【完結】守り姫[完全版]

桐生千種

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2章 眠り続ける少女

2.少女がいない毎日

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 永い眠りについた少女。
 はじめは朝になれば目覚めるだろう、と思っていた。

 目覚めない少女に、明日になれば、と願った。

 けれど、明日になっても、明後日になっても少女が目覚める日は来なかった。

 お姫様みたいだ。

 最初に言ったのは、誰だっただろう。

 村の誰も持つことのない真っ白な髪は、特別なものに思えた。

 眠り続ける少女の顏は、すごく綺麗。

 起きている少女の顔をじっと見つめることなんてなかったけど、眠っている少女は、おとぎ話にでてくるお姫様だと言われれば、誰もが納得すると思う。

 じゃあ、居眠り姫?
 ずっと、寝てばかりだから。

 それはひどい。
 確かに全然起きてくれないけど、居眠り姫はないだろう。

 じゃあ、何のお姫様なのさ。

 守り姫。
 僕たちを守ってくれた、守り姫だ。

 少女は、守り姫と呼ばれるようになっていった。

 大人たちはもう、少女を気味悪がることはなくなっていた。

 早く目を覚ましてほしい、謝りたいと誰もが思っていた。

 子供たちも、早く目を覚ましてありがとうと伝えたいと、少女が目覚める日を待っていた。

 目覚めない少女の他に、もう1つ不思議なことが起きていた。

 あんなに貧しかった村が、少しずつ豊かになっていったんだ。

 毎年、豊富に作物が実って冬の蓄えにも困らなくなった。
 寒い冬に、薄いシャツ1枚で過ごすこともなくなった。
 ケガや病気をしても、放っておかれることがない。

 村は豊かに、幸せになっていった。

 だけどそこに、少女はいない。
 少女だけが、ひとり眠り続けていた。

 心優しい少女だから、豊かになった村を見れば、きっと喜んでくれる。

 少女が目覚める日を、村人たちは待った。
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