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02 優しい日常

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 青い空が広がる、外の世界。
 風が吹き抜け、髪を撫でていった。

 舗装されたレンガ道は、もう何度も通っているけれどアイラには毎日新鮮な景色に見えた。

 青い空を流れる白い雲。
 花壇に咲く、色とりどりの花々。
 飛び立つ鳥たちに、戯れる蝶々。

 アイラにとっては、それらすべてが真新しいもののように色鮮やかに、その瞳に映り込んでいた。

「少し木陰で休もうか」

 レイナの言葉に従い、4人はとある場所に向かった。

 大きな木が佇む、小さな丘。

 通いなれたその場所に行くと、小さな少年――シロエが彼らのもとに近づいているのが見えた。

 シロエは、真っ直ぐアイラたちのいる丘に登って来た。

 そして、車イスに座るアイラの膝にその小さな頭を乗せた。

 アイラは、シロエのそのフワフワとした柔らかな髪をゆっくりとした動作で撫でた。

「どうしたんだよ、シロエ。友達とケンカでもしたのか?」

 問いかけるカイトにシロエは不貞腐れたように答えた。

「ケンカじゃないよ……。トモちゃんが変なんだ……」

 続けてレイナが問いかけた。

「変って、どんなふうに?」

「トモちゃんが困ったときは、僕が助けてあげるって言ったんだ。そしたらトモちゃん、急に帰るって」

「本当に……それ、だけ……?」

 アイラは、シロエの柔らかな髪に手を乗せて問いかけた。

 たったそれだけのことで、シロエの友達――トモちゃんが怒って帰ってしまうわけがなかった。

 アイラは知っていた。
 そのとき、シロエが何を言ったのか、すべてを視ていた。

「……」

 ほんの少しの沈黙のあと、シロエが口を開いた。

「……トモちゃんが、僕のために何ができるって聞いたんだ。でも、ヒトのトモちゃんがネオの僕にできることなんて何もないでしょう?」

 納得いかないというように、シロエはアイラの膝へとその頭を押し付けた。
 その悲しみのような、苛立ちのような感情を。他にどうぶつけて解消すればいいいのかシロエにはわからなかった。

「それって、つまり」

 シロエの言葉に、答えを示したのはサイトだった。

「無能な役立たずにできることなんて、何もないってことだよね」
「!? そんなこと言ってない!!」

 驚き、顔をあげたシロエはサイトに向かって叫んだ。

「でも、そう聞こえるよ」

 冷たく言い放ったサイトの言葉に、シロエの顔が悲しみに歪んだ。
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