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01 小さな世界

10 レイナ(02)

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 半ば強制的にプールを出ることになったレイナは、予定よりも1年早くアイラたちの同居人ロジャーとして迎えられることになった。

 ――っ……!!

 目を覚まして、初めて瞳に映った存在にレイナの心臓は異常な数値を叩き出すくらいに跳ね上がった。

 真っ黒な髪。
 色こそ黒かったけれど、じっと見つめるその瞳は同じだった。

 レイナの存在を消そうとしたその人と、同じ顔。
 同じ瞳。

 ドクドクと心臓が鼓動した。
 呼吸が浅くなっていく。

「2人共、レイナから離れて!」

 慌てたように、リンが言った。

「大丈夫、大丈夫、ここは安全だよ。大丈夫、大丈夫」

 ぎゅっと抱きしめられて、レイナの視界を遮るように塞がれて、真っ暗な闇の中で必死に声を探していた。

 いつも幸せな気持ちにしてくれた、アイラの声。
 アイラの声を聞けたら、安心できる気がした。

 けれど、アイラの声は探しても探しても見つからなかった。

 「大丈夫」と宥めるリンの声も、レイナの心を落ち着かせてはくれなかった。

「レイナ、こわい……?」

 求めていた声が、ようやく聞こえた。
 それは、いつものような心に届くような声ではなくて、すぐ近くからレイナの鼓膜を震わせた。

 そうっと、リンの腕の中から顔を覗かせると、真っ白な女の子がレイナの真っ赤な瞳に映った。

 真っ白な長い髪。
 真っ赤な瞳が不安げに揺れ動く。

「大丈夫だよ。リンもカイトも優しいよ」

 初めて目にする子だけれど、その声をレイナは知っていた。

 この子が、ずっとレイナに声を届けてくれていたのだと、幸せな気持ちを与えてくれていたのだとすぐにわかった。

 そうっと、手を伸ばすと、アイラはレイナの手をとった。

「レイナがこわいなら、アイラがずっと一緒にいるよ。アイラがレイナを守るよ。だから、お願い。いなくならないで」

 やっと会えた。

 レイナの心が、幸福に満たされるのを感じた。

 緩やかに、レイナの瞳の色が変化していく。

 赤色から茶色へと。

「レイナ、目が……」

「……」

 言葉はなかったけれど、レイナは笑った。
 そして、静かに瞼を閉じていく。

「レイナ……?」

 すーすーと、穏やかな寝息を立てるレイナに、アイラは助けを求めるようにリンを見た。

「大丈夫。疲れちゃったんだね」

 そっと、リンはレイナをベッドへと寝かせ直した。

「レイナの身体には眠ることが必要なんだ。アイラやカイトよりもずっとね。だから、邪魔しちゃいけないよ」

「……ごめんなさい」

 興味本位で近づいてしまったから、レイナが眠るのを邪魔してしまったと、怖がらせてしまったのだとアイラは落ち込んだ。

 けれど、レイナの方は心から望んでいたアイラに会うことができて、幸福の中で眠ることができていた。

 いつか共に過ごす日を夢見て――
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