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月の章
僕とあの人…
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デザイン部へ戻った僕は、残りの仕事に精を出していた。
(今日こそ定時で退社する。)
最近、あまり定時で退社できてなくて、僕よりはるかに上のポストであるれー君が先に帰る様な事態になっている。
ご飯から洗濯から、何から何までしてもらっている。
同居と言うより居候の身なのに。
れー君は、自分がしたくてしてるって言うけど、家事をほとんどしない居候の面倒なんて、誰が見たいんだろう。
考え事をしながらひたすら仕事に打ち込むと案外すんなり終わった。
(やっと帰れる。)
タイムカードを押して、エレベーターホールへ向かう。
(れー君にLINEしよ。)
今日は早く帰れることを伝えて、エレベーターに乗る。
すると、聞き覚えのある声が隣で電話をしていた。
「……!?」
「あっれー、今日は早いじゃん!」
葛城さん……最悪だ。
「ちょーど良かった。今日呑みに行こ!
阿澄ちゃんどーせ暇でしょ?」
関わりたくないので、色々言いたいことを飲み込んで、無視した。
「昼間に続けて今度は無視ねぇ……あ、もしかして、俺がデザイン部の時のこと、まだ怒ってるのぉ?」
「……ッ!!?」
図星だった。
僕達は、もともと……
「貴方は僕を捨てたんですつ!!それどころか、弄んだ挙句、僕の思いをその汚い足で踏み潰したんですよっ!それをどう許せって言うんですかっ!」
言ってしまった。
ずっと我慢していたことを、押し殺して無かったことにしたかった。
この人はいつもそうだった。
僕の事を掌で転がして遊ぶ。
エレベーターを降りて、早足で歩いた僕を、葛城さんが追いかけてくる。
「ちょっと待ってよ、傷つけたことは謝ったじゃーん。それに、そんなに気にしてるってことは、俺のこと、まだ好きってことになるのよね?」
「そんなんじゃっ………」
言いかけたとき、突然体を引っ張られた。
葛城さんの頬に自分の額が触れるほど近い。
「……!?」
「ほーら………やっぱり抵抗しない。俺のこと、まだ好きなんだ?あんな事されたのに……」
そう言われて、僕はようやく現状を理解した。
「は、離してくださいっ!葛城さん!」
やっとの思いで引き離したとき、後ろから走って来る足音が聞こえた。
緊張と混乱で子供みたいに地べたに座り込む僕。
と、僕の後ろらへんで、走ってきた足音が止まった。
(誰だろう…)
僕はゆっくり振り返った。
そこに立っていたのは………
今まで見たこともないくらい
恐ろしい剣幕のれー君だった。
(今日こそ定時で退社する。)
最近、あまり定時で退社できてなくて、僕よりはるかに上のポストであるれー君が先に帰る様な事態になっている。
ご飯から洗濯から、何から何までしてもらっている。
同居と言うより居候の身なのに。
れー君は、自分がしたくてしてるって言うけど、家事をほとんどしない居候の面倒なんて、誰が見たいんだろう。
考え事をしながらひたすら仕事に打ち込むと案外すんなり終わった。
(やっと帰れる。)
タイムカードを押して、エレベーターホールへ向かう。
(れー君にLINEしよ。)
今日は早く帰れることを伝えて、エレベーターに乗る。
すると、聞き覚えのある声が隣で電話をしていた。
「……!?」
「あっれー、今日は早いじゃん!」
葛城さん……最悪だ。
「ちょーど良かった。今日呑みに行こ!
阿澄ちゃんどーせ暇でしょ?」
関わりたくないので、色々言いたいことを飲み込んで、無視した。
「昼間に続けて今度は無視ねぇ……あ、もしかして、俺がデザイン部の時のこと、まだ怒ってるのぉ?」
「……ッ!!?」
図星だった。
僕達は、もともと……
「貴方は僕を捨てたんですつ!!それどころか、弄んだ挙句、僕の思いをその汚い足で踏み潰したんですよっ!それをどう許せって言うんですかっ!」
言ってしまった。
ずっと我慢していたことを、押し殺して無かったことにしたかった。
この人はいつもそうだった。
僕の事を掌で転がして遊ぶ。
エレベーターを降りて、早足で歩いた僕を、葛城さんが追いかけてくる。
「ちょっと待ってよ、傷つけたことは謝ったじゃーん。それに、そんなに気にしてるってことは、俺のこと、まだ好きってことになるのよね?」
「そんなんじゃっ………」
言いかけたとき、突然体を引っ張られた。
葛城さんの頬に自分の額が触れるほど近い。
「……!?」
「ほーら………やっぱり抵抗しない。俺のこと、まだ好きなんだ?あんな事されたのに……」
そう言われて、僕はようやく現状を理解した。
「は、離してくださいっ!葛城さん!」
やっとの思いで引き離したとき、後ろから走って来る足音が聞こえた。
緊張と混乱で子供みたいに地べたに座り込む僕。
と、僕の後ろらへんで、走ってきた足音が止まった。
(誰だろう…)
僕はゆっくり振り返った。
そこに立っていたのは………
今まで見たこともないくらい
恐ろしい剣幕のれー君だった。
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