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06 過去から今 そして未来へ
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*****
「アイ!? ねえ、アイ!? どうしたの!?」
懐かしい声が聞こえる。
もう2度と聞くことはできない人の――美咲の声。
これは夢だ。
『あの日』から、幾度となく見た、夢の中の現実。
決して、やり直すことのできない、過去。
「ねえ!! アイ!!」
「やああああああああ!!」
美咲の声を、拒絶すように私は叫んだ。
小さな、幼い日の、私。
どうしてあのとき、美咲の声だとわからなかったのだろう。
どうしてあのとき、美咲の手だと気づけなかったのだろう。
どうして、あのときだったのだろう。
私の能力の発現の瞬間は、恐怖と共に訪れた。
あのとき夢に見ていた大人たちのように、美咲は動かなくなった。
血を吐いて、白い私を赤く染める。
けれど私はそれにも気づかずにただ叫び続けた。
バタバタと騒がしく駆け付けた大人たちにも私は気づかず、ただ叫んで、そして、殺した。
そうしたかったわけじゃない。
けれど、どうすることもできなかった。
不意に発現してしまった自分の能力を、どう扱えばいいかわからなかった。
何が起こるのか、わからなかった。
何を引き起こしているのか、わからなかった。
蛍光灯は割れた。
割れたガラス片が、そこら中に飛び散って、飛び回った。
小さな子供の私に近づいた、何人もの大きな大人が、その身体を壊して動かなくなった。
広がる血だまり。
転がる遺体。
その中で、夢を見る私が目を奪われ続けるのは、たったひとり。
いつまでもその姿を消すことなく。
いつまでも、動くことのない。
美咲。
たった、ひとり。
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「アイ!? ねえ、アイ!? どうしたの!?」
懐かしい声が聞こえる。
もう2度と聞くことはできない人の――美咲の声。
これは夢だ。
『あの日』から、幾度となく見た、夢の中の現実。
決して、やり直すことのできない、過去。
「ねえ!! アイ!!」
「やああああああああ!!」
美咲の声を、拒絶すように私は叫んだ。
小さな、幼い日の、私。
どうしてあのとき、美咲の声だとわからなかったのだろう。
どうしてあのとき、美咲の手だと気づけなかったのだろう。
どうして、あのときだったのだろう。
私の能力の発現の瞬間は、恐怖と共に訪れた。
あのとき夢に見ていた大人たちのように、美咲は動かなくなった。
血を吐いて、白い私を赤く染める。
けれど私はそれにも気づかずにただ叫び続けた。
バタバタと騒がしく駆け付けた大人たちにも私は気づかず、ただ叫んで、そして、殺した。
そうしたかったわけじゃない。
けれど、どうすることもできなかった。
不意に発現してしまった自分の能力を、どう扱えばいいかわからなかった。
何が起こるのか、わからなかった。
何を引き起こしているのか、わからなかった。
蛍光灯は割れた。
割れたガラス片が、そこら中に飛び散って、飛び回った。
小さな子供の私に近づいた、何人もの大きな大人が、その身体を壊して動かなくなった。
広がる血だまり。
転がる遺体。
その中で、夢を見る私が目を奪われ続けるのは、たったひとり。
いつまでもその姿を消すことなく。
いつまでも、動くことのない。
美咲。
たった、ひとり。
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