【完結】守り姫[完全版]

桐生千種

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4章 少女と妖精

6.村人たち

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 泉で妖精ネッサと別れた少年は、少女を村に連れて行くことにした。

 これからは、眠り続けるだけの少女ではなくなるから。

 少女は自分の意思でどこにでも自由に動いて行けるのだから、きっと村人と顔を合わせることもあるだろうと思った。

 それから、昔、少女をひどいことをした大人にちゃんと謝ってほしかった。

 当時の大人たちはみんな歳を取ってしまって、ほとんど亡くなってしまっていたけれど……。

 けれど少女は、少し困った顔をして村に入ることを拒んだ。

「ダメだよ。村の人は、きっと私を怖いと思うから」

 少女は知っていたんだ。

 村の大人たちが、少女を怖がっていたことを。

 思い返すと、少女は子供に手を差し伸べることは多かったけど、大人に近づくことは少なかった。

 少女を見かけるのはいつも村の外れの方で、中心まで来ることはなかった。

 怖がらせないようにしていたのかもしれない。

 でももう、そんなのは終わりにしようと少年は少女の手を引いた。

 そして、当時の大人に引き合わせた。

「……その子は、もしかして」

 少女の姿を見たその人は、すっかり老人になってしまっていたけれど、ちゃんと覚えていた。

 少女の身体が緊張したのが伝わってきても、少年は少女をその場から逃がさなかった。

 強く握った手のひらから、大丈夫だと伝わればいいと思った。

 もう逃げたりする必要はないと、教えたかった。

 もうこそこそと大人に気を使って生きなくていいと伝えたかった。

「すまなかった……。ほんとうに……。すまなかった……」

 その人は、少女を見るなり頭を下げた。

 あの当時、子供だった頃、とても大きくて、強くて、怖い存在だと思っていた大人が、とても小さくて、弱くて、脆い存在に少年には見えた。
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