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3 近江花音はアイドルですっ!
5.花音ちゃんの友達(1)
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01年7月9日月曜日。
楽しかった、夢みたいな1日が終わって2日。
今日は、デビューしてから初めての登校日。
私は今日、伝えようと思う。
麗ちゃんと萌果ちゃんに、アイドルとしてデビューしたことを。
1週間前の7月1日日曜日。
その日は、取材を受けた雑誌『アイドルコレクション』の発売日だった。
自分が、アイドルの雑誌に載っていることに、憧れの『モノクローム・ツインズ』と同じ雑誌の中にいることに、嬉しさや恥ずかしさや、言葉にできないような感情を抱いた。
そのすぐあとの月曜日、クラスに『アイドルコレクション』を持って来た子がいて、緊張した。
ドキリと跳ねた心臓には、私だけが気づいた。
ちらちらと、見られているような気がしたけれど、そんな気がするだけで、誰に何を言われることもなく、1日が過ぎて、2日が過ぎて、そして1週間。
もう、話そう。
話さないと、と思った。
2人は私の大切な友達で、隠しごとはしたくなかった。
事務所で止められていたのは、「デビューするまで、口外しないこと」だから。
デビューした今は、話しても問題ない。
「麗ちゃん、萌果ちゃん」
意を決して、2人に声をかけたのは昼休みのこと。
「あ、今日は外で食べる?」
麗ちゃんが自分のお弁当を手に立ち上がる。
「それなら途中で購買寄ろう。私今日持って来てないんだー」
萌果ちゃんも言い出して、でも、私が言いたかったことはそうじゃない。
「違うの」
教室の扉へと向かっていた2人が立ち止まって私を見た。
「そうじゃなくて、2人に、話したいことがあるの」
心臓が、バクバクする。
どうしてか、自分でもわからないけど、今まで話せなかったことを話す。
それがとても緊張する。
「それは」
麗ちゃんが言う。
「ここで話しても大丈夫なこと?」
麗ちゃんに聞かれて気がついた。
クラス中が私たちを気にしている。
私の話を聞こうとしている。
「大丈夫」
私は答えた。
「麗ちゃんと萌果ちゃんに、私の言葉で話せれば、それで」
「そう。じゃあ、ここでいいよね」
麗ちゃんがお弁当を置いて、机を動かし始める。
いつものように、近くにある机を3つくっつける。
自分の机ではないけど、それはクラス公認。
私の机も、今は他の子が使っている。
「私、急いで購買行って来るから、ちょっと待ってて」
楽しかった、夢みたいな1日が終わって2日。
今日は、デビューしてから初めての登校日。
私は今日、伝えようと思う。
麗ちゃんと萌果ちゃんに、アイドルとしてデビューしたことを。
1週間前の7月1日日曜日。
その日は、取材を受けた雑誌『アイドルコレクション』の発売日だった。
自分が、アイドルの雑誌に載っていることに、憧れの『モノクローム・ツインズ』と同じ雑誌の中にいることに、嬉しさや恥ずかしさや、言葉にできないような感情を抱いた。
そのすぐあとの月曜日、クラスに『アイドルコレクション』を持って来た子がいて、緊張した。
ドキリと跳ねた心臓には、私だけが気づいた。
ちらちらと、見られているような気がしたけれど、そんな気がするだけで、誰に何を言われることもなく、1日が過ぎて、2日が過ぎて、そして1週間。
もう、話そう。
話さないと、と思った。
2人は私の大切な友達で、隠しごとはしたくなかった。
事務所で止められていたのは、「デビューするまで、口外しないこと」だから。
デビューした今は、話しても問題ない。
「麗ちゃん、萌果ちゃん」
意を決して、2人に声をかけたのは昼休みのこと。
「あ、今日は外で食べる?」
麗ちゃんが自分のお弁当を手に立ち上がる。
「それなら途中で購買寄ろう。私今日持って来てないんだー」
萌果ちゃんも言い出して、でも、私が言いたかったことはそうじゃない。
「違うの」
教室の扉へと向かっていた2人が立ち止まって私を見た。
「そうじゃなくて、2人に、話したいことがあるの」
心臓が、バクバクする。
どうしてか、自分でもわからないけど、今まで話せなかったことを話す。
それがとても緊張する。
「それは」
麗ちゃんが言う。
「ここで話しても大丈夫なこと?」
麗ちゃんに聞かれて気がついた。
クラス中が私たちを気にしている。
私の話を聞こうとしている。
「大丈夫」
私は答えた。
「麗ちゃんと萌果ちゃんに、私の言葉で話せれば、それで」
「そう。じゃあ、ここでいいよね」
麗ちゃんがお弁当を置いて、机を動かし始める。
いつものように、近くにある机を3つくっつける。
自分の机ではないけど、それはクラス公認。
私の机も、今は他の子が使っている。
「私、急いで購買行って来るから、ちょっと待ってて」
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