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03 変わる世界
02 長年の計画
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リンは珍しくシノのもとを訪れていた。
普段であればシノに用事があるときはリンは手持ちの通信端末を使用して、それで足りないときはシノがリンのところまで足を運んでいた。
それは、リンがいない間にアイラに何かあっては困るからと、なるべくリンがアイラの傍を離れないようにするためだった。
けれど今は夜。
アイラは眠っていて、傍にはカイトとレイナもついている。
カイトもレイナもとっくに教育プログラムを修了させた信頼できる大人だった。
本来であれば、育った部屋を出て、自立した生活を送っているべき2人だったけれど、2人にはアイラがいた。
アイラの精神的負担を考慮すると、急に引き離すことはできなかった。
それに、カイトもレイナもアイラと共にいることを望んでいた。
だから、教育プログラムを修了し、15歳を迎え、一般的にひとり立ちをしてもおかしくない状況になっても、カイトもレイナも育った部屋を出ることはしていなかった。
そのおかげで、リンはこうしてシノに会いに来ることができていた。
「珍しいね、キミがこっちに来るなんて。彼女に会いに来たの?」
そういうシノは、今日も眠る彼女のもとを訪れていた。
この場所であれば、シノとリン以外、誰も来ない。
リンにとってはその方が都合がよかった。
「わかっているんだろう……?」
リンがシノに会いに来た理由。
シノは知っているはずだった。
シノは、笑った。
「おかしなことを言うね」
そう言うシノは、いつの頃からか見せ始めた穏やかな笑みを浮かべていた。
「それなら、僕の答えもわかっているはずだよ」
たしかに。
リンがシノのもとを訪れた理由も、それに対するシノの答えも、互いにすべてをわかっていた。
行きつく答えは、決まっていた。
それでも、会いたいと思ってしまったのは、会えば何かが変わるかもしれないと思ったから。
それとも、背中を押してほしいと、手を引いてほしいと思ったからかもしれない。
「今更、アイラだけを特別扱いするわけにはいかない。それなら、今まで犠牲にしてきた子たちはなんのために生まれて、死んでいったのかわからないでしょう?」
「……そうだね」
答えは変わらない。
今まで、リンがほんの少しの間だけ同じ時間を過してきた幼い少女たちのことを想う。
彼女たちは確かに生きて、価値あるデータを残して、そして死んでいった。
そしてアイラが生まれた。
彼女たちの記録をもとに、15歳まで生きることができたアイラ。
それだけでなく、今目の前で眠る彼女と同じだけの能力を持つ可能性があるアイラ。
ネオが生み出されて最初の世代の彼女は、強すぎる能力とヒトに近い肉体が共存し続けている奇跡の存在だった。
彼女と同じ世代の子供たちは、生まれて間もなく亡くなっていた。
そんな奇跡の存在を、シノは意図的につくり出した。
多くの犠牲を払って。
それはすべて、彼女のため。
コンピューターに囚われている彼女を救い出すために、彼女の代わりとする存在をつくりだす。
シノはそれを実現しようとしていた。
もしも、このまま、アイラの持つ能力が、完全に彼女と並んだなら。
シノの長年の計画が実現に向い、もしもアイラの身体が耐えられないというのなら――シノは次を用意するだけだ。
「久しぶりに顔を見れて良かったよ」
「そう」
2人はもう、戻れないところまで来ていた。
普段であればシノに用事があるときはリンは手持ちの通信端末を使用して、それで足りないときはシノがリンのところまで足を運んでいた。
それは、リンがいない間にアイラに何かあっては困るからと、なるべくリンがアイラの傍を離れないようにするためだった。
けれど今は夜。
アイラは眠っていて、傍にはカイトとレイナもついている。
カイトもレイナもとっくに教育プログラムを修了させた信頼できる大人だった。
本来であれば、育った部屋を出て、自立した生活を送っているべき2人だったけれど、2人にはアイラがいた。
アイラの精神的負担を考慮すると、急に引き離すことはできなかった。
それに、カイトもレイナもアイラと共にいることを望んでいた。
だから、教育プログラムを修了し、15歳を迎え、一般的にひとり立ちをしてもおかしくない状況になっても、カイトもレイナも育った部屋を出ることはしていなかった。
そのおかげで、リンはこうしてシノに会いに来ることができていた。
「珍しいね、キミがこっちに来るなんて。彼女に会いに来たの?」
そういうシノは、今日も眠る彼女のもとを訪れていた。
この場所であれば、シノとリン以外、誰も来ない。
リンにとってはその方が都合がよかった。
「わかっているんだろう……?」
リンがシノに会いに来た理由。
シノは知っているはずだった。
シノは、笑った。
「おかしなことを言うね」
そう言うシノは、いつの頃からか見せ始めた穏やかな笑みを浮かべていた。
「それなら、僕の答えもわかっているはずだよ」
たしかに。
リンがシノのもとを訪れた理由も、それに対するシノの答えも、互いにすべてをわかっていた。
行きつく答えは、決まっていた。
それでも、会いたいと思ってしまったのは、会えば何かが変わるかもしれないと思ったから。
それとも、背中を押してほしいと、手を引いてほしいと思ったからかもしれない。
「今更、アイラだけを特別扱いするわけにはいかない。それなら、今まで犠牲にしてきた子たちはなんのために生まれて、死んでいったのかわからないでしょう?」
「……そうだね」
答えは変わらない。
今まで、リンがほんの少しの間だけ同じ時間を過してきた幼い少女たちのことを想う。
彼女たちは確かに生きて、価値あるデータを残して、そして死んでいった。
そしてアイラが生まれた。
彼女たちの記録をもとに、15歳まで生きることができたアイラ。
それだけでなく、今目の前で眠る彼女と同じだけの能力を持つ可能性があるアイラ。
ネオが生み出されて最初の世代の彼女は、強すぎる能力とヒトに近い肉体が共存し続けている奇跡の存在だった。
彼女と同じ世代の子供たちは、生まれて間もなく亡くなっていた。
そんな奇跡の存在を、シノは意図的につくり出した。
多くの犠牲を払って。
それはすべて、彼女のため。
コンピューターに囚われている彼女を救い出すために、彼女の代わりとする存在をつくりだす。
シノはそれを実現しようとしていた。
もしも、このまま、アイラの持つ能力が、完全に彼女と並んだなら。
シノの長年の計画が実現に向い、もしもアイラの身体が耐えられないというのなら――シノは次を用意するだけだ。
「久しぶりに顔を見れて良かったよ」
「そう」
2人はもう、戻れないところまで来ていた。
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