6 / 6
5.エピローグ
しおりを挟む
密室の空間。
幾人かが集まってマイクを前に話す。
「ネコのニィ役、市原イットです」
ドラマ本編後のキャストトーク。
俺は、声の役者――市原イットとして役を得て活動できるようになっていた。
声だけなら、背が低くても、体格がしっかりしていなくても関係ない。
その役にあった芝居ができるか。
ただそれだけの勝負。
「お疲れ様でしたー」
スタジオを出て、次の現場に向かう。
1日に数か所の現場を梯子して、複数の役を演じる。
芝居ができる。
それは、俺にとって充実した日々だった。
あの日、公園で見かけた名前も知らないあの子が、俺に思い出させてくれた。
ふと、歌が聞こえた。
街中のモニターの中。
聞いたことのある歌声は、俺の知らない歌を歌っていた。
けど。
画面の中で歌うその子は、たしかにあの日の公園で見かけた子だった。
ベンチに座ってどこか寂しそうに歌っていたあの子は、画面の中で楽しそうに歌っていた。
――良かったじゃん。
あの子にとって、歌が寂しいものにならなくて。
楽しいものになっていて良かったなんて、柄にもなくそう思った。
*** 市原一斗は芝居がしたい 終 ***
幾人かが集まってマイクを前に話す。
「ネコのニィ役、市原イットです」
ドラマ本編後のキャストトーク。
俺は、声の役者――市原イットとして役を得て活動できるようになっていた。
声だけなら、背が低くても、体格がしっかりしていなくても関係ない。
その役にあった芝居ができるか。
ただそれだけの勝負。
「お疲れ様でしたー」
スタジオを出て、次の現場に向かう。
1日に数か所の現場を梯子して、複数の役を演じる。
芝居ができる。
それは、俺にとって充実した日々だった。
あの日、公園で見かけた名前も知らないあの子が、俺に思い出させてくれた。
ふと、歌が聞こえた。
街中のモニターの中。
聞いたことのある歌声は、俺の知らない歌を歌っていた。
けど。
画面の中で歌うその子は、たしかにあの日の公園で見かけた子だった。
ベンチに座ってどこか寂しそうに歌っていたあの子は、画面の中で楽しそうに歌っていた。
――良かったじゃん。
あの子にとって、歌が寂しいものにならなくて。
楽しいものになっていて良かったなんて、柄にもなくそう思った。
*** 市原一斗は芝居がしたい 終 ***
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
徹夜でレポート間に合わせて寝落ちしたら……
紫藤百零
大衆娯楽
トイレに間に合いませんでしたorz
徹夜で書き上げたレポートを提出し、そのまま眠りについた澪理。目覚めた時には尿意が限界ギリギリに。少しでも動けば漏らしてしまう大ピンチ!
望む場所はすぐ側なのになかなか辿り着けないジレンマ。
刻一刻と高まる尿意と戦う澪理の結末はいかに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる