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06 過去から今 そして未来へ
03
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不意に、部屋の扉が開かれた。
見慣れた天井から、押し寄せる人の気配に視線を巡らせる。
いるはずのない美咲の姿を探して、けれど美咲はそこにはいない。
いるはずがない。
もう6年も経つのに、この癖はなかなか止められそうにない。
「起きなさい、AI」
しわがれた声が、私に命令する。
起きろ、と。
もう、私を「アイ」と呼んでくれる人はいない。
私を取り囲む大人たちは、私という生物を観察する人たち。
美咲のように、私を同じ人間の子供として見てくれることも、接してくれることもない。
私はこの時間が1番嫌い。
大人たちの心が入り乱れる。
言葉と心が一致していない。
過去と未来と現在が、人の数だけ交差する。
――クソッ、何で何もできねぇんだよッ――
その中で視えた、それは過去か未来か。
もしくは日常なのかもしれない。
私ではない小さな子が、私よりも小さな子たちが、大人に暴力を振るわれている。
その子たちは、私と同じく、大人たちがつくりだした子供で、ネオで、ただ、大人たちが認めるネオとしての能力を発現していないだけ。
たったそれだけ。
能力が発現していないというだけで、彼らはすでにその一生を終えようとしている。
生きることを辞めようとしている。
それはあまりにも、悲しいことじゃないかと、私は思ってしまった。
美咲が教えてくれた外の世界は、とてもあたたかい世界だったから。
私は未だに外の世界には行けていないけれど、あたたかな世界を視ることもできていないけれど、それでも……。
美咲が教えてくれた世界を、私は信じたい。
ネオである私には、もうできないことかもしれないけれど、人間の仲間として生きられる可能性がある彼らなら、あるいは――
見慣れた天井から、押し寄せる人の気配に視線を巡らせる。
いるはずのない美咲の姿を探して、けれど美咲はそこにはいない。
いるはずがない。
もう6年も経つのに、この癖はなかなか止められそうにない。
「起きなさい、AI」
しわがれた声が、私に命令する。
起きろ、と。
もう、私を「アイ」と呼んでくれる人はいない。
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美咲のように、私を同じ人間の子供として見てくれることも、接してくれることもない。
私はこの時間が1番嫌い。
大人たちの心が入り乱れる。
言葉と心が一致していない。
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――クソッ、何で何もできねぇんだよッ――
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