65 / 185
第三章 未開発の森
#63 未開の森クエスト
しおりを挟む
「おめでとう、二人とも」
ギルドのラウンジに戻ると、アンジェリカが祝いの言葉を口にする。
「ありがとう、アン」
アンジェリカが抱きついてくるので、その抱擁に応えながらお礼を口にする。
「さて、Bランクとしての初めてのクエストは何にする?」
体を離したアンジェリカは、フェーリエの顔を見ながら尋ねてくる。何故か目線が合う。フードの効果で顔は見えないはずなのに。
「そう言えば、普通のクエストって初めの以外受けてないのよね。私たち」
「初心者クエストとうやむやになったウルフのやつだけよね。とりあえず掲示板を見てみて」
アンジェリカに促されたフェーリエとユースは、Bランクの掲示板を見る。
「ランクごとに分かれてたんだ」
「そうよ。ちなみに、Sランクのクエストは受付にしかないから、受付にわざわざ訊けるように頑張ってね」
アンジェリカはにこにこと笑う。それに笑いを返しながら、フェーリエは掲示板を見る。
(魔物討伐が多い……やっぱりそういうものが多いんだ。ん?)
ふと、一枚の紙に目がいく。
「未開の森クエスト?」
確かどこかで聞いたことがある。それは、そう。あの時の……。
「ああ、キングが現れてから一時的に中断されてたクエストでね。王都の南東にある未開拓の森を探索するクエストよ」
未開拓の森。それは凶暴な魔物の出現率が多く、なかなか開拓できない地である。不思議な生態系をしており、生息する植物は全て規格外の大きさだ。
(そっか。ウルフキングの時に聞いたのか)
三ヶ月前を振り返り、あぁ、と頷く。
「Dランク以上が参加できるクエスト、だったか?」
「そう。深度が増すごとに危険な魔物が増えるから、そこでランクが分かれてくるのよ」
ユースが珍しく言葉を話す。彼も、三ヶ月前に言われた言葉を覚えていたのだろう。
「ある程度人数を集めるんだけど、まだ集まってなくてね。特にBランクは人数自体が少ないから……」
「じゃあ、Cランクの方には参加できる?」
ランクが高くなったとしても、低いランクのクエストに参加はできる。ただ、低ランク者のクエストを奪う行為になるので、本当はあまりしない方がいい。
「ええ、できるわよ。Cランクは十分人数が揃ってるから明日にはクエストを始められるわ」
「それでいいですか?剣士さん」
傍らのユースを見上げる。初めから高ランクに挑むのは不安があった。
「そうだな。それでいい。たまには他のヒトと連携することも大事だろう」
連携。かく言うフェーリエとユースは、さして連携をしたことはない。ほとんどフェーリエの魔法で片がついてしまうからだ。
「あたしも賛成よ。冒険者の知り合いは作っておいて損はないからね」
ただ……、とアンジェリカは暗い声を出した。
「ただ?」
「……急にランクが上がった人にいい顔をする人はあまりいなくてね。もしかしたら苦労するかも」
危険な魔物を討伐して、国から正式にランクを上げられた人に嫉妬することはよくあることだから、とアンジェリカは眉をしかめる。
「大丈夫よ!私は、自分の魔法に自信を持ってるから」
アンジェリカに元気にそう言い返したフェーリエは、後に後悔することになる。自信を持っていても、どうにもならないことがどの世にもあるのだと。
ギルドのラウンジに戻ると、アンジェリカが祝いの言葉を口にする。
「ありがとう、アン」
アンジェリカが抱きついてくるので、その抱擁に応えながらお礼を口にする。
「さて、Bランクとしての初めてのクエストは何にする?」
体を離したアンジェリカは、フェーリエの顔を見ながら尋ねてくる。何故か目線が合う。フードの効果で顔は見えないはずなのに。
「そう言えば、普通のクエストって初めの以外受けてないのよね。私たち」
「初心者クエストとうやむやになったウルフのやつだけよね。とりあえず掲示板を見てみて」
アンジェリカに促されたフェーリエとユースは、Bランクの掲示板を見る。
「ランクごとに分かれてたんだ」
「そうよ。ちなみに、Sランクのクエストは受付にしかないから、受付にわざわざ訊けるように頑張ってね」
アンジェリカはにこにこと笑う。それに笑いを返しながら、フェーリエは掲示板を見る。
(魔物討伐が多い……やっぱりそういうものが多いんだ。ん?)
ふと、一枚の紙に目がいく。
「未開の森クエスト?」
確かどこかで聞いたことがある。それは、そう。あの時の……。
「ああ、キングが現れてから一時的に中断されてたクエストでね。王都の南東にある未開拓の森を探索するクエストよ」
未開拓の森。それは凶暴な魔物の出現率が多く、なかなか開拓できない地である。不思議な生態系をしており、生息する植物は全て規格外の大きさだ。
(そっか。ウルフキングの時に聞いたのか)
三ヶ月前を振り返り、あぁ、と頷く。
「Dランク以上が参加できるクエスト、だったか?」
「そう。深度が増すごとに危険な魔物が増えるから、そこでランクが分かれてくるのよ」
ユースが珍しく言葉を話す。彼も、三ヶ月前に言われた言葉を覚えていたのだろう。
「ある程度人数を集めるんだけど、まだ集まってなくてね。特にBランクは人数自体が少ないから……」
「じゃあ、Cランクの方には参加できる?」
ランクが高くなったとしても、低いランクのクエストに参加はできる。ただ、低ランク者のクエストを奪う行為になるので、本当はあまりしない方がいい。
「ええ、できるわよ。Cランクは十分人数が揃ってるから明日にはクエストを始められるわ」
「それでいいですか?剣士さん」
傍らのユースを見上げる。初めから高ランクに挑むのは不安があった。
「そうだな。それでいい。たまには他のヒトと連携することも大事だろう」
連携。かく言うフェーリエとユースは、さして連携をしたことはない。ほとんどフェーリエの魔法で片がついてしまうからだ。
「あたしも賛成よ。冒険者の知り合いは作っておいて損はないからね」
ただ……、とアンジェリカは暗い声を出した。
「ただ?」
「……急にランクが上がった人にいい顔をする人はあまりいなくてね。もしかしたら苦労するかも」
危険な魔物を討伐して、国から正式にランクを上げられた人に嫉妬することはよくあることだから、とアンジェリカは眉をしかめる。
「大丈夫よ!私は、自分の魔法に自信を持ってるから」
アンジェリカに元気にそう言い返したフェーリエは、後に後悔することになる。自信を持っていても、どうにもならないことがどの世にもあるのだと。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
転生調理令嬢は諦めることを知らない
eggy
ファンタジー
リュシドール子爵の長女オリアーヌは七歳のとき事故で両親を失い、自分は片足が不自由になった。
それでも残された生まれたばかりの弟ランベールを、一人で立派に育てよう、と決心する。
子爵家跡継ぎのランベールが成人するまで、親戚から暫定爵位継承の夫婦を領地領主邸に迎えることになった。
最初愛想のよかった夫婦は、次第に家乗っ取りに向けた行動を始める。
八歳でオリアーヌは、『調理』の加護を得る。食材に限り刃物なしで切断ができる。細かい調味料などを離れたところに瞬間移動させられる。その他、調理の腕が向上する能力だ。
それを「貴族に相応しくない」と断じて、子爵はオリアーヌを厨房で働かせることにした。
また夫婦は、自分の息子をランベールと入れ替える画策を始めた。
オリアーヌが十三歳になったとき、子爵は隣領の伯爵に加護の実験台としてランベールを売り渡してしまう。
同時にオリアーヌを子爵家から追放する、と宣言した。
それを機に、オリアーヌは弟を取り戻す旅に出る。まず最初に、隣町まで少なくとも二日以上かかる危険な魔獣の出る街道を、杖つきの徒歩で、武器も護衛もなしに、不眠で、歩ききらなければならない。
弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
婚約破棄された悪役令嬢。そして国は滅んだ❗私のせい?知らんがな
朋 美緒(とも みお)
ファンタジー
婚約破棄されて国外追放の公爵令嬢、しかし地獄に落ちたのは彼女ではなかった。
!逆転チートな婚約破棄劇場!
!王宮、そして誰も居なくなった!
!国が滅んだ?私のせい?しらんがな!
18話で完結
異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!
明衣令央
ファンタジー
糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。
一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。
だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。
そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。
この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。
2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。
転生したらチートすぎて逆に怖い
至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん
愛されることを望んでいた…
神様のミスで刺されて転生!
運命の番と出会って…?
貰った能力は努力次第でスーパーチート!
番と幸せになるために無双します!
溺愛する家族もだいすき!
恋愛です!
無事1章完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる