47 / 66
03 変わる世界
14 レイナの決意
しおりを挟む
カイトの研究室を出たレイナは1人、ある場所へと来ていた。
限られた人間しか立ち入ることを許されていない場所。
眠り続けるネオがいる場所。
レイナはその能力から、立ち入ることを許されていた。
もしかしたら、アイラと共鳴するレイナなら、このネオとも共鳴するかもしれない、と。
結果は、共鳴どころか何も感じ取ることもできなかった。
とうに諦めていたはずったけれど、先日、アイラと共鳴したことでレイナにもその余波が及んでいた。
そして、とても耐えられないと、心の底からそう思った。
けれど、レイナはもう決めてしまったいた。
その時が来たら、アイラを追いかけて行こうと。
時代遅れの巨大なコンピューターに繋がれた、真っ白な髪の、アイラによく似たネオの少女。
実際には、アイラが似ているのだけれど、レイナにとってはアイラに似ているで正解だった。
レイナはこのネオのことを何も知らない。
ただ、何年も眠っている、初代に近いネオであるということしか教えられていなかった。
その年代を考えれば、少女というには程遠いはずだった。
けれど、その姿は、少女と言ってもおかしくはなかった。
アイラと比べれば大人びて見えるけれど、どう見てもネオが生まれはじめた世代の人物だとは思えなかった。
おとぎ話の守り姫のように、少女は眠る。
何年も、その瞼を開いてはいない。
けれど、レイナは知っていた。
その瞼の奥にあるのが、アイラと同じ赤い瞳であることを。
少女がいつも、アイラたちを見ていたことを、アイラを通して知っていた。
最近になって、その姿を見せなくなっていたことも知っていた。
「笑っちゃうよね」
レイナは、答える者のいない部屋の中で呟いた。
「守り姫、なんてさ。一体何から、何を守ってるんだろうね」
自虐的にレイナは言った。
『守り姫』は幼い頃、シノの話を聞いてレイナが創作した作り話だった。
初めてこの部屋に連れて来られて、この少女の話を聞いた。
シノとリンを救ってくれた、恩人だと。
何があったのか、そこで語られることはなかったけれど、教育プログラムを受講していく中で新人類ネオと旧人類ヒトとの歴史は否応なしに知識として入って来る。
何があったのか、簡単に想像がついた。
初めは、単にアイラの暇つぶしにでもなればいいと軽い気持ちで作った。
それがどういうわけか、のちの話が追加され、今の状態になっていた。
「アナタが起きないせいで、何人も子供が死んだ。知ってるんでしょう? ずっとレイナたちのこと、見てたんだから」
返事なんて、期待していない。
それでも、どこかに吐き出してしまいたかった。
「アナタさえ起きてくれたら、あの人は全部やめてくれる。誰も死なない。アイラも、他の子たちも」
すべては、目の前のネオが原因だとでも言うようだった。
「なんて、アナタにどうにかできる問題じゃないってこともわかってるんだけどね」
ここにアイラはいない。
だから、レイナはその少女がレイナの言葉を聞いていることも、レイナを見ていることも気づかなかった。
――ごめんなさい……。
その言葉も、レイナには届かなかった。
「じゃあね。愚痴、聞いてくれてありがとう。次来るときは、少しくらい話せるといいな。そっちの世界で」
レイナはそう言い残すと、そっと部屋を出て行った。
あとには、眠り続ける少女の身体と、誰にも見ることできない――アイラにしか視ることのできない、少女の意識だけが残されていた。
限られた人間しか立ち入ることを許されていない場所。
眠り続けるネオがいる場所。
レイナはその能力から、立ち入ることを許されていた。
もしかしたら、アイラと共鳴するレイナなら、このネオとも共鳴するかもしれない、と。
結果は、共鳴どころか何も感じ取ることもできなかった。
とうに諦めていたはずったけれど、先日、アイラと共鳴したことでレイナにもその余波が及んでいた。
そして、とても耐えられないと、心の底からそう思った。
けれど、レイナはもう決めてしまったいた。
その時が来たら、アイラを追いかけて行こうと。
時代遅れの巨大なコンピューターに繋がれた、真っ白な髪の、アイラによく似たネオの少女。
実際には、アイラが似ているのだけれど、レイナにとってはアイラに似ているで正解だった。
レイナはこのネオのことを何も知らない。
ただ、何年も眠っている、初代に近いネオであるということしか教えられていなかった。
その年代を考えれば、少女というには程遠いはずだった。
けれど、その姿は、少女と言ってもおかしくはなかった。
アイラと比べれば大人びて見えるけれど、どう見てもネオが生まれはじめた世代の人物だとは思えなかった。
おとぎ話の守り姫のように、少女は眠る。
何年も、その瞼を開いてはいない。
けれど、レイナは知っていた。
その瞼の奥にあるのが、アイラと同じ赤い瞳であることを。
少女がいつも、アイラたちを見ていたことを、アイラを通して知っていた。
最近になって、その姿を見せなくなっていたことも知っていた。
「笑っちゃうよね」
レイナは、答える者のいない部屋の中で呟いた。
「守り姫、なんてさ。一体何から、何を守ってるんだろうね」
自虐的にレイナは言った。
『守り姫』は幼い頃、シノの話を聞いてレイナが創作した作り話だった。
初めてこの部屋に連れて来られて、この少女の話を聞いた。
シノとリンを救ってくれた、恩人だと。
何があったのか、そこで語られることはなかったけれど、教育プログラムを受講していく中で新人類ネオと旧人類ヒトとの歴史は否応なしに知識として入って来る。
何があったのか、簡単に想像がついた。
初めは、単にアイラの暇つぶしにでもなればいいと軽い気持ちで作った。
それがどういうわけか、のちの話が追加され、今の状態になっていた。
「アナタが起きないせいで、何人も子供が死んだ。知ってるんでしょう? ずっとレイナたちのこと、見てたんだから」
返事なんて、期待していない。
それでも、どこかに吐き出してしまいたかった。
「アナタさえ起きてくれたら、あの人は全部やめてくれる。誰も死なない。アイラも、他の子たちも」
すべては、目の前のネオが原因だとでも言うようだった。
「なんて、アナタにどうにかできる問題じゃないってこともわかってるんだけどね」
ここにアイラはいない。
だから、レイナはその少女がレイナの言葉を聞いていることも、レイナを見ていることも気づかなかった。
――ごめんなさい……。
その言葉も、レイナには届かなかった。
「じゃあね。愚痴、聞いてくれてありがとう。次来るときは、少しくらい話せるといいな。そっちの世界で」
レイナはそう言い残すと、そっと部屋を出て行った。
あとには、眠り続ける少女の身体と、誰にも見ることできない――アイラにしか視ることのできない、少女の意識だけが残されていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
鎌倉最後の日
もず りょう
歴史・時代
かつて源頼朝や北条政子・義時らが多くの血を流して築き上げた武家政権・鎌倉幕府。承久の乱や元寇など幾多の困難を乗り越えてきた幕府も、悪名高き執権北条高時の治政下で頽廃を極めていた。京では後醍醐天皇による倒幕計画が持ち上がり、世に動乱の兆しが見え始める中にあって、北条一門の武将金澤貞将は危機感を募らせていく。ふとしたきっかけで交流を深めることとなった御家人新田義貞らは、貞将にならば鎌倉の未来を託すことができると彼に「決断」を迫るが――。鎌倉幕府の最後を華々しく彩った若き名将の清冽な生きざまを活写する歴史小説、ここに開幕!
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
西涼女侠伝
水城洋臣
歴史・時代
無敵の剣術を会得した男装の女剣士。立ち塞がるは三国志に名を刻む猛将馬超
舞台は三國志のハイライトとも言える時代、建安年間。曹操に敗れ関中を追われた馬超率いる反乱軍が涼州を襲う。正史に残る涼州動乱を、官位無き在野の侠客たちの視点で描く武侠譚。
役人の娘でありながら剣の道を選んだ男装の麗人・趙英。
家族の仇を追っている騎馬民族の少年・呼狐澹。
ふらりと現れた目的の分からぬ胡散臭い道士・緑風子。
荒野で出会った在野の流れ者たちの視点から描く、錦馬超の実態とは……。
主に正史を参考としていますが、随所で意図的に演義要素も残しており、また武侠小説としてのテイストも強く、一見重そうに見えて雰囲気は割とライトです。
三國志好きな人ならニヤニヤ出来る要素は散らしてますが、世界観説明のノリで注釈も多めなので、知らなくても楽しめるかと思います(多分)
涼州動乱と言えば馬超と王異ですが、ゲームやサブカル系でこの2人が好きな人はご注意。何せ基本正史ベースだもんで、2人とも現代人の感覚としちゃアレでして……。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))
融女寛好 腹切り融川の後始末
仁獅寺永雪
歴史・時代
江戸後期の文化八年(一八一一年)、幕府奥絵師が急死する。悲報を受けた若き天才女絵師が、根結いの垂髪を揺らして江戸の町を駆け抜ける。彼女は、事件の謎を解き、恩師の名誉と一門の将来を守ることが出来るのか。
「良工の手段、俗目の知るところにあらず」
師が遺したこの言葉の真の意味は?
これは、男社会の江戸画壇にあって、百人を超す門弟を持ち、今にも残る堂々たる足跡を残した実在の女絵師の若き日の物語。最後までお楽しみいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる