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第十三話 過去 ブローチ一つで

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私の名前はロゼ、ドレーク伯爵家の次女に生まれた。

私には少し年上の腹違いのお姉ちゃんがいる。

マリアという私と違い地味な女だ。

女として悪くはないのだけど、なんかパッとしない感じの人と言うのが一番近い感じかも知れない。

貴族と言うのは凄く残酷な世界だと思うよ。

だって、たった数年早く生まれただけで...何もかもが違うんだかさぁ。


更に言うなら、お姉ちゃんのお母さんは私のお母さんと違い裕福だから、持ち物が全部違うんだもん。


私の宝石箱は、ただの木の宝石箱だ。

それに比べて、お姉ちゃんの宝石箱は宝石を散りばめたオルゴール付きの綺麗な宝石箱。

こんなにも違う。

いいなぁ~ 凄く羨ましい。

他にも筆記用具にドレス、どれ一つとっても...私より良い物しかない。


本当にお姉ちゃんが羨ましい。

だけど...仕方ない。

だって私は次女だから、お姉ちゃんより良い物は手に入らない。

諦めるしかないんだ。


だけど、そんなある日...見てしまった。


お母さんがお姉ちゃんからネックレスを取り上げていた。


なんだ【私は持っていないんだからお姉ちゃんから貰えば良いんだ】

なんでこんな簡単な事に気が付かなかったのかな。

簡単じゃん。

最初の一言は凄く緊張したのを覚えている。

「お姉ちゃん、このブローチ頂戴」

お姉ちゃんは何だか考えていた。

怒られるんじゃないか...本当にそう思っていたけど、そのままお姉ちゃんはブローチをくれた。


本当は感謝の気持ちを伝えるのがマナーだ。

だけど、私はお姉ちゃんに比べて何も持っていない。

凄く不公平だ。

たった数年生まれるのが遅かっただけなのに...

その思いが、お礼を言おうと思う心を押しつぶした。


【私は何も持っていない...可哀そうな子なんだからこの位貰っても良いよね】


お礼なんて言わなくて良い。


お母さんだって言っているし、《私の事をマリアに比べて、可哀そう》そう皆が思っている。

お姉ちゃんに比べたら、私は何も持っていない。

だから、少しくらい貰っても良い筈だよね...お母さも貰っているんだから。



お姉ちゃんから貰ったブローチをつけてお茶会に行った。

このブローチは赤くて綺麗で何となくだけど、つけているだけで凄く嬉しかった。


「ロゼさん、凄いブローチをつけていますわね」

同じ伯爵家令嬢のケティさんが話掛けてきた。

いつもは話をまともにした事もないのに。


「これですか?」

「そうですわ、そのブローチは、本物なら【月女神の涙】と言われる物ですわ...それ一つで王族の馬車が馬ごと買えてしまいますわ」


嘘、お姉ちゃんから貰った..このブローチ、そんなに価値があるんだ。

知らなかったな。


「そうなんですか? これは姉から貰った物なんで価値なんて知りませんでした」

「まぁ、マリア様から頂いたのですね、それなら間違い無く本物ですわね、二つとない貴重な物です...良い物を見させて頂きましたわ」


そんなに貴重な物をお姉ちゃんは持っていたんだ。

しかも、これ一つじゃ無いなんて..やっぱりお姉ちゃんは狡いな。


「皆、凄いんですのよ、あの幻の【月女神の涙】をロゼさんが身に着けていますわ」


「嘘、まさかこんな所で見られるなんて...凄く素敵だわ」

「伝説の通りですね、まるで血の様に真っ赤なんですね、それでいて凄く輝いていて二つと無い...今なら解りますわ」

「これと対になる【太陽神の目】も見てみたいわ」


「ロゼさん、こんな物を身に着けられるなんて貴方が羨ましいわ」

「本当にそうだわ」


嘘、ブローチ一つ身に着けるだけで...こんなに違うの。

いつも端で静かにしていたけど、今日は皆から話しかけてくれる。

まるでお茶会の主役みたい。


今日は私が主役よ...このブローチを身に着けていれば、きっと私はこれからも主役になれるわ。




家に帰ってきた。


しかし、このブローチを身に着けるだけでこんなにも周りが変わるの?

まだ興奮が収まらない。

まるで魔法のブローチみたい。

ロゼは、自分の木箱の宝石箱に、ハンカチで大切にくるんでブローチをしまった。




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