104 / 185
第四章 魔導王国
#102 昔話
しおりを挟む
「あ、貴女が、女王?」
『うん、そうだね。人と話すのは久しぶりだ。あまり、身構えないで欲しい』
女王は、剣の鞘に手を添えているユースを見ながら困った笑みを浮かべた。
「どうして、貴女は……魔導具、に?」
『おや、CPU2はそのことを話さなかったのか。答えは簡単だよ。ガイアの愛し子の魂を、次へ流転させるためだ』
「魂を……」
フェーリエは呆然と呟く。魂を流転させる、つまり転生。だが、それと女王が魔導具として存在していることが繋がらない。
『ふむ。そこからか……。仕方がない。少し、昔話をしよう。ガイアの愛し子が受け継ぐ、人の業の話を』
そう言った女王は、感情を伺わせない笑顔を浮かべた。
『この話は、世界が混沌、カオスと呼ばれる状態であった時からになる。混沌が分解され、始めに生まれたのがガイア。全ての生みの親だ。生みの親と言っても、ガイア自身が何か特別なことをしたわけではない。ただそこに居ただけで、ガイアの力から大地や空が生まれた。そこに生きる生物も生まれた。だが、ガイアにとってそれらは、生んだ自覚もない代物だ。どれ程移ろい、破滅しようと、何も感じない』
女王は、まるで自分自身がそうであるような、感情のない声色で話す。それを聞いたフェーリエ達がどう思うのか、そういったことは考えず、ただただ事実だけを述べている。
『そんなある日、ガイアは創造に興味を持った。自分と同じ外見の生物を生み出すことを実行した。とは言え、全く同じでは面白くない。そこで、既に生まれている生物たちを参考にした。ガイアは外見上は雄に当たる。だから、番いになるように雌の特徴を持つものを創造したんだ』
「つまり、女性を?」
『そう。ただ、少女なんだけどね、外見的には。この世界は凄いものだよ。ガイアが少女を生み出したことで、同種族も生み出してしまったのだから』
「えっ、つまりガイアが生み出したのはその少女だけってこと?」
何も創造しない神。前世ではああだこうだと神が創造したという記述が多い。そんな中でも、かなり珍しい神だ。
『君は察しがよくて助かるな。ここからは、世界が生み出した、愚かな人間の話になる。人間は知性も理性もない状態だった。ただただ本能のままに生き、死ぬだけ。少女はガイアが生み出した、だから知性も理性もあった。そして長生きだった』
知性。聖書の、禁断の果実を思い出す。蛇に唆されたイブが、知恵の実を口にして知性を得るという話。似ているようで違う。少女は初めから知性があったのだから。
『同じ知性を、感情を持つはずのガイアよりも、少女は豊かな性格だった。少女は、同種族に同情した。知性がないことが恥だと、少女は思ったのだ。そして、彼らに知性を授けるようにガイアに頼んだ。それが、破滅への道だと気づかずに』
女王の目は酷く暗い。少女の選択が愚かだと信じて疑わない、冷たい瞳。
フェーリエは唾をゴクリと飲んだ。この話を聞いて、自分はどうすればいいのだろう。今の作られた神話で育ったフェーリエやユースは、世界の真実を、嘘を知って、平静でいられるのだろうか。
『うん、そうだね。人と話すのは久しぶりだ。あまり、身構えないで欲しい』
女王は、剣の鞘に手を添えているユースを見ながら困った笑みを浮かべた。
「どうして、貴女は……魔導具、に?」
『おや、CPU2はそのことを話さなかったのか。答えは簡単だよ。ガイアの愛し子の魂を、次へ流転させるためだ』
「魂を……」
フェーリエは呆然と呟く。魂を流転させる、つまり転生。だが、それと女王が魔導具として存在していることが繋がらない。
『ふむ。そこからか……。仕方がない。少し、昔話をしよう。ガイアの愛し子が受け継ぐ、人の業の話を』
そう言った女王は、感情を伺わせない笑顔を浮かべた。
『この話は、世界が混沌、カオスと呼ばれる状態であった時からになる。混沌が分解され、始めに生まれたのがガイア。全ての生みの親だ。生みの親と言っても、ガイア自身が何か特別なことをしたわけではない。ただそこに居ただけで、ガイアの力から大地や空が生まれた。そこに生きる生物も生まれた。だが、ガイアにとってそれらは、生んだ自覚もない代物だ。どれ程移ろい、破滅しようと、何も感じない』
女王は、まるで自分自身がそうであるような、感情のない声色で話す。それを聞いたフェーリエ達がどう思うのか、そういったことは考えず、ただただ事実だけを述べている。
『そんなある日、ガイアは創造に興味を持った。自分と同じ外見の生物を生み出すことを実行した。とは言え、全く同じでは面白くない。そこで、既に生まれている生物たちを参考にした。ガイアは外見上は雄に当たる。だから、番いになるように雌の特徴を持つものを創造したんだ』
「つまり、女性を?」
『そう。ただ、少女なんだけどね、外見的には。この世界は凄いものだよ。ガイアが少女を生み出したことで、同種族も生み出してしまったのだから』
「えっ、つまりガイアが生み出したのはその少女だけってこと?」
何も創造しない神。前世ではああだこうだと神が創造したという記述が多い。そんな中でも、かなり珍しい神だ。
『君は察しがよくて助かるな。ここからは、世界が生み出した、愚かな人間の話になる。人間は知性も理性もない状態だった。ただただ本能のままに生き、死ぬだけ。少女はガイアが生み出した、だから知性も理性もあった。そして長生きだった』
知性。聖書の、禁断の果実を思い出す。蛇に唆されたイブが、知恵の実を口にして知性を得るという話。似ているようで違う。少女は初めから知性があったのだから。
『同じ知性を、感情を持つはずのガイアよりも、少女は豊かな性格だった。少女は、同種族に同情した。知性がないことが恥だと、少女は思ったのだ。そして、彼らに知性を授けるようにガイアに頼んだ。それが、破滅への道だと気づかずに』
女王の目は酷く暗い。少女の選択が愚かだと信じて疑わない、冷たい瞳。
フェーリエは唾をゴクリと飲んだ。この話を聞いて、自分はどうすればいいのだろう。今の作られた神話で育ったフェーリエやユースは、世界の真実を、嘘を知って、平静でいられるのだろうか。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生獣医師、テイマースキルが覚醒したので戦わずしてモンスターを仲間にして世界平和を目指します
burazu
ファンタジー
子供の頃より動物が好きで動物に好かれる性質を持つ獣医師西田浩司は過労がたたり命を落とし異世界で新たにボールト王国クッキ領主の嫡男ニック・テリナンとして性を受ける。
ボールト王国は近隣諸国との緊張状態、そしてモンスターの脅威にさらされるがニックはテイマースキルが覚醒しモンスターの凶暴性を打ち消し難を逃れる。
モンスターの凶暴性を打ち消せるスキルを活かしつつ近隣諸国との緊張を緩和する為にニックはモンスターと人間両方の仲間と共に奮闘する。
この作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨム、ノベルアッププラスでも連載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる