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03 変わる世界
12 最期の思い出
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カイトは1人、自身に与えられた部屋でコンピューターと向き合っていた。
カイトの姿が見えなくなるほど大量に表示されたモニターには、カイトが今必要としている情報がいくつも表示されていた。
アイラの現在の状況。
基本的な生体情報から能力の大きさ、波長。
初代と言われる人物の状況。
その人物とアイラの波長が、日を追うごとに一致し始めている。
カイトは研究者としてのライセンスを取得したあと、その優秀さから個人の研究室を与えられていた。
「カイト来たよー」
自身の存在をアピールするかのように入室して来たレイナを、カイトはモニター越しに見やった。
「アポを取れ、ノックをしろ、部外者を連れて来るな」
そう言うと、カイトはモニターの内容が見られないようにフィルターをかけた。
レイナの後ろにはトーマとロム――久しぶりに顔を会わせる馴染みの友人たちの顔があった。
「そんなこと言ったって、来るなって言うじゃん。ノックしたって返事しないクセに」
レイナはカイトの言葉を気にも留めずに、我が物顔で備え付けのキッチンに足を運んだ。
手慣れた様子でお茶を淹れるレイナにカイトは舌打ちをした。
「ここを休憩室に使うんじゃねぇ」
カイトは苛立ちを隠そうともしないけれど、それでもレイナは出て行こうとはしない。
「まあまあ、急に来た私たちも悪いけど、最近のカイトは研究室に籠りっきりでロクに顔も合わせてなかったからさ。たまには息抜きも必要だと思ったんだ」
カイトのことを思ってくれているのだろうロムの言葉にもカイトは苛立った。
「そんな暇ねぇよ。お前は自分の持ち場に帰れ」
ロムも今や心理学者として日々研究を重ねている。
専門は、精神感応系能力者における精神構造の解析およびその分析だ。
「そう言うなよ、俺とお前の仲だろ?」
「お前はさっさと卒業しろ」
この中で、未だに卒業できずにいるのはトーマだけだった。
レイナも今では美容師、ファッションコーディネーター、デザイター、と多くの肩書きを持って日々仕事をこなしている。
けれど、トーマが未だに卒業できずにいるのは、学力が追いついていないというわけではなく、単なるサボり癖のせいで必要な評価がもらえていないというだけだった。
もう充分に卒業できるだけの力が備わっているというのに、トーマは卒業する気がないのか過分に講義をサボっていた。
「そう言わないの。今回はレイナが無理言って来てもらったんだから」
「は?」
何でわざわざ、そんな迷惑なことをと思ったけれど口には出さずにカイトはレイナの言葉を待った。
「久しぶりにさ、4人で会いたくなっちゃって」
それは、覚悟を持った声だった。
「受講生してたときはさ、よく4人でご飯食べたりしてたけどさ、今じゃカイトはこの部屋に籠りきりだし、ロムだってこれから仕事が忙しくなるでしょ? トーマとも時間が合わなくなっていくだろうし。レイナも……会えなくなるかもしれないからさ……」
最後の言葉は小さくて、トーマにも、ロムにも、聞き取ることができなかった。
けれど、カイトにだけは届いていた。
それはまるで、死を覚悟して最期の思い出をつくりたいと言っているようにも聞こえた。
「ふざけるなよ!!」
気が付けばカイトは声をあげていた。
どんなに機嫌が悪くても、言葉が乱暴になっても、ここまで大声をあげることは今までなかった。
思いもよらないカイトの様子に、トーマとロムは当然驚いた。
けれど、レイナだけは予想していたのか驚いた様子を見せなかった。
「俺はまだ諦めてない!! 勝手に決めんじゃねえ!!」
瞳を赤くするカイトに、トーマもロムもただ驚くことしかできなかった。
どうしてカイトがここまで感情を昂らせているのかわからなかった。
「出て行け!! 研究の邪魔だ!!」
「おいおい、そんな言い方」
レイナをかばうように声を発したトーマだったけれど、カイトはそれをも跳ねのけた。
「うるさい!! 時間がないんだ!! お前らに構ってる暇なんかねぇんだよ!! さっさと帰れ!!」
激高した激昂したカイトに、誰も反論することができなかった。
「悪かったよ……。邪魔してごめん」
俯いたトーマはポツリと呟き、部屋を出た。
「私も、戻るよ。ごめん」
ロムも俯き、部屋を出た。
「ごめんね……」
トーマとロムもを誘って連れて来たのはレイナだった。
レイナのワガママで無理を言って来てもらったのに、嫌な思いをさせてしまったとレイナは思う。
レイナは決めていた。
もう、決めてしまったから、どうしても最期に会っておきたかった。
最初で最後の、一生に一度の、レイナと言う人間の人生に大きく関わってくれた友人たちに。
カイトの姿が見えなくなるほど大量に表示されたモニターには、カイトが今必要としている情報がいくつも表示されていた。
アイラの現在の状況。
基本的な生体情報から能力の大きさ、波長。
初代と言われる人物の状況。
その人物とアイラの波長が、日を追うごとに一致し始めている。
カイトは研究者としてのライセンスを取得したあと、その優秀さから個人の研究室を与えられていた。
「カイト来たよー」
自身の存在をアピールするかのように入室して来たレイナを、カイトはモニター越しに見やった。
「アポを取れ、ノックをしろ、部外者を連れて来るな」
そう言うと、カイトはモニターの内容が見られないようにフィルターをかけた。
レイナの後ろにはトーマとロム――久しぶりに顔を会わせる馴染みの友人たちの顔があった。
「そんなこと言ったって、来るなって言うじゃん。ノックしたって返事しないクセに」
レイナはカイトの言葉を気にも留めずに、我が物顔で備え付けのキッチンに足を運んだ。
手慣れた様子でお茶を淹れるレイナにカイトは舌打ちをした。
「ここを休憩室に使うんじゃねぇ」
カイトは苛立ちを隠そうともしないけれど、それでもレイナは出て行こうとはしない。
「まあまあ、急に来た私たちも悪いけど、最近のカイトは研究室に籠りっきりでロクに顔も合わせてなかったからさ。たまには息抜きも必要だと思ったんだ」
カイトのことを思ってくれているのだろうロムの言葉にもカイトは苛立った。
「そんな暇ねぇよ。お前は自分の持ち場に帰れ」
ロムも今や心理学者として日々研究を重ねている。
専門は、精神感応系能力者における精神構造の解析およびその分析だ。
「そう言うなよ、俺とお前の仲だろ?」
「お前はさっさと卒業しろ」
この中で、未だに卒業できずにいるのはトーマだけだった。
レイナも今では美容師、ファッションコーディネーター、デザイター、と多くの肩書きを持って日々仕事をこなしている。
けれど、トーマが未だに卒業できずにいるのは、学力が追いついていないというわけではなく、単なるサボり癖のせいで必要な評価がもらえていないというだけだった。
もう充分に卒業できるだけの力が備わっているというのに、トーマは卒業する気がないのか過分に講義をサボっていた。
「そう言わないの。今回はレイナが無理言って来てもらったんだから」
「は?」
何でわざわざ、そんな迷惑なことをと思ったけれど口には出さずにカイトはレイナの言葉を待った。
「久しぶりにさ、4人で会いたくなっちゃって」
それは、覚悟を持った声だった。
「受講生してたときはさ、よく4人でご飯食べたりしてたけどさ、今じゃカイトはこの部屋に籠りきりだし、ロムだってこれから仕事が忙しくなるでしょ? トーマとも時間が合わなくなっていくだろうし。レイナも……会えなくなるかもしれないからさ……」
最後の言葉は小さくて、トーマにも、ロムにも、聞き取ることができなかった。
けれど、カイトにだけは届いていた。
それはまるで、死を覚悟して最期の思い出をつくりたいと言っているようにも聞こえた。
「ふざけるなよ!!」
気が付けばカイトは声をあげていた。
どんなに機嫌が悪くても、言葉が乱暴になっても、ここまで大声をあげることは今までなかった。
思いもよらないカイトの様子に、トーマとロムは当然驚いた。
けれど、レイナだけは予想していたのか驚いた様子を見せなかった。
「俺はまだ諦めてない!! 勝手に決めんじゃねえ!!」
瞳を赤くするカイトに、トーマもロムもただ驚くことしかできなかった。
どうしてカイトがここまで感情を昂らせているのかわからなかった。
「出て行け!! 研究の邪魔だ!!」
「おいおい、そんな言い方」
レイナをかばうように声を発したトーマだったけれど、カイトはそれをも跳ねのけた。
「うるさい!! 時間がないんだ!! お前らに構ってる暇なんかねぇんだよ!! さっさと帰れ!!」
激高した激昂したカイトに、誰も反論することができなかった。
「悪かったよ……。邪魔してごめん」
俯いたトーマはポツリと呟き、部屋を出た。
「私も、戻るよ。ごめん」
ロムも俯き、部屋を出た。
「ごめんね……」
トーマとロムもを誘って連れて来たのはレイナだった。
レイナのワガママで無理を言って来てもらったのに、嫌な思いをさせてしまったとレイナは思う。
レイナは決めていた。
もう、決めてしまったから、どうしても最期に会っておきたかった。
最初で最後の、一生に一度の、レイナと言う人間の人生に大きく関わってくれた友人たちに。
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