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高等部
入学式
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高校の入学式は、始業式と同じ日。けれど、入学式に参加するのは新入生と生徒会などの係の生徒、吹奏楽部、教師、保護者。その他の在校生は、午前の始業式を終えれば1部の部活動に所属する生徒以外は帰宅となる。つまり、小春の入学式に参加とまではいかなくとも小春の出待ち、一緒に下校も可能だ。
入学式が終るのは、大体14時前後。その時間を見計らって、僕は小春がいる女子校へと向かう。
「演劇部でーすっ! ビラだけでももらっていってねーっ!」
目的地であるはずの、女子校の敷地内から聞き覚えのある――男の声が聞こえてきた。
「真華ちゃーんっ! 全部配っちゃったっ!」
どこか懐かしさを覚えなくもないその声は、幼等部から初等部まで同じ学校へ通い、ときには同じ教室で授業を受けた、元クラスメイト――姫宮悠のもの。
中等部へは進学せず、付属の月ノ男子校へと進学してからはやや疎遠になったものの同じ通学路を使う上でその姿を見ることも、その声を聞くことも、その噂を聞くことも多分にある。
最近、女子校内に無断で出入りしていると聞いたけれど、真実だった。
「真華ちゃんまだ残ってるね、僕が手伝ってあげるっ!」
何を考えているのか、悠は演劇部の部員勧誘のためのビラ配りを手伝っているらしい。
まあ、でも、それだけなら僕は悠を咎めたりはしない。興味がない。
けれど、その悠が小春に近づくというのなら話は別だ。
「あ、小春ちゃーん! 演劇部をどうぞよろしくっ! ……あれ?」
「……何、してるの」
僕は、悠が小春に渡そうとしたビラを横から抜き取り、悠を見る。
「マナ君、久し振りっ! 演劇部に興味があるの? でもダメだよ。ここは女子校だから。マナ君は月ノの演劇部に入らなきゃ。僕もできれば真華ちゃんと同じ部活に入りたいけどね」
「キミと一緒にしないでくれる?」
思わず、取り上げたビラを握りつぶしてしまった。
「そこの男子諸君、言い争うのなら敷地の外でやってくれたまえ。そもそもここは桜ノ女子高等学校の敷地内であって、部外者であるキミたちは立ち入り禁止のはずなんだが」
個性的を通り越して、芝居がかったような喋り方をするこの人物にも心当たりがある。幼等部で一緒だった八王子真華。
「騒がせて悪かったね。気を悪くしていなければ、これをもらっていってはくれないだろうか」
小春の前に立つ真華は、一体何を演じているのか、それとも素であれなのか、それを知るには僕たちは時間という距離をあけすぎている。
「マナ君、あとで門まで行くね」
真華からビラを受け取った小春は、僕にひと言そう残して校舎へと向かって行った。
その姿に僕は胸の内で歓喜する。
入学式が終るのは、大体14時前後。その時間を見計らって、僕は小春がいる女子校へと向かう。
「演劇部でーすっ! ビラだけでももらっていってねーっ!」
目的地であるはずの、女子校の敷地内から聞き覚えのある――男の声が聞こえてきた。
「真華ちゃーんっ! 全部配っちゃったっ!」
どこか懐かしさを覚えなくもないその声は、幼等部から初等部まで同じ学校へ通い、ときには同じ教室で授業を受けた、元クラスメイト――姫宮悠のもの。
中等部へは進学せず、付属の月ノ男子校へと進学してからはやや疎遠になったものの同じ通学路を使う上でその姿を見ることも、その声を聞くことも、その噂を聞くことも多分にある。
最近、女子校内に無断で出入りしていると聞いたけれど、真実だった。
「真華ちゃんまだ残ってるね、僕が手伝ってあげるっ!」
何を考えているのか、悠は演劇部の部員勧誘のためのビラ配りを手伝っているらしい。
まあ、でも、それだけなら僕は悠を咎めたりはしない。興味がない。
けれど、その悠が小春に近づくというのなら話は別だ。
「あ、小春ちゃーん! 演劇部をどうぞよろしくっ! ……あれ?」
「……何、してるの」
僕は、悠が小春に渡そうとしたビラを横から抜き取り、悠を見る。
「マナ君、久し振りっ! 演劇部に興味があるの? でもダメだよ。ここは女子校だから。マナ君は月ノの演劇部に入らなきゃ。僕もできれば真華ちゃんと同じ部活に入りたいけどね」
「キミと一緒にしないでくれる?」
思わず、取り上げたビラを握りつぶしてしまった。
「そこの男子諸君、言い争うのなら敷地の外でやってくれたまえ。そもそもここは桜ノ女子高等学校の敷地内であって、部外者であるキミたちは立ち入り禁止のはずなんだが」
個性的を通り越して、芝居がかったような喋り方をするこの人物にも心当たりがある。幼等部で一緒だった八王子真華。
「騒がせて悪かったね。気を悪くしていなければ、これをもらっていってはくれないだろうか」
小春の前に立つ真華は、一体何を演じているのか、それとも素であれなのか、それを知るには僕たちは時間という距離をあけすぎている。
「マナ君、あとで門まで行くね」
真華からビラを受け取った小春は、僕にひと言そう残して校舎へと向かって行った。
その姿に僕は胸の内で歓喜する。
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