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第三章 未開発の森

#81 倒した?

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「では、グレッグさんが心臓の位置の核を!ユースさんが首の核を!ウィクトールは脳の核を破壊してください!多少壊すのが遅れても、壊れた状態が継続出来れば大丈夫だとは思いますから!」
 フェーリエは周りに向けて言葉を放つ。言われた面々は、獲物を構えながら了承の言葉を放つ。
「ウルティム……魔力を譲渡するから『グラビティ』で足止めしてくれる?」
『了解。維持していれば良いんだね?』
「ええ。苦手な風魔法を使うから、念の為にね」
 素早くウルティムに用件を伝え、魔力を練る。ごっそりと魔力がなくなる気配がする。
(ウルティムめぇぇ……こんなに取らなくても良いじゃないのぉ)
 魔力がなくなりすぎれば体調が悪くなると言うのに。ウルティムは無慈悲にも魔力をかなり奪っていった。
 フェーリエの魔力を借りて、今のウルティムは魔法を使う。そういう風な契約だ。
 ウルティムが『グラビティ』を発動させる。魔獣の動きが止まり、地面に叩き付けられる。
 見たことのあるユース以外が、驚きの声を上げる。慣れた反応だ。
「三カ所削ります!準備は良いですか!」
「おう!」
「ああ」
 グレッグは元気よく、ウィクトールは簡潔に、ユースはそもそも頷くだけ。全く、もう少し適応してくれないだろうか。
 心の中で文句を呟きながら、フェーリエは魔法を発動する。
 風魔法『ウィンドクロウ』
 三本の鋭い風が三カ所を攻撃する。各々に込めた魔力は30。総合すると90にもなる。こういった大きい魔法は、複数で発動させるのが一般的だが、今はそれが出来るはずも無い。
 風は部位を削り、核が露出する。命の赤。魔獣も、生物であることが分かる色だ。それでも、倒すことを、殺すことを躊躇ってはいけない。それが自然の摂理だから。
 三者が飛びかかる。心臓にはグレッグの大剣が、首にはユースの剣が、脳にはウィクトールの剣が。それぞれ核を斬りつける。
 三人の雄叫びが重なる。『グラビティ』で縫い付けられている魔獣は、必死にその巨躯を動かそうと藻掻いている。
 初めは心臓、その次に首、遅れて脳の核が砕ける。攻撃力、怪我の程度から、予想できた順番だ。
 一度に魔力を使いすぎたフェーリエは地面にへたり込みながら考える。
(これで倒れなかったら……一度体勢を整え直さないといけない。そうなったら……私は、この人達を見捨てられるの?)
 地面に倒れ伏す冒険者達。一度魔獣から逃げるには、あまりにも数が多すぎる。今のフェーリエの魔力量では抱えられない。
 しかしその考えは杞憂に終わった。魔獣は地面に倒れ伏し、その動きを完全に止めたのだ。
「やったのか……?」
 恐る恐ると言った風にグレッグが呟く。動かない魔獣を見て、周りの冒険者達も動きを止める。魔物は倒し尽くされていた。
 やがて、各地から雄叫びが上がる。戦いに勝利した、男の叫び声だ。正直、フェーリエには煩わしいと思える音量で……。
「離れてくださいユースさん!!」
 異常な魔力が湧き起こる。魔獣から解放された魔力が渦を巻き、死んだことを確認しようとしていたユースに向かう。急いで立ち上がり、魔法障壁を張ろうとするが、疲れ切った体は魔法を思うように使えない。
 ユースは為す術もなく吹き飛ばされた。その先にいたフェーリエも、そのままユースと共に吹き飛ばされ、森をかける。


 どれほど吹き飛ばされただろうか。抗えない威力に、フェーリエは胃の中のものを吐き出しそうになる。フェーリエの体と重なるユースは、あまりの威力に既に気を失っている。フェーリエは常に張っている防壁のおかげで、かろうじて意識を保っていた。
 威力が弱まり、地面に落ち転がった。状況を確認しようと体を起こすと、地面が淡く光る。
(……?転移魔方陣!?)
 魔導王国の遺物の光が、二人を包み込んだ。
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