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2.菜々美と彩梨

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 04年4月14日水曜日。

 私――本田ほんだ菜々美ななみが高校生になって2日目。

 高校生、すごいなーなんてそんな現実に直面した高校生2日目。

 だって、中学生のときには考えられなかったもん。

 健康診断も校内見学も各自で、みたいなさ。

 初日とかでよくある、みんなの前で自己紹介なんてのも今のところないし。

 社交性ある子たちは、もう自分に合いそうな子を見つけて教室出て行ってるし。

 早いなー。

 私、どうしようかな。

 別に1人でもいいけど、初っ端からボッチ街道まっしぐらっていうのもなんか……。

 そんなことを考えながら、教室を見渡したらまだ1人で席に座ってる子が目に留まった。

 綺麗な黒髪のロングヘアをハーフアップにした、いかにも「女の子ー」って感じの私とは正反対そうな子。

 あの子に、話しかけてみようかな。

 近づくと、その子は校内地図と健康診断の紙とを取って持って行くものと置いて行くものを分けているみたいだった。

 几帳面でマイペース。

 それがその子に抱いた最初の印象。

「ねえ」

 声をかけた。

 その子の机の前にしゃがみ込んで、その子の顏が見えるように覗き込んだ。

 本当に、「女の子ー」って感じ。

「よかったら、一緒に回らない?」

 大人しそうな女の子。

 私みたいなのが急に話しかけて、怯えさせたらどうしようって、そんなことを思っちゃうのは仕方ないことだよね。

「行く」

 その子は言ってくれた。

 ちょっとはにかんで、そんな様子にかわいいなーなんて。

「よかった」

 私も自然と頬が緩んだ。

「あ、急がなくていいよ。時間まだあるし」

「うん」

 急にプリントの扱いが雑というか、そんな感じがした。

 マイペース、とは違うのかもしれない。

「あ、そうだ、名前。私、本田菜々美って言うんだ。名前は?」

「あ、加瀬かせ彩梨あやり

「彩梨か。よろしく、彩梨」

 言ってから、しまったと思った。

 初対面で、いきなり呼び捨ては馴れ馴れしい?

 引かれた?

 彩梨ちゃんって、言うべきだった?

 ビクビクしてたのも束の間。

 返事はすぐに返ってきた。

「うん。よろしく」

 普通に、返してくれた。

 よかった。

「彩梨は部活とか考えてる?」

「えっと、演劇部」

「え、意外」

 意外。

 美術部とか吹奏楽とか、そういうイメージ。

「よく言われる」

「もしかして、中学も演劇部だったりとか?」

「そう」

 演劇部、か。

「ウチにはなかったからな。ちょっと興味あるかも」

 っていうか、この子が演劇部っていうことに興味がある。

「体験入部、一緒に行かない?」

 私の言葉に驚いて、頷いた。

 部活に入る予定は今のところないけど、体験入部くらいならやってみてもいいよね。

 彩梨もいるし、合わなかったら入らないだけだし。

 でもちょっと、楽しそうかも、なんて。

 --- 2.菜々美と彩梨 ---
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