【完結】独り語り

桐生千種

文字の大きさ
上 下
16 / 45
第2弾 冷たい同級生

トラック2 成長(2)

しおりを挟む
 意識的にキツイ言葉を投げかけて、それでも帰ろうとしないキミ。

 いつまでもこんなやり取りを続けていても、続けるだけ時間を浪費するだけ。

 そんなこと、キミとの短い付き合いの中で僕は充分過ぎるほどに理解した。


「……早く座れば? 半分寄こせって言うんでしょ」


「これが資料」


「明日のホームルームでは、文化祭で販売するメニューを決めるから関係する注意事項を抜き出しといてくれる?」



「……僕? 僕は予算の振り分け。2人で同じ作業をしても仕方ないでしょ」



「まずは読んで」

「読みながらでいい。食品衛生に関係する項目に色のついたペンで線を引いて。終わったら教えて」


「……何」



「……そう見える? ならそうなんじゃない? 口じゃなくて、手を動かしなよ」



「……今度は何。まさか、漢字が読めないなんて言わないよね?」



「へえ……。思ったよりは成長してるんだ」



「予算が終わってからやろうと思ってたけど、キミが衣装の注意事項も一緒に見れるっていうなら頼むよ」



「必要な部分をプリントにまとめて配るけど、それがどうかした?」



「……なるほど。その考えはなかった。模造紙か画用紙ならそんなに予算もとらないだろうし。それで頼むよ」



「……去年も経験してるからね。最低限、出店禁止にはしたくないし」



「……去年の文化祭、覚えてないの?」



「文化祭も、授業の一環なんだよ? 全校でスムーズに文化祭を企画、運営できるように、規則が定められている。規則違反をしたクラスは減点表に則って点数が引かれて、一定数以上のマイナスがつくと出店禁止になるってわけ」



「生徒会と教師に決まってるでしょ。もしかして、生徒会と教師がときどき覗きに来てたのはサボりかなにかだと思ってた?」



「去年のキミのクラスのクラス委員は優秀だったみたいだね。キミがいながら出店できたんだから」



「今年は、キミが委員である意味よかったよ。キミがマイナスを稼ぐ危険人物だと知れたから」



「キミがただのクラスメイトだったなら、危険人物だと判断できる自信が僕にはないらかね。今年はキミをしっかりマークしておくよ」



「そう」



「まあ、自分で注意事項を書き出して貼り出すんだからそうか」



「でも、期待はしないでおくよ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

悪役令嬢カテリーナでございます。

くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ…… 気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。 どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。 40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。 ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。 40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。

親切なミザリー

みるみる
恋愛
第一王子アポロの婚約者ミザリーは、「親切なミザリー」としてまわりから慕われていました。 ところが、子爵家令嬢のアリスと偶然出会ってしまったアポロはアリスを好きになってしまい、ミザリーを蔑ろにするようになりました。アポロだけでなく、アポロのまわりの友人達もアリスを慕うようになりました。 ミザリーはアリスに嫉妬し、様々な嫌がらせをアリスにする様になりました。 こうしてミザリーは、いつしか親切なミザリーから悪女ミザリーへと変貌したのでした。 ‥ですが、ミザリーの突然の死後、何故か再びミザリーの評価は上がり、「親切なミザリー」として人々に慕われるようになり、ミザリーが死後海に投げ落とされたという崖の上には沢山の花が、毎日絶やされる事なく人々により捧げられ続けるのでした。 ※不定期更新です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

処理中です...