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02 広がる世界
02 15歳
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アイラは読んでいた絵本から顔を上げた。
アイラはすでに15歳。
15歳になって絵本というのは子供っぽいと思わなくもないけれど、せっかく与えられたのだから1度くらい目を通さないと絵本がかわいそうだ。
なにより、15歳になっても部屋から1歩たりとも足を踏み出したことのアイラにとって新しい絵本は1番新鮮さを感じられる暇つぶしだった。
「ねえ、リン」
「何だい?」
アイラはリンを見上げて聞く。
15歳になって、アイラは身長が伸びたけれど、リンはちっとも変わっていない。
「リンは、アイラのこと気味悪いって思う?」
不思議な力を持つ女の子を気味悪がる大人たち。
絵本の中の女の子は、不思議な力を持っていて、他の誰にもできないことができて、それを大人たちに気味悪いと思われていた。
アイラと似ていると思った。
アイラにも、力のようなものがあった。
他の誰にも、リンにも、カイトにも、レイナにも、シノにもできないことができていた。
だから、女の子の姿をどこか自分と重ねていた。
挿絵の女の子がアイラと同じ白い髪をしていたからかもしれない。
「思わないよ?」
リンはアイラを安心させようと笑ってみせた。
「どうしたの?」
リンは急にそんなことを言い出したアイラに尋ねる。
これまで、そんなことは言われたことはなかったし、リン自身そんなそぶりを見せたつもりもなかった。
「絵本に、書いてあったから」
そうアイラに言われ、覗き込んだ絵本のページにはたしかに『大人達は気味悪がりました』と書かれていた。
力のある少女を、自分たちにはできないことをしてしまう少女を、気味悪いという大人たち。
「能力があってもなくても、アイラはアイラだからね。僕は、アイラが好きだよ?」
「そっか」
安心したのか、ほっと笑みをこぼすアイラに、リンも安堵した。
自分の行動が原因でアイラを追い詰めるようなことをしていなくてよかったと。
「アイラ、ちょっとその絵本見せてくれる?」
「? いいよ?」
快く絵本を差し出してくれるアイラから受け取り、リンは内容を確認する。
能力の有無で差別するような表現は規制がかけられているはずだった。
つまり、子供用の絵本としてアイラの手元に来るのは些か不審だった。
シノがそんなものを渡してくるとも思えないけれど……。
パラパラと、絵本のページをめくっていくリンの様子を、アイラはじっと見ていた。
「うーん……」
一通り目を通したリンは、少し悩んでからアイラに絵本を返した。
「ありがとう。アイラも15歳だからね。これくらいの表現なら大丈夫だね」
「? どういうこと?」
首をかしげるアイラにリンは言葉を探す。
「ちょっとだけ大人の絵本、かな」
「大人!」
慣れない響きに、アイラの瞳が輝いた。
今までアイラはどことなく子供扱いをされている気がしていたから。
外に学びに行くカイトやレイナの方が、ずっと大人に思えていた。
「それじゃあ、アイラもお外でお勉強できる?」
「それはちょっと、難しいな……。ごめんね」
「そっかあ……」
輝いた瞳が、急激にしょんぼりとしてしまったけれど、それでもアイラは嬉しかった。
ちょっとだけ、大人と認めてもらえた気がした。
アイラはすでに15歳。
15歳になって絵本というのは子供っぽいと思わなくもないけれど、せっかく与えられたのだから1度くらい目を通さないと絵本がかわいそうだ。
なにより、15歳になっても部屋から1歩たりとも足を踏み出したことのアイラにとって新しい絵本は1番新鮮さを感じられる暇つぶしだった。
「ねえ、リン」
「何だい?」
アイラはリンを見上げて聞く。
15歳になって、アイラは身長が伸びたけれど、リンはちっとも変わっていない。
「リンは、アイラのこと気味悪いって思う?」
不思議な力を持つ女の子を気味悪がる大人たち。
絵本の中の女の子は、不思議な力を持っていて、他の誰にもできないことができて、それを大人たちに気味悪いと思われていた。
アイラと似ていると思った。
アイラにも、力のようなものがあった。
他の誰にも、リンにも、カイトにも、レイナにも、シノにもできないことができていた。
だから、女の子の姿をどこか自分と重ねていた。
挿絵の女の子がアイラと同じ白い髪をしていたからかもしれない。
「思わないよ?」
リンはアイラを安心させようと笑ってみせた。
「どうしたの?」
リンは急にそんなことを言い出したアイラに尋ねる。
これまで、そんなことは言われたことはなかったし、リン自身そんなそぶりを見せたつもりもなかった。
「絵本に、書いてあったから」
そうアイラに言われ、覗き込んだ絵本のページにはたしかに『大人達は気味悪がりました』と書かれていた。
力のある少女を、自分たちにはできないことをしてしまう少女を、気味悪いという大人たち。
「能力があってもなくても、アイラはアイラだからね。僕は、アイラが好きだよ?」
「そっか」
安心したのか、ほっと笑みをこぼすアイラに、リンも安堵した。
自分の行動が原因でアイラを追い詰めるようなことをしていなくてよかったと。
「アイラ、ちょっとその絵本見せてくれる?」
「? いいよ?」
快く絵本を差し出してくれるアイラから受け取り、リンは内容を確認する。
能力の有無で差別するような表現は規制がかけられているはずだった。
つまり、子供用の絵本としてアイラの手元に来るのは些か不審だった。
シノがそんなものを渡してくるとも思えないけれど……。
パラパラと、絵本のページをめくっていくリンの様子を、アイラはじっと見ていた。
「うーん……」
一通り目を通したリンは、少し悩んでからアイラに絵本を返した。
「ありがとう。アイラも15歳だからね。これくらいの表現なら大丈夫だね」
「? どういうこと?」
首をかしげるアイラにリンは言葉を探す。
「ちょっとだけ大人の絵本、かな」
「大人!」
慣れない響きに、アイラの瞳が輝いた。
今までアイラはどことなく子供扱いをされている気がしていたから。
外に学びに行くカイトやレイナの方が、ずっと大人に思えていた。
「それじゃあ、アイラもお外でお勉強できる?」
「それはちょっと、難しいな……。ごめんね」
「そっかあ……」
輝いた瞳が、急激にしょんぼりとしてしまったけれど、それでもアイラは嬉しかった。
ちょっとだけ、大人と認めてもらえた気がした。
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