドメに、夢の中で「半月後に死ぬ」と余命宣告に等しい天啓を受けてしまう。  そんな状況でも、せめて最後くらいは幸せでいようと、レティシアは努力を辞めなかった。  すると不思議なことに、状況も運命も変わっていく。  そしてある時、冷徹と有名だけど優しい王子様に甘い言葉を囁かれるようになっていた。  それを知った両親が慌てて今までの扱いを謝るも、レティシアは許す気がなくて……。  恵まれない令嬢が運命を変え、幸せになるお話。 ※「小説家になろう」「カクヨム」でも公開しております。

妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放されました。でもそれが、私を虐げていた人たちの破滅の始まりでした

水上
恋愛
「ソフィア、悪いがお前との婚約は破棄させてもらう」 子爵令嬢である私、ソフィア・ベルモントは、婚約者である子爵令息のジェイソン・フロストに婚約破棄を言い渡された。 彼の隣には、私の妹であるシルビアがいる。 彼女はジェイソンの腕に体を寄せ、勝ち誇ったような表情でこちらを見ている。 こんなこと、許されることではない。 そう思ったけれど、すでに両親は了承していた。 完全に、シルビアの味方なのだ。 しかも……。 「お前はもう用済みだ。この屋敷から出て行け」 私はお父様から追放を宣言された。 必死に食い下がるも、お父様のビンタによって、私の言葉はかき消された。 「いつまで床に這いつくばっているのよ、見苦しい」 お母様は冷たい言葉を私にかけてきた。 その目は、娘を見る目ではなかった。 「惨めね、お姉さま……」 シルビアは歪んだ笑みを浮かべて、私の方を見ていた。 そうして私は、妹に婚約者を奪われ、屋敷から追放された。 途方もなく歩いていたが、そんな私に、ある人物が声を掛けてきた。 一方、私を虐げてきた人たちは、破滅へのカウントダウンがすでに始まっていることに、まだ気づいてはいなかった……。

義妹がすぐに被害者面をしてくるので、本当に被害者にしてあげましょう!

新野乃花(大舟)
恋愛
「フランツお兄様ぁ〜、またソフィアお姉様が私の事を…」「大丈夫だよエリーゼ、僕がちゃんと注意しておくからね」…これまでにこのような会話が、幾千回も繰り返されれきた。その度にソフィアは夫であるフランツから「エリーゼは繊細なんだから、言葉や態度には気をつけてくれと、何度も言っているだろう!!」と責められていた…。そしてついにソフィアが鬱気味になっていたある日の事、ソフィアの脳裏にあるアイディアが浮かんだのだった…! ※過去に投稿していた「孤独で虐げられる気弱令嬢は次期皇帝と出会い、溺愛を受け妃となる」のIFストーリーになります! ※カクヨムにも投稿しています!

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

処理中です...