3 / 15
02 最後の ひとり
02
しおりを挟む
――ROは、もうすぐいくよ。
声を出せないROが、私に伝えてきた心に動揺した。
私の心に直接届く、その意味がわからないはずがなかった。
キラキラと輝く光の粒。
人の形をしていたものが、細かな粒となって空気中へと広がり、そして溶けて消えていく。
それはとても綺麗な光景で、初めてそれを目にしたとき、私は無邪気に笑っていた。
けれど、1度光の粒になった子が、もう1度元の人の姿を取り戻すことはなかった。
空気に溶けたその場所に、何度手を伸ばしてみても、そこには何もなかった。
声1つ、聴くことはできない。
それが、私たちの死の姿だった。
――AI、ひとりになっちゃうね。
嫌だった。
ROが逝ってしまうことが。
ROも逝ってしまうことが。
みんな、私をおいて逝ってしまう。
いやだ。
いっしょに、つれていって。
そう願っても、ROは首を振る。
――AIは、まだ、だよ。
ROの言う意味がわからなかった。
わかりたくなかった。
まだ、一緒にいてほしかった。
ひとりにしてほしくなかった。
だけど時間は残酷で、ROが言ったように、そのときはすぐに訪れた。
やだ。
いやだ、いやだ、いやだ!
いかないで!
ひとりにしないで!
どんなに願っても、どんなに涙を流しても、そのときは待ってはくれなくて。
――さよなら、AI。
最期に見せた、ROの表情は笑っていた。
いつも見せてくれていた、緩やかな笑顔。
いつもと変わらない日常がそこにあるような、ありふれた日常の一幕であるかのような表情。
ROが見せた死の瞬間は、彼の瞳と同じ橙色のやわらかで綺麗な景色だった。
だけどこれでもう、私は本当にひとりぼっち――
声を出せないROが、私に伝えてきた心に動揺した。
私の心に直接届く、その意味がわからないはずがなかった。
キラキラと輝く光の粒。
人の形をしていたものが、細かな粒となって空気中へと広がり、そして溶けて消えていく。
それはとても綺麗な光景で、初めてそれを目にしたとき、私は無邪気に笑っていた。
けれど、1度光の粒になった子が、もう1度元の人の姿を取り戻すことはなかった。
空気に溶けたその場所に、何度手を伸ばしてみても、そこには何もなかった。
声1つ、聴くことはできない。
それが、私たちの死の姿だった。
――AI、ひとりになっちゃうね。
嫌だった。
ROが逝ってしまうことが。
ROも逝ってしまうことが。
みんな、私をおいて逝ってしまう。
いやだ。
いっしょに、つれていって。
そう願っても、ROは首を振る。
――AIは、まだ、だよ。
ROの言う意味がわからなかった。
わかりたくなかった。
まだ、一緒にいてほしかった。
ひとりにしてほしくなかった。
だけど時間は残酷で、ROが言ったように、そのときはすぐに訪れた。
やだ。
いやだ、いやだ、いやだ!
いかないで!
ひとりにしないで!
どんなに願っても、どんなに涙を流しても、そのときは待ってはくれなくて。
――さよなら、AI。
最期に見せた、ROの表情は笑っていた。
いつも見せてくれていた、緩やかな笑顔。
いつもと変わらない日常がそこにあるような、ありふれた日常の一幕であるかのような表情。
ROが見せた死の瞬間は、彼の瞳と同じ橙色のやわらかで綺麗な景色だった。
だけどこれでもう、私は本当にひとりぼっち――
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開


愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。


人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる