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中等部
卒業式
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小春の中学校の卒業式。いつものように、僕は小春に贈り物を用意する。入学式と卒業式と誕生日は、小春にプレゼントを贈れる日。高校生になる小春には、ペンダントを。アクセサリーは独占欲の現れだと、誰かが言っていた。僕のものだと牽制できるならいくつだって贈りたい。
「卒業、おめでとう」
「ありがとう」
小春にとっては、怒涛の3年間だっただろう。
スカイアクアとしてデビューしたのが小6。中学1年から3年まで、すべてにスカイアクアとしての活動が詰まっている。その傍ら、声優としての勉強もして、仕事もこなして、時には雑誌の撮影、テレビの収録、合間を縫って学業もおろそかにしない。
小春の成績が優秀なのは、僕が1番よく知っている。ときどき、数学を教えてほしいと聞いてくれる小春に歓喜した。その立場を失わないために、僕も学業ではトップを走り続けた。特に数学は、小春が苦手な分、小春に教えられる機会が多いから数学だけは学年の誰にも負けないように勉強した。
小春と違って、僕にはスカイアクアの仕事以外することがなかったのも理由のひとつ。
小春が家で自主練習をしている間も、僕は学業に専念できた。
これからも、それは変えられない。小春にほんの少しでも近づけるのなら、本当は苦手な数学だって誰よりも理解してみせる。
「高校生になっても」
小春が言った。
「よろしくお願いします」
驚いた。
今までは、「もう送り迎えはいい」とそんな小春の言葉を遮って、どうにかしてその立場を守り続けることに必死だった。
でも、今日の小春は「高校生になってもよろしく」とそう言ってくれている。
「僕の方こそ、よろしく、ね」
ほんの少しだけど、歩み寄れていると思ってもいいのだろうか。
小春が、許してくれていると。
「マナ君が大学生になったら、一緒に登下校は難しくなるよね。1年生の間にたくさん思い出作っておこう」
無邪気に笑う小春に、現実を突きつけられた。
進学は、今までの学校と同系列の桜月学園大学と決めた。けれど、今までと違って大学だけは幼等部から高等部、付属の男子校、女子校がある地域とはほんの少し離れた場所に位置している。
学園祭での行き来は、地域住民の協力もあって1本道が学園祭の1部のようになっていてしやすいけれど、普段となれば話は別。
少し距離のある大学へ行くのに、早く出る必要がある。小春を無意味に登校させるわけにはいかない。講義の時間によっても家を出る時間は変わる。
そんな現実を、僕は忘れていた。
大学生になって、小春と一緒に通えるようになるとしても、それまでに2年もの期間が空いてしまう。
――進学、辞めようか……。
本気でそんなことを考えてしまった。
大学には行くつもりだけど、小春と離れている時間が増えるのは耐え難い……。
「卒業、おめでとう」
「ありがとう」
小春にとっては、怒涛の3年間だっただろう。
スカイアクアとしてデビューしたのが小6。中学1年から3年まで、すべてにスカイアクアとしての活動が詰まっている。その傍ら、声優としての勉強もして、仕事もこなして、時には雑誌の撮影、テレビの収録、合間を縫って学業もおろそかにしない。
小春の成績が優秀なのは、僕が1番よく知っている。ときどき、数学を教えてほしいと聞いてくれる小春に歓喜した。その立場を失わないために、僕も学業ではトップを走り続けた。特に数学は、小春が苦手な分、小春に教えられる機会が多いから数学だけは学年の誰にも負けないように勉強した。
小春と違って、僕にはスカイアクアの仕事以外することがなかったのも理由のひとつ。
小春が家で自主練習をしている間も、僕は学業に専念できた。
これからも、それは変えられない。小春にほんの少しでも近づけるのなら、本当は苦手な数学だって誰よりも理解してみせる。
「高校生になっても」
小春が言った。
「よろしくお願いします」
驚いた。
今までは、「もう送り迎えはいい」とそんな小春の言葉を遮って、どうにかしてその立場を守り続けることに必死だった。
でも、今日の小春は「高校生になってもよろしく」とそう言ってくれている。
「僕の方こそ、よろしく、ね」
ほんの少しだけど、歩み寄れていると思ってもいいのだろうか。
小春が、許してくれていると。
「マナ君が大学生になったら、一緒に登下校は難しくなるよね。1年生の間にたくさん思い出作っておこう」
無邪気に笑う小春に、現実を突きつけられた。
進学は、今までの学校と同系列の桜月学園大学と決めた。けれど、今までと違って大学だけは幼等部から高等部、付属の男子校、女子校がある地域とはほんの少し離れた場所に位置している。
学園祭での行き来は、地域住民の協力もあって1本道が学園祭の1部のようになっていてしやすいけれど、普段となれば話は別。
少し距離のある大学へ行くのに、早く出る必要がある。小春を無意味に登校させるわけにはいかない。講義の時間によっても家を出る時間は変わる。
そんな現実を、僕は忘れていた。
大学生になって、小春と一緒に通えるようになるとしても、それまでに2年もの期間が空いてしまう。
――進学、辞めようか……。
本気でそんなことを考えてしまった。
大学には行くつもりだけど、小春と離れている時間が増えるのは耐え難い……。
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