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1章 不思議な少女
2.寒さに震えた少年
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冬の訪れが近づいたある日のこと。
夏に青々と葉を付けていた木々も、すっかり色を変えて地面に落ち、冷たい風が吹き始めていた。
その年、少年が着ることができたのは薄いシャツ1枚だけだった。
暑い夏の日に着るような薄手のシャツは、少年が冷たい風をしのぐには不十分だった。
けれど、決して裕福とは言えない村では、少年のように季節に釣り合わない服装をしている子供は、特別珍しいものでもなかった。
その日を暮らしていくのがやっとの生活の中で、少年の家も食べる物が必要だった。
だから、少年が冬を越すための服は生きるための食べ物と交換された。
「この服は、もう小さいだろう」
そんなことはない。
まだ着られる。
少年の言葉は、聞いてもらえなかった。
「隣へ行って、食べ物と交換してもらいましょう」
それじゃあ、僕の冬の服は?
寒さをしのげる冬の服は、その1着しか持っていないのに。
けれど、少年のたった1着の冬の服と明日を生きるための食べ物とを取り換える少年の家に、少年のための新しい服を買う余裕があるはずなかった。
冬を越すための新しい服を与えられることなく、寒さに震えながら少年はその冬を越さなければならないことを覚悟した。
「そんな格好じゃ、風邪をひいちゃうよ?」
寒さに震える少年に声をかけたのは、真っ白な髪を持つ少女だった。
その手には、温かそうな厚手の服があった。
「仕方ないんだ。僕の服は食べ物と取り換えたから」
服は必要だったけど、食べ物も生きるためには必要だ。
少年は、そうして自分を納得させるしかなかった。
「うん。だから、これ貸してあげる」
それは、少女が手にしていた冬を越すには十分な服だった。
「ありがとう……」
少女のおかげで少年は、寒さに震えることなく冬を越すことができた。
夏に青々と葉を付けていた木々も、すっかり色を変えて地面に落ち、冷たい風が吹き始めていた。
その年、少年が着ることができたのは薄いシャツ1枚だけだった。
暑い夏の日に着るような薄手のシャツは、少年が冷たい風をしのぐには不十分だった。
けれど、決して裕福とは言えない村では、少年のように季節に釣り合わない服装をしている子供は、特別珍しいものでもなかった。
その日を暮らしていくのがやっとの生活の中で、少年の家も食べる物が必要だった。
だから、少年が冬を越すための服は生きるための食べ物と交換された。
「この服は、もう小さいだろう」
そんなことはない。
まだ着られる。
少年の言葉は、聞いてもらえなかった。
「隣へ行って、食べ物と交換してもらいましょう」
それじゃあ、僕の冬の服は?
寒さをしのげる冬の服は、その1着しか持っていないのに。
けれど、少年のたった1着の冬の服と明日を生きるための食べ物とを取り換える少年の家に、少年のための新しい服を買う余裕があるはずなかった。
冬を越すための新しい服を与えられることなく、寒さに震えながら少年はその冬を越さなければならないことを覚悟した。
「そんな格好じゃ、風邪をひいちゃうよ?」
寒さに震える少年に声をかけたのは、真っ白な髪を持つ少女だった。
その手には、温かそうな厚手の服があった。
「仕方ないんだ。僕の服は食べ物と取り換えたから」
服は必要だったけど、食べ物も生きるためには必要だ。
少年は、そうして自分を納得させるしかなかった。
「うん。だから、これ貸してあげる」
それは、少女が手にしていた冬を越すには十分な服だった。
「ありがとう……」
少女のおかげで少年は、寒さに震えることなく冬を越すことができた。
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