【完結】EACH-アイラが愛した世界-

桐生千種

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03 変わる世界

07 余波

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 夜。
 アイラは目を覚ました。

 それはとても珍しいことで、今までにそんなことは1度だってなかった。

 それにここのところ、アイラは能力的な部分でやや不安定で少なからず消耗しているはずだった。

 だから、夜中だというのに目を覚ましてしまったアイラに、誰もが驚いていた。

「悪い、うるさかったか?」

 カイトが、アイラに近づいてそう言った。

 違和感のある光景だった。

 今は、たしかに夜のはずだった。

 それなのに、小さな灯りが点されてリンも、カイトも、レイナも、起きていたようだった。

「ううん。目が覚めちゃっただけ」

 アイラは言って、ふとカイトが歩いて来た方を見た。

 レイナのベッドにレイナがいて、リンがレイナを診ているようだった。

「レイナ、どうかしたの?」

「何でもない……ちょっと、頭が痛かっただけ」

 アイラに背を向けたまま、レイナは答えた。

「リンに薬を貰ったから、大丈夫。もう寝る」

 そう言って、布団の中に潜り込んでいくレイナにアイラは何か声をかけようとしたけれど、それはカイトに止められた。

 唇に人差し指を当てて、何も言うなと言うようにアイラを静止した。

「寝かせてやろう」

 その言葉に、アイラは頷くしかなかった。

 カイトがそう言うのなら、レイナはきっとすごくつらいのだろうと。
 寝かせてあげるのが、唯一アイラにできることなのだろう、と。

「アイラも寝な。まだ夜中だよ。それに、身体もまだ疲れてる」

 カイトはリンがするように、四角いボード触っていた。
 それが、アイラやカイトやレイナの体調を記録したり、シノと連絡をとったりする機械だということをアイラは知っていた。

「うん……」

 アイラには持たせてもらえない機械を持って、どこかリンのように振る舞うカイトにアイラは少し寂しく感じた。
 昔とは違う、変わってしまったように思えた。

 アイラ1人を取り残して、世界が変わっていく。

 そんな気がした。

「どうした?」

 そんなアイラの様子に目敏く気づいたカイトは、ボードから視線を上げた。

「……カイト、リンみたい」

 少し悩んでから、アイラは言った。

 別段それが不満だと言うわけではなかったけれど、なんとなく不安だった。

「……え」

 けれど、カイトには予想外の言葉だったようで、言葉を詰まらせた。

「……俺、そんな老けてる?」

「ふけてる?」

「あ、いや、何でもない……」

 「老けてる」その言葉がアイラには通じなかったけれど、その意味をカイト自らが説明するのはカイト自身の精神的なダメージが大きそうだった。

 アイラは、ひどく困惑している様子のカイトを見てもう「リンみたい」と言わないと決めた。

 カイトとレイナが話している中、レイナは1人ベッドの中で2人の話を聞いていた。

 2人の方を見ないように。
 その瞳をアイラに見せないように。

 頭が痛いなんて嘘だった。

 レイナの瞳は、赤く赤く輝きを放っていた。
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