10 / 15
05 気がつけば ひとり
03
しおりを挟む
「――!?」
誰かの声が聞こえた。
けれど、声の主はどこにもいない。
目に見えないどこかから、聞こえている。
「――、――!?」
その声は私に向けられているもの。
不意に触れた、誰かの手。
ここがどこなのか、わからなくなる。
自分がどこにいて、何をしているのか、わからない。
空気の感じも、鉄の匂いも、向けられた感情も、現実味を帯びていて、どこからが夢なのか、どこまでが夢なのか、わからない。
「―――――!?」
夢と現実の堺を彷徨っているような、奇妙な感覚の中、うまく聞き取ることのできない声が、まとわりつくように響く。
「――!! ――!!」
――コロシテヤル――
強い感情が蘇る。
それは私が持った感情ではないけれど、まるで自分のことのような感覚。
ドクリと心臓が大きく波打つ。
押し寄せる恐怖に、抗う術が私にはない。
視界に入ってきた、大きな手。
自分の小さな手よりも、はるかに大きな大人の手が、私へと伸びていた。
「やああああああああ!!」
私は叫んでいた。
頭の中が、真っ白になった。
ただ、怖くて、押し寄せる恐怖から逃げ出したかった。
バタバタと騒がしくなる周囲の音も、私を恐怖の中から救い出してくれることはなかった。
ただ叫んで、逃げ出したくて、自分が何をしているのかわからなかった。
自分の周囲で、何が起こっているのか知ることもなく、首筋に走ったチクリとした痛みを最後に、私の意識は遠退いていった。
*****
誰かの声が聞こえた。
けれど、声の主はどこにもいない。
目に見えないどこかから、聞こえている。
「――、――!?」
その声は私に向けられているもの。
不意に触れた、誰かの手。
ここがどこなのか、わからなくなる。
自分がどこにいて、何をしているのか、わからない。
空気の感じも、鉄の匂いも、向けられた感情も、現実味を帯びていて、どこからが夢なのか、どこまでが夢なのか、わからない。
「―――――!?」
夢と現実の堺を彷徨っているような、奇妙な感覚の中、うまく聞き取ることのできない声が、まとわりつくように響く。
「――!! ――!!」
――コロシテヤル――
強い感情が蘇る。
それは私が持った感情ではないけれど、まるで自分のことのような感覚。
ドクリと心臓が大きく波打つ。
押し寄せる恐怖に、抗う術が私にはない。
視界に入ってきた、大きな手。
自分の小さな手よりも、はるかに大きな大人の手が、私へと伸びていた。
「やああああああああ!!」
私は叫んでいた。
頭の中が、真っ白になった。
ただ、怖くて、押し寄せる恐怖から逃げ出したかった。
バタバタと騒がしくなる周囲の音も、私を恐怖の中から救い出してくれることはなかった。
ただ叫んで、逃げ出したくて、自分が何をしているのかわからなかった。
自分の周囲で、何が起こっているのか知ることもなく、首筋に走ったチクリとした痛みを最後に、私の意識は遠退いていった。
*****
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。


王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる