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03 変わる世界
13 カイトの想い
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「俺はまだ諦めてない。けど、時間がないんだ」
ポツリと呟かれたカイトの言葉に、どんな感情がこめられているのか、レイナは判断することができなかった。
時間がない。
カイトには――正確にはアイラに時間がない。
差し迫るそのときに、カイトは焦りを覚え、滞る研究に、自分自身に苛立った。
それに加え、レイナは自分だけの解決策を実行しようとしている。
自らが犠牲になるような方法だ。
このままではカイトは、アイラと同時にレイナまでも失うかもしれなかった。
「付き合わせてごめんね」
レイナはそう言い残してカイトの研究室を出た。
付き合わせてごめん。
その言葉の意味を、カイトはほどなくして理解した。
レイナの最期の思い出づくりに付き合わせてごめん、と。
レイナは本当に、覚悟を決めているのだ。
「くそっ!」
乱暴に髪をかき乱し、カイトは吐き捨てた。
思い通りにならない。
何もかも。
アイラを救いたい一心で、カイトは今の仕事を選んだのだ。
眠り続けるたった1人のネオを救うために、アイラをつくったのだと言うシノに啖呵を切ったのはいつのことだっただろうか。
『起こしてやるよ! だから、アイラを自由にしてくれ!』
ただの子供だったカイトの言葉を、シノはバカにするでもなく、けれど真剣に受け止めることもなく、ただいつもの笑顔で受け止めた。
そこには、何の期待も感情もなかった。
『アイラの能力が成熟するより前に、カイトがその方法をみつけることができたなら、アイラを自由にしても構わないよ』
シノのその言葉を信じ、カイトはただがむしゃらに研究を続けた。
目覚めない原因は何なのか、コンタクトを取れない原因は何なのか、現状を変えるにはどうすればいい。
けれど、調べれば調べるほど、希望を失っていった。
シノが出した結論以外を、導き出すことができなかった。
期限は、アイラの能力の成熟。
完璧に、あのネオの代わりとして能力が安定したときがタイムリミットだ。
そしてその瞬間は、もう間もなくせまっていた。
アイラの力を使わず、何の犠牲も出さず、あのネオを救う方法。
カイトが研究を始めてからもう何年も経つけれど、レポートは未だに白紙のままだ。
それでも、カイトは諦めようとはしない。
タイムリミットが訪れるその瞬間まで、カイトはその手を休めることはしない。
愛しい人が、笑っていられる未来のために。
愛しい人と、笑いあえる未来のために。
ポツリと呟かれたカイトの言葉に、どんな感情がこめられているのか、レイナは判断することができなかった。
時間がない。
カイトには――正確にはアイラに時間がない。
差し迫るそのときに、カイトは焦りを覚え、滞る研究に、自分自身に苛立った。
それに加え、レイナは自分だけの解決策を実行しようとしている。
自らが犠牲になるような方法だ。
このままではカイトは、アイラと同時にレイナまでも失うかもしれなかった。
「付き合わせてごめんね」
レイナはそう言い残してカイトの研究室を出た。
付き合わせてごめん。
その言葉の意味を、カイトはほどなくして理解した。
レイナの最期の思い出づくりに付き合わせてごめん、と。
レイナは本当に、覚悟を決めているのだ。
「くそっ!」
乱暴に髪をかき乱し、カイトは吐き捨てた。
思い通りにならない。
何もかも。
アイラを救いたい一心で、カイトは今の仕事を選んだのだ。
眠り続けるたった1人のネオを救うために、アイラをつくったのだと言うシノに啖呵を切ったのはいつのことだっただろうか。
『起こしてやるよ! だから、アイラを自由にしてくれ!』
ただの子供だったカイトの言葉を、シノはバカにするでもなく、けれど真剣に受け止めることもなく、ただいつもの笑顔で受け止めた。
そこには、何の期待も感情もなかった。
『アイラの能力が成熟するより前に、カイトがその方法をみつけることができたなら、アイラを自由にしても構わないよ』
シノのその言葉を信じ、カイトはただがむしゃらに研究を続けた。
目覚めない原因は何なのか、コンタクトを取れない原因は何なのか、現状を変えるにはどうすればいい。
けれど、調べれば調べるほど、希望を失っていった。
シノが出した結論以外を、導き出すことができなかった。
期限は、アイラの能力の成熟。
完璧に、あのネオの代わりとして能力が安定したときがタイムリミットだ。
そしてその瞬間は、もう間もなくせまっていた。
アイラの力を使わず、何の犠牲も出さず、あのネオを救う方法。
カイトが研究を始めてからもう何年も経つけれど、レポートは未だに白紙のままだ。
それでも、カイトは諦めようとはしない。
タイムリミットが訪れるその瞬間まで、カイトはその手を休めることはしない。
愛しい人が、笑っていられる未来のために。
愛しい人と、笑いあえる未来のために。
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