【完結】守り姫[完全版]

桐生千種

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1章 不思議な少女

4.ケガをした少年

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 その村は、貧しい村だ。
 たとえ子供であっても、働かなければ生きてはいけない。

 少年の仕事は、少し力が必要になるけれど、木材を運ぶだけの簡単な仕事だった。

 言われれば、使い走りにもなる。

 たとえわずかな賃金でも、生きるためには必要だった。

 その日も、少年は使いに走った。
 特別に急いで、少年は頼まれた物を取りに走った。

 遅くなれば、わずかな報酬がさらに減らされてしまうから。

 けれど不運なことに、少年は向いから走って来た男とぶつかって、足に傷を負うことになってしまった。

 少年は子供で、大人と比べればうんと小さい。

 走り続けることができなくなった少年は、そのまま地面へと吸い込まれるように膝をついた。

 勢いのせいもあったのかもしれない。

 ただの擦り傷だと少年は思いたかったけれど、ひどく痛む足は動くことを拒んだ。

 走るどころか、立ち上がることさえ、少年にはできなかった。

 これできっとクビになる。

 少年の代わりはいくらでもいる。
 使えないなら、すぐにでもクビだ。

 いつも少年が言われている言葉だった。

 歩けない少年を、変わらず使ってくれるとは到底思えなかった。

 明日から、どうやって生きていこう。

 少年が頭を悩ませていたとき、その少女は現れた。

「ケガしたの?」

 真っ白な髪に、真っ白な服。
 少女は傷を負った少年を見て、笑っていた。

 少女はそれ以上何も言うことなく、少年の前にひざまずくと、傷口へその真っ白な手をかざした。

「治った」

 少女がそう口にするまで、少年は目の前で起きている出来事に魅入ることしかできなかった。

 少年の足からは傷が消え、仕事を失わずにすんだ。
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